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ミステリの祭典

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大いなる手がかり
87分署

作家 エド・マクベイン
出版日1960年01月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点
(2019/11/27 11:37登録)
 いつやむとも知れないいやな三月の雨の日、男とも女ともつかぬ黒ずくめの身装りをした人物がバス停留所に立っていた。黒いレインコート、黒ズボン、黒靴、黒い雨傘、そのかげになって頭と髪はみえない。発車まぎわのバスに乗りこむと、その人物はパトロール警官のまえから姿を消した。
 停留所の標識の傍らに鞄が置いてあるのを眼にした警官ジェネロは歩み寄り、それを拾いあげた。さほど重くはない。ジェネロは鞄を開け、手を差し込んだ。彼はその顔を恐怖にゆがめ、反射的にその手をひくと標識に思わずしがみついた。旅行鞄のなかにあったものは、手首のやや上部で切断された、男の手だった――
 「キングの身代金」に続くシリーズ第11作。1960年発表。全篇に渡ってじとじとした雨が降り続く中、身元不明の"手"の主を巡って87分署チームが動き出します。届出のあった失踪者たちを探りますが捜査はなかなか進展せず、そうこうするうち屑鑵からもう片方の手首が発見。それでも一向に事件の目星は付きません。
 雲隠れしていた失踪者の一人からの話と、失踪人調査室の刑事の思いつきから行方不明のストリッパーの存在が浮かび上がりますが、これが事件に関係しているのかどうかは分からない。苛立つ刑事たち。行き詰った挙句珍しく愛妻テディに八つ当たりしたり、同僚を殴り倒すスティーヴ・キャレラの姿が見られます。
 解決はやや唐突かつ猟奇的。同年にヒッチコックの有名なサスペンス映画「サイコ」が封切られており、マクベインもこれに影響されたのかもしれません。結構貪欲な作家なので。作者のグロ趣味が出た最初の作品ですね。おとなしめの犯人ですが「手首を切り落とした理由」に狂気が現れています。
 とはいえまだ精神分析への関心も薄く、熟成されてはいない。4年後のドナルド・E・ウェストレイク「憐れみはあとに」と比較してもやや落ちます。総合すると魅力的な掴みを生かしきれなかった標準作ですかね。

No.1 6点 斎藤警部
(2016/10/04 00:39登録)
バス停に置き去られたエアライン・バッグの中から発見されたのは、手首から切断された人間の大きな右手。文字通りの「大いなる手がかり」。。。原題も「GIVE THE BOYS A GREAT BIG HAND(ボーイズ(刑事達)に大いなる拍手を)」と若干悪趣味ながらも洒落ている。まずは上手に訳した所か。。。えぇっ、犯人その人でいいんですか!? 確かに、本格ともハードボイルドとも違う警察小説ならではの角度からの意外性攻めだけれど、それにしてもそんな伏線あったっけ。。他ならぬ(?)その人物が犯人ならもう少し濃ゆぅい伏線を用意しても良いのでは? なんて結末では思いましたけどね、やはり文章は読ませますよ。心の大きな年配家政婦の件だとか、「大都会は女である」の大演説だとか、それ以外にも心に残るパッセージがいっぱいです。マーロウの台詞のように洒落ちゃいないんだけど、一篇の小説と見ればバランス崩しの領域にも走ってるんだけど、そこが味。量産家ならではの特権かも。えぇっ、左手も見つかったって。。。

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