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ミステリの祭典

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影の斜坑

作家 草野唯雄
出版日1977年04月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 ʖˋ ၊၂ ਡ
(2023/12/22 12:57登録)
舞台は閉山をまじかに控えた北九州の炭鉱。密室状態の社員クラブで、この炭鉱に派遣された調査官の撲殺死体が発見された。数日後、今度は坑内で一人の機電係員が忽然と消えるという怪事件が発生、事件の謎が深まっていく。
密室殺人と人間消失を組み合わせた推理的な興趣もさることながら、斜陽化した石炭産業の実態がリアルに描かれていて、ずっしりと重い読後感がある。

No.1 5点 nukkam
(2016/08/25 10:09登録)
(ネタバレなしです) 本格派推理小説も書いてはいますがサスペンス小説の名手として名高い草野唯雄(そうのただお)(1915-2008)は鉱業会社出身の作家で、1971年発表の本書は「北の廃坑」(1970年)と共に鉱山経験を活かした初期代表作と評価されています。閉山目前の炭鉱町で密室殺人事件が発生し、本社から派遣された調査官の主人公が推理でトリックの謎解きをしていますが本格派らしさを見せているのはここだけで、鉱山を舞台に悪事を働くグループとその秘密に迫る主人公との対決をメインプロットにしたサスペンス小説です。鉱山や斜陽化している石炭産業の描写には並々ならぬ力が入っており、角川文庫版の巻末解説で紹介されているように社会派推理小説要素も持ち合わせています。ハードボイルドに通じるような荒々しい雰囲気が作品世界と上手くマッチしています。

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