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ミステリの祭典

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鈴木ごっこ

作家 木下半太
出版日2015年06月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 ミステリ初心者
(2021/01/14 19:53登録)
ネタバレをしています。

 個人的に、この本を読む前に読んだ本が非常に読みづらいものだったので、この鈴木ごっこはもう本ではなく漫画のごとく読みやすかったです。たぶん2日で読み終えました。
 文章は読みやすく、また無駄な部分が少なく、ページ数もあまりないです。それでいて、予想を超える大きな驚きが得られました。
 タイトルと導入部分から、初めはサスペンスかホラーを予想しましたた。しかし、若干のギャグ要素や、ハートウォーミングな要素もあり、鈴木になる前に家族とバラバラになっていた高額負債者が仮初の家族によって本当の家族を再認識(?)していきます(笑)。そして、感動のラスト…とは当然なりませんよね(笑)。

 推理小説的要素といえば、やはり2重の驚きがあります。
 まず、鈴木ごっこをして騙している対象が、二階堂家や近隣住民(まあ騙してるけど)ではなく、小梅以外の鈴木(男衆)だったことです。小梅には真の狙いがありました。小梅には序盤に主観の文章がありますが、明らかに秘め事がある様子でしたので、何かやっているとは思いましたが、話の展開的に自然とバッドエンドを拒否している自分がいました(笑)。終盤までの妙に明るい展開と、ラストの暗い展開の対比がいいです。
 あと、小説上のタケシ、カツオ、ダンはそれぞれ同じ時間軸にいなかった点です。カツオの娘の話は大きい複線であり、すくなくともカツオだけは違うというところまでは予想しました。しかし、全員が違っていたとは…。

 以下、難癖部分(笑)。
・小梅が毎回鈴木ごっこをするのに同じ名前を使わなければこのトリックが行えませんが、毎回同じだと他者からバレる危険性があるとおもいます。場所は動かしているようですが。二階堂家と鈴木家だけの世界ではないだろうし。
・タケシ、カスオ、ダンのそれぞれの時間軸のずらしは、その微妙な違和感を解消するよいトリックでした。しかし、その大技にしては若干地味だったかもしれません。

No.1 7点 メルカトル
(2016/07/16 22:09登録)
厳密にはミステリと呼べるかどうかわからないが、骨格はそれに近い。これがとにかく面白い。
それぞれ2500万の借金を抱えた4人の男女。彼らは半強制的に一年間鈴木として生きることで、借金を帳消しにしてくれるという話に乗る。37歳の主婦、小梅(仮名)は仮の家族のために一生懸命美味しくバランスの取れた食事を作る。男たちは何をするわけでもなく、家族ごっこを続けるのだが、どういうからくりで借金が消えるのかが分からない。そこに借主からある指令が下る。
それぞれのやむにやまれぬ事情を背負った彼ら、ややもすると暗い話になりそうなところを、ユーモアやくだらないギャグで相殺している。なので、読んでいて肩が凝らない。
しかし、結末はかなりブラックである。しかも最後の最後で叙述トリックが仕掛けられていることが明かされ、二度びっくりすることになるのであった。

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