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ミステリの祭典

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僕のアバターが斬殺(や)ったのか

作家 松本英哉
出版日2016年05月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 虫暮部
(2017/11/22 11:08登録)
仮想空間での殺人が現実化するという魅力的な謎。それに関するトリック(と言うかホワイダニット)のあまりのつまらなさ。こんなので良いのかとびっくりした。強引な物理トリックを持ち出すほうがまだましだ。
 前半はそれなりに面白かったし、謎解き部分の一行で目の前の景色がガラッと変わってああ成程、というところもあったけど。

No.1 7点 人並由真
(2016/06/30 02:27登録)
(ネタバレなし)
 仮想世界と現実空間がリンクするアプリゲーム「ジロウパ」。そこにアバター「クロム」として参加する高校生アキラこと日向明は、ある日とある過去の因縁からゲーム内で口論となった別のアバター「セルパン」を、正当防衛のような流れで倒してしまう。だがそのゲーム内の戦いの場とリンクする現実の空間で、セルパンの実体と思われる死体が見つかった! しかも現場は密室? 仮想世界「ジロウパ」のゲーム内の行動が現実に影響したのか!? アキラは同じ学校に在籍する高校生名探偵として名を馳せる美少年・御影雫に、事件の真相究明のための協力を求める。

 第8回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作。
 もはや珍しくも無くなった電脳世界ものの犯人捜しパズラーだが、ゲーム側から現実への事象の投影の流れはちょっと面白いかも。文体はほとんどラノベのように平明、しかも登場人物も本当に衒いのない筆致で描かれる。良くも悪くもこってりした作品が少なくない昨今の国産ミステリシーンにあっては、逆にそこらへんが良い意味でフツーで好ましかった。
 密室や犯人捜しの謎は小味な創意を組み合わせた感じでそれほどのインパクトはないが、ミステリとしてのパーツは総じて丁寧にまとめあげられている(個人的には、最後に明かされる、ある犯行場面のビジュアルイメージが印象に残る)。
 ただし作中での登場人物の配置や役回りの割り当てを読み取っていくと、真犯人は途中でおおむね推察がつくだろうし、実際に自分もそれで当てた。
 とまれ今後シリーズキャラクターとして活躍するであろう御影の肖像(過去の事件簿の存在など)もラノベかコミック風に入念に描き込まれているし、そういう直球的な作風もなかなか微笑ましい。
 主人公のアキラが思いのほか等身大の高校生キャラクターなのもいいし(警察沙汰になって心配する両親にきちんと罪悪感を覚える)、評点はメインヒロインの漫画チックな可愛らしさも踏まえて1点おまけ。

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