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ミステリの祭典

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月輪先生の犯罪捜査学教室
月輪龍太郎

作家 岡田秀文
出版日2016年09月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 E-BANKER
(2022/10/02 13:42登録)
名探偵・月輪龍之介が、帝大(いわゆる東京大学)の学生を相手に犯罪捜査学の講義を行い、実際の事件を教材として推理・犯罪捜査を教えていくという趣向。生徒役となる三人の学生も一癖ある奴ばかりで・・・
2016年発表の連作短編集。

①「月輪先生と高楼閣の失踪」=最初の事件は、架空の高層ビル(といっても6階建てだが)からひとりの人物が失踪し、まったく別の場所で死体としてみつかるというもの。三人の学生が順番に推理を披露するが、すべて月輪からの厳しいツッコミで瓦解し、月輪が先生らしく正解となる推理を披露する、という形式。つまり、作者は3つのダミー推理を用意しないといけないわけで、それはそれで苦労しそうだなと感じる。で、真相は「消失」ものでよくあるトリックに少し手を入れたもの、というレベル。まぁ、でも初っ端の作品としては合格点。
②「月輪先生と「湖畔の女」事件」=今回は誘拐事件げメイン。世間嫌いの偏屈な有名画家の息子が誘拐されるのだが、不自然な個所がかなりある。例によって三人が推理を披露→すべて月輪に否定され、真相が月輪の口から語られる。①も②も「〇れか〇〇」がトリックの鍵となっているが、それもまぁこの時代設定だからこそ許されるのかな。個人的には好きではないが・・・
③「月輪先生と異人館の怪談」=部隊は大磯ロングビーチ、ではなく、明治時代の大磯村。そこにある異人館を舞台に起こる殺人事件。月輪先生が急遽予定をキャンセルするなか、生徒役の三人が自分たちで解決を図ろうとするのだが・・・最後に意外な真相が月輪の口から語られる。
④「月輪先生と舞踏会の密室」=伊藤博文も招待されたダンスパーティーに参加する月輪と3人の生徒たち。衆人環視の中で銃殺事件が起こる。しかも舞台は密室・・・。この密室トリックはよくある手なのだが、真犯人がやや意外。結局、3人の生徒は一度も月輪先生の推理を超えられず終了。

以上4編。
「まずまず」というのが全体的な評価としては的を得ているのでは?
四編とも、「事件の発生」→「3人の生徒が順に推理を披露」→「月輪が推理の講評をしつつも正解ではないと言う」→「結局、月輪の推理が正しくて解決」、というフォーマットを踏襲している。
どれも短編らしい小品のネタなのだが、きれいにまとめているのは作者の力量だろう。
ただ、作者の筆致は長編でも「やや平板」という感じなので、短編になるとさらにその特徴が際立ってしまう(ように思う)。
シンプルな謎解きを楽しみたいのならそれもいいけど、どことなく物足りなさも感じてしまうんだよなぁ・・・

「正しい(?)」短編集を読みたいという方には適していると思われるので、そういう作品をお求めなら是非!
(個人的ベストは・・・うーんどれかな? 敢えて言えば④かな)

No.1 6点 まさむね
(2017/01/02 20:57登録)
 名探偵月輪シリーズのスピンオフ短編集。
 何と帝国大学で犯罪捜査学講座を受け持つことになった月輪龍太郎が、3人の教え子たちとともに4つの事件に挑みます。真相が見えやすい話もあったけれども、明治という舞台背景を巧く活かしているし、何よりも3人の帝大生の推理合戦が楽しかったので、全体的には良かったかな。
 月輪&帝大生は結構使い勝手のよい設定だと思うので、ぜひ続編を書いてほしいなぁ…。

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