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ミステリの祭典

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背いて故郷

作家 志水辰夫
出版日1985年10月
平均点4.33点
書評数3人

No.3 5点 クリスティ再読
(2021/04/02 16:36登録)
協会賞受賞作。北の海が常に背景にある。自分が譲った船長職を得た友人が、船内で殺された件を追求する中で、元部下の船員たちの間を回って主人公がいろいろ危ない目にあう話。一言で印象をまとめたら「ウェットで陰鬱」。主人公に自責の念が強いというよりも、そもそも破滅型。だから極めて日本化されていて、ハードボイルドと言っていいのか、評者は微妙だと思う。「弱い男の強がりの話」を主観的な思い入れたっぷりに...って、強烈に日本的な解釈だと思うんだよ。やはり現実の客観性としっかり切り結ぶ部分がないと、評者はハードボイルドとは思いたくないなあ....
まあだから、ディック・フランシスのヒーローあたりに近いような印象を受ける。冒険小説の方にニュアンスが近いと思うんだよ。で、この作家の特徴というか、話の進行がゆっくりで、意外に出来事が少ない。それを主観的思い入れでたっぷりと語るタイプだ。
「裂けて海峡」ほどヘンではないけど、最後のどんでん返しは前半で描かれた人物像から見ると、強い違和感がある。なんか最後でシラケた...
本作読むなら、たとえば「拳銃は俺のパスポート」とか、ハードボイルドに寄った日活アクションを見た方が満足感があるような気もするんだよ。要するに、小説だから、主観ダダ洩れになる部分が、どうも気に入らない。文句多いな、すまぬ。

No.2 3点 ZAto
(2009/11/02 22:34登録)
おしなべてハードボイルドの主人公たちは確固たる信念に基づいて行動する。
それが馬鹿げたこだわりやナルシズムに思えても、そこに孤高のダンディズムを見出して読み手はカタルシスを得る。
本書での柏木斉も例外ではないのだろうが、それにしては行動の稚拙さに少々呆れてしまった。
文体に合わせて主人公の行動もスタイリッシュである必要はないが、東京、横浜、千葉、横須賀、北海道、東北と、柏木の単独行が目まぐるしく舞台を変えながらも常に独りよがりであるために周囲に不幸を撒き散らしていくのでは、さすがに苛立ちを覚えてしまう。

No.1 5点 Tetchy
(2008/01/04 19:10登録)
確か日本推理作家協会賞受賞作だったように思うが、初期の中で一番印象に残っていないのがこれ。
とにかく終始陰鬱な感じで物語が流れていく印象だけが残っている。

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