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ミステリの祭典

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ビッグデータ・コネクト

作家 藤井太洋
出版日2015年04月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 糸色女少
(2025/10/04 14:17登録)
官民複合施設のコンポジスタのシステム設計、開発に関わっていたエンジニアが誘拐されるという事件が起こる。やがて、捜査線上にウィルスの作成、配布の冤罪での逮捕されたハッカー、武岳の名が浮かび上がる。警察は武岳に捜査協力を要請する。
真犯人の計画を挫くべく武岳がとった手口、そして真犯人たちがとったビッグデータを収集する方法は、サイバー空間ならではのトリックだと言える。特に後者のトリックは、サイバーセキュリティ事情とも対応したものであり、個人情報を盗む時代からビッグデータを収集する時代へと、ステージが上がったことを否応なしに思い知らされる。マイナンバー制度の落とし穴、個人情報保護法に関する誤解なども書かれており、現代のサイバーセキュリティ事情に対応したミステリとなっている。             

No.1 5点
(2016/06/28 13:44登録)
SF作家だそうなので、空想科学要素を取り入れた推理小説を予想していたが、そうではなかった。システム開発の最前線はこんなものか、と元SEの作者によるリアリズムが感じられる、ちょっと変わった警察ミステリーだった。八次請けとか、2万人月とかはウソっぽいw
現代社会や法制度に踏み込んで描いてあるので、社会派物とも言える。それとも蘊蓄を語りたかっただけなのか。

かつてウィルス事件の容疑を着せられ犯罪者扱いされたハッカーの武岱が2年後、官民施設のシステム開発を担当するエンジニア、月岡の誘拐事件で警察に協力することとなる。武岱は何者なのか、どんな策謀があるのか。それとも、刑事の万田が彼と協働して謎を解くのか?
劇画的な人物が登場するわりに、中途までは平板な展開となっているのが意外である。とはいえ終盤に予想外の流れになる。もっと現代風な技を使えばいいのにとも思うが、好ましい感じもする。

じつは作者のSF作、「オービタル・クラウド」を読むのがねらいだった。手始めに本書を読破した。中盤がちょっと退屈だし、推理が雑な感もある。でも「オービタル」を含めもう少し読みたい気もする。今後に期待か。

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