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ミステリの祭典

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現代詩人探偵

作家 紅玉いづき
出版日2016年03月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 6点 小原庄助
(2017/10/06 15:34登録)
詩を書いて生きていきたい人たちが集う「現代詩人卵の会」が10年後に詩人として再開することを約束するが、10年後再び集まった時、9人のうち4人が亡くなっていた。
当時「探偵」という詩を書いた「僕」は25歳になり、探偵として彼らの死因を探っていく。
幼い子供を残して亡くなった男の死因を探る第2章が本書の白眉だろう。
人が人を失うことの悲しみとつらさを、幼き者のまなざしと詩を通して切々とうたいあげている。
いささか堂々巡りの感情の塗り絵の部分もあるし、諦念に富む老成した観察を求める読者もいるかもしれない。
しかし若いがゆえに敏感で傷つきながらも、相手に寄り添う姿は胸を打つし、何よりもまぶしいまでの青春というフィルターを通す生々しい苦悩と悲哀が清新でたとえ不安と絶望があっても生きていく価値があることを静かに教えてくれる。

No.1 8点 人並由真
(2016/07/02 03:55登録)
(ネタバレなし)
 プロの文筆家やアマチュアで構成される「現代詩人卵の会」。昔日の会合から10年の時を経った。現在も詩の創作に葛藤している「僕」は会のメンバー9人のうち4人が自殺したらしいと今も健在な会のメンバーから聞かされた。かつての自作の詩に由来して「探偵」との呼称を授かった僕は、他界したメンバーの死の状況をひとつずつ確かめて回るが…。

 ラノベ分野を主体に活躍、すでに相応の実績のある作者らしいが、筆者は本書が初めての出会い。 
 詩の創作で食ってはいけない、でもある種の人間にとってはそれでも書かずにいられないんだ、という世智辛く切なくそして真摯なテーマを物語のすぐ脇に置きながら、話そのものは良い意味で昭和の青春ハードボイルド風に展開。
 短編連作を積み重ねていくような長編の構成ぶりも、ミステリでの捜査・調査というものを主題にしたメタ的な趣を強く打ち出していていく。なかなか味があるねぇ…と思いながら読んでいたら……!
 んー、これもあんまり書かない方がいいね。××××のジグソーが終盤でいったんバラバラになり、同時にきれいにハマっていく良く出来たミステリならではの快感がある。いまのところの今年の国産マイベストワン。

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