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ミステリの祭典

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屍人の時代
探偵・呪師霊太郎

作家 山田正紀
出版日2016年09月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 虫暮部
(2016/11/21 12:21登録)
 ミステリの形を借りて時間の無常を描いた風情は好き。
 しかし、第二話の“毒ガスの用心のため口だけで息をする”と、第四話の“貨車を燃やして石灰粉を消してしまわないと、農場に搬送できない”の理屈が判らない。苦労して辻褄を合わせたという印象が残る。このひとのミステリは多少破綻しててもアリなんだけど……。

No.1 6点 E-BANKER
(2016/10/08 22:00登録)
「人喰いの時代」の続編的位置付けでよいのだろうか?
~戦後の北海道を放浪する謎の名探偵“呪師霊太郎”・・・時を経てなお姿を現す不思議な探偵が遭遇した四つの不可思議な事件とその解決を描く。本来発売されることはなかった幻の作品~
なんと文庫書き下ろしで登場!

①「神獣の時代」=北海道のとある漁村(?)が舞台となる第一話。四編のなかでは一番ミステリーらしい仕上がりになっている。雪と氷に閉ざされた孤島で起こった足跡のない殺人がテーマなのだから・・・。こう書くと本格ファンなら「オオッ!」と喜びそうだが、最終的な黒幕として登場する○○には唖然とさせられる!
②「零戦の時代」=短編というより中編というべき分量の第二話。舞台は太平洋戦争中の海軍。海軍随一と呼ばれた零戦乗りの男の死をめぐる謎なのだが・・・。戦後四十年という時を経た後、呪師から驚くべき真相が示される。何となく連城の花葬シリーズを連想させる作品だった。
③「啄木の時代」=啄木とは当然歌人の石川啄木のこと。函館~東京での彼の生活をめぐる物語と、もうひとり、日活の全盛時代に登場した“第三の男”こと赤木圭一郎。なんの関連もないこの二人に関連して過去の事件の真相が語られる。啄木の逸話は本当の話なのかな?
④「少年の時代」=啄木の次は宮沢賢治というわけで、彼の作品世界が事件に投影される一編。そして登場する怪盗「怪人二十文銭」(すごいネーミングだ)。なんとなく物悲しさが漂う最終話。

以上4編。
前作(「人喰いの時代」)はもう少しミステリー色が濃かったと思うが、本作は一応ミステリーとしての体裁は整っているものの、より幻想的というか、何とも掴みどころのない作品世界となっている。
まずはこの世界観が合わなければ、ちょっと苦痛な読書になるかもしれない。
(途中、一体何が起こっているのか掴めないような感じ・・・だ)

時代設定も明治~平成という長尺なのだが、呪師霊太郎はいつでもどこでも神出鬼没。どうやら年も取らないよう。
今回は呪師が前面に出るというよりは、脇役として最後の最後で登場というパターンが多い。

ここまで変わった本格ミステリーも珍しい。
でも最後には何とも言えない余韻を残すのはさすがというべきか。

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