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ミステリの祭典

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トリックスターズ
トリックスターズシリーズ

作家 久住四季
出版日2005年06月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 人並由真
(2020/11/19 04:20登録)
(ネタバレなし)
 魔術研究が「魔学」として、一般にも公認された世界。現在の地上には、世界の文明や力学に影響を与えうるレベルの魔術の才能の主「魔術師」が、わずか6人のみ確認されていた。魔学研究機関として世界でも有数の学舎「城翠大学」の新入生である「ぼく」こと天乃原周(あまのはらあまね)は、大学に客員教授として招かれた美青年魔術師・佐杏冴奈(さきょうしいな)と運命的に出会い、彼の思惑のまま、強引にそのゼミ生となる。だが周、そしてゼミ仲間の5人の新入生の美少女の前に鳴り響いたのは、恐怖の殺人予告アナウンスであった。

 メディアワークス文庫の改定版で読了。かなり細かい制約付きで魔術が存在する世界での謎解き、フーダニット、ホワットダニットという大枠はよろしい。ちょっと面白い趣向での「密室」の謎も用意されており、そういった意味での数々の外連味は評価したい。

 しかし肝心の<この作品世界では魔術でここまでが可能で、ここからはアウト>という線引きがいまひとつ不明瞭で、最後の謎解きにあまりカタルシスを感じない(説明のための言葉を費やしている魔術ルールも、いくつかはあるのだが)。
 たぶんその辺りの伏線は張ってはあった? のだろうが、ネタを明かされると「ああ、それはアリなんだっけ?」という気の抜けた感じで……。

 それと(中略)の大仕掛けの方は、いくらジュブナイルに毛の生えたようなラノベミステリとはいえ、あまりに見え見えで。
 まさか21世紀にあのネタをダイレクトにやって商売するんじゃないだろうな? とおそるおそる読み進めたら……(中略)。というか、ところどころ正直に、不自然にならないように叙述しすぎて、早い内からあからさまだよね(汗・笑)。

 小規模な部分では光るものもあったんだけれど、本編のちょっと長めのボリューム(本文、約390ページ)に見合う甲斐は、あまりなかったなあ、という印象。
 まあシリーズの二冊めももう購入しているので、そっちもそのうちいつか読むでしょう。今度はもうちょっと、持ち直してくれているとよいなあ。

No.1 5点 名探偵ジャパン
(2016/08/08 10:08登録)
魔術が「魔学」として系統化されて学術研究対象となっている世界。
主人公、天乃原周(あまのはらあまね)は、日本で唯一「魔学」を教える「魔学部」のある城翠大学に新入生として入学。そこでの一回目のゼミの最中、「魔術師」と名乗る謎の人物からの殺人予告放送が流れ……

2005年にラノベレーベルの「電撃文庫」から発刊されていたものが、加筆修正されて「メディアワークス文庫」から刊行されました。

元々がラノベレーベルということで、初めてミステリに触れる読者を想定してあるのか、謎解きはこれでもかと事前にヒントを出してくれ、やさしい作りになっています。全体を通してあるトリックが仕掛けてあるのですが、これも文章の違和感から、すぐに気が付きます。(ネタバレになる?)

作風から仕方がないのですが、科学捜査(DNA鑑定とか)を使えばあっさりと解決してしまうはずの謎を引っ張ったりするところは少々気になりました。

やれやれ系探偵と邪悪な魔法使いとの戦いは当然このお話では決着はつかず、次巻以降に持ち越しとなります。

マニアには物足りないでしょうが、本格ミステリの入門書としては申し分ないです。(前述の「仕掛け」も、初めてミステリを読む読者は大変驚くでしょう)こういう作品を取っかかりとして、本格ミステリに親しんでくれる若い読者が増えることを期待したいです。

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