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ミステリの祭典

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何もかも憂鬱な夜に

作家 中村文則
出版日2009年03月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 メルカトル
(2018/12/05 22:42登録)
施設で育った刑務官の「僕」は、夫婦を刺殺した二十歳の未決囚・山井を担当している。一週間後に迫る控訴期限が切れれば死刑が確定するが、山井はまだ語らない何かを隠している―。どこか自分に似た山井と接する中で、「僕」が抱える、自殺した友人の記憶、大切な恩師とのやりとり、自分の中の混沌が描き出される。芥川賞作家が重大犯罪と死刑制度、生と死、そして希望と真摯に向き合った長編小説。
『BOOK』データベースより。

これは純文学ですね。短いですがサラッと読み飛ばせるような代物ではありません。中身は限りなく重く、まさに気分を憂鬱にさせてくれます。
命とは何か、罪とは何か、人間とは何かなどを読者に問い掛けるばかりでなく、自ら断じている部分もあります。文庫本の解説で又吉直樹氏も取り上げていますが、作中の台詞に「これは凄まじい奇跡だ。アメーバとお前を繋ぐ何億年の線、その間には、無数の生き物と人間がいる。どこかでその線が途切れていたら、何かでその連続が切れていたら、今のお前はいない。いいか、よく聞け」「現在というのは、どんな過去にも勝る。そのアメーバとお前を繋ぐ無数の生き物の連続は、その何億年の線という、途方もない奇跡の連続は、いいか?全て今のお前のためだけにあった、と考えていい」というものがあります。まさにこの言葉は普通に生きられない人間、つまり私のような者には、心の奥底にまで突き刺さりました。他にも多くの真理を突いた言葉の数々が横溢しており、ひどく考えさせられると同時に首肯させられます。

何が普通かはさておき、犯罪者と同類と揶揄される主人公の懊悩が読んでいて痛いほど伝わってきます。それは誰もが持ち得るものなのかも知れません。私にもあなたにも。異常で卑屈な何かが。

本書は面白いとか楽しいとかの次元を超えた、超エンターテインメント小説だと思います。おそらく一般受けはしないでしょうが、世の中にはこんな小説もあるのだということを多くの読者に知って欲しいです。

No.1 7点 まさむね
(2016/09/25 11:40登録)
 正直、ミステリーではありません。
 ミステリー的な謎らしき事項、正確に言えば、ミステリーであれば何らかの解明を期待するであろう事項は、複数提示されるのですが、最後まで特段明かされることはなく、読者の解釈に委ねられています。と、いうか、ミステリーとして読もうとした自分がちょっとおバカってことですね。
 よって、このサイトに書き込むべきか否か迷ったのですが、現にミステリーに属すべき作品も書いている作家で今後の期待も大きいし、何よりもこの作品が心に響いたので、皆様の参考のためにも、思い切って投稿いたします。

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