噂の女 |
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作家 | 奥田英朗 |
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出版日 | 2012年11月 |
平均点 | 6.33点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 7点 | ミステリーオタク | |
(2020/10/03 22:12登録) 地方(恐らく岐阜県)の小さな町を舞台にした、とんでもない女の男喰い遍歴を描いた連作短編集。 《中古車販売店の女》 読みやすいが何も面白くない。バカみたい。 《麻雀荘の女》 本書の流れが少し見えてきて、少し面白くなってきた。 《料理教室の女》 前2話とは趣向が変わり、また少し面白くなる。 《マンションの女》 来たね~ 《パチンコの女》 これもなかなかだが奥田さん、ヤクの件はもう一息。 《柳ヶ瀬の女》 世の中、金、金、金ってか。 《和服の女》 ホントに今でも地方には、こんなカビの生えそうな、役所と土建屋の癒着が蔓延っているのだろうか。 《檀家の女》 (コレだけホンの少しネタバレ) この辺までくると「飽きてきた感」も拭えないが、本作のラストは「考え抜いた末にパーを出したら他の3人は揃ってチョキを出した」の方が面白くなくない? 《内偵の女》 何ともダルいし、やる気なくなるわな。 《スカイツリーの女》 まとめになっているようないないような。 どの話も結末をクリアにせずヴェイグにクローズするところは奥田さんらしいと言えば、らしい。 何はともあれ、ひたすら読みやすく入れ込めた。 |
No.2 | 6点 | HORNET | |
(2017/12/02 13:28登録) 独特の男好きする色香で様々な男を籠絡し、巨額の富を得ていく希代の悪女・糸井美幸の軌跡を描く連作短編集。 一貫して美幸以外の視点で描かれていることで、3人の元旦那の死の真相や、美幸の子どもの父親は誰か、といったことが(「そういうこと」なんだと分かりながらも)文章上は推測で終わっている書き方が上手い。 とんでもなく計算高い悪女でありながら、なぜか同世代の女性をも惹きつけてしまう魔性をもつ美幸に陥れられたり、なびいてしまったりと翻弄される田舎の人たちのさまが非常にリアルに描かれていて面白い。 最終的に「ケリ」をつけない書き方はこの人の作風だと思うのだが、ひょっとすると精神科医・伊良部のシリーズのように今後も続くということなのだろうか? |
No.1 | 6点 | E-BANKER | |
(2016/11/23 13:36登録) 2012年発表。連作仕立ての長編というべきなのか、どうなのか? ~『侮ったらそれが恐ろしい女で』。高校まではごく地味。短大時代に潜在能力を開花させる。手練手管と肉体を使い、事務員を振り出しに玉の輿婚を成し遂げ、高級クラブのママにまでのし上がった、糸井美幸。彼女の道行にはいつも黒い噂がつきまとい・・・~ ①「中古車販売店の女」=糸井美幸の振り出しは国道沿いの中古車販売店の事務員から。中古車の不備に難癖をつけにくるグループと所長のやり取りが物悲しい・・・ ②「麻雀荘の女」=続いては雀荘で働き始めた美幸と彼女に引き寄せられるブルーカラーの男たち。男たちの真打として、ある土建屋の若社長が颯爽と登場し・・・。 ③「料理教室の女」=結婚前に料理教室に通い始めた女性三人。やれ公務員やら年収が低い旦那やら、田舎の結婚事情はこんな感じなんだね・・・。それを尻目にますますのし上がる美幸。 ④「マンションの女」=なんと美幸はいつの間にか、六十代の資産家の男と再婚していた! 財産目当てと疑う男の子供たちなのだが、交渉役として駆り出された婿は見事、彼女の手練手管の犠牲者に・・・ ⑤「パチンコの女」=失業給付をいいことにパチンコに精を出す独身女ふたり。そんな女たちに絡んでいく美幸。それにはある謀略がありそうな雲行きなのだが・・・ ⑥「柳ケ瀬の女」=“柳ケ瀬”といえば岐阜を代表する繁華街である。そんな柳ケ瀬に高級クラブを開店した美幸。そして資産家の男はなんと! ⑦「和服の女」=公共工事が生命線の田舎の土建屋グループ。そして田舎のしがらみを断ち切ろうとする、二代目の若手経営者。そこにも何と美幸の「毒手」が・・・(スゴイ女だ!) ⑧「檀家の女」=寺の客殿建替えで檀家に法外なお布施を要求する二代目の住職。お布施の減額を求める檀家を代表することとなった不幸な男。何とそこにも美幸の影が・・・。いつも負けるジャンケンにひたすら爆笑!! ⑨「内偵の女」=ついに美幸に追求の手が! と思われたのだが、地方の警察内部のゴタゴタやらしがらみでやる気をなくす若手刑事・・・トホホだな。 ⑩「スカイツリーの女」=ワカメ酒を飲まされる議員秘書(女)の姿に涙!! 以上10編(というべきかどうか) 相変わらずの旨さです。 「最悪」「邪魔」「無理」の三部作でも地方で暮らすことのしがらみを面白おかしく書いてきたが、本作でも全開!! なんていうか、小市民というのか、読んでて悲しくなって、最後には笑ってしまうというのか、とにかく旨いのである。 作品の雰囲気は全然違うのだが、美幸視点から決して語られないというプロットは、東野圭吾の「白夜行」を彷彿させるところがある。 って褒めすぎだろうか? でもまあ十分楽しめる作品。そういうこと! |