home

ミステリの祭典

login
鷲見ヶ原うぐいすの論証

作家 久住四季
出版日2009年08月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 メルカトル
(2019/11/08 22:44登録)
うぐいすという少女は変わり者である。いつも図書室にこもっていて、教室に顔を出すことはない。だが、試験では常に満点というひねくれぶり。なぜか譲はそんな彼女と奇妙な付き合いが続いていた。変わり者には変わった依頼が来る。天才数学者、霧生賽馬は魔術師である―その真否を問い質してほしいというのだ。かくしてうぐいすと譲は霧生博士が待つ麒麟館へ。だが翌日、霧生は首なしの死体となっていた。限られた容疑者は全員が無実という奇妙な状況に陥り!?魔術師であるのか、殺人なのか、被害者はいるのか、犯人はいるのか、これはそれらすべてを「論証」する物語である。
『BOOK』データベースより。

閉ざされた館、首なし死体といったガチガチの本格要素を内包してはいますが、ラノベの域を脱し切れていない印象を受けます。色々な?が飛び交う中、最も不思議だったのは、閉鎖状況の中で首なし死体が発見されたら、まず最初に被害者の首を探すのが当然なのに、誰もそんなことをおくびにも出さなかったこと。これはどう考えてもおかしいでしょう。
探偵役のうぐいすも天才的な頭脳の持ち主にも拘らず、なんだか当たり前のことばかりに拘泥して、名探偵らしくなくどうもピンときません。素質者という仕掛けは面白いですし、特に嘘を100%見抜く異能は十分にその機能を発揮して、真犯人を容易に指摘することを否定します。厳然と死体が存在するのに犯人がいない状況とは一体?その正体は「悪魔」なのです。勿論比喩ですが。

事件の全容には大いに拍子抜けでした。なんだそりゃ?でもその後には徐に第三の探偵が・・・。これ以上は書くのは無粋というものでしょう。

No.1 7点 人並由真
(2016/06/18 02:31登録)
(ネタバレなし)
 ゆえあって、天才数学者・霧生賽馬の住居「麒麟館」に赴いた男子高校生の麻生丹譲とその学友の少女・鷲見ヶ原うぐいす。そこで彼らは、賽馬のある思惑のもとに参集した数名の若き女性たちと出会う。当の賽馬はとある目的のために、若者たちに「ゲーム」で挑戦しようとするが、その夜、館全体が密室となったクローズド・サークルの中で、首なし死体が見つかった! 悪魔の実在不在について自論を語るうぐいすやほかの女子とともに、譲は事件の謎を探るが…。

 2015年の『星読島に星は流れた』で、大人向けミステリ分野に進出した作者が、先だって2009年に著したラノベ仕様のミステリ。
 とまれ本書の内容そのものは「悪魔の証明」や「ゲーデルの不完全性定理」などの衒学ぶりを装いながら、割合にきちんとした? 犯人捜しミステリになっている。
 特に中盤、「絶対に嘘が見破られる」フィクション上の設定を導入したのち、クローズドサークル内に容疑者が存在しうるはずがないという状況を詰めていくあたりのケレン味はゾクゾクする。
 最終的な事件の真相はややしょぼいし、伏線なども薄弱だが、この世界観と設定を機能させていてそこらへんはマル。
 昔の作品で言うと都筑道夫の『最長不倒距離』みたいな感じかねぇ。最後の真相が明かされる手前まで~読んでいる間はかなりワクワクで、ラストはちょっと物足りないものの、全体のプラスマイナスの評価としてはなかなか…という感触の一冊。

2レコード表示中です 書評