(2016/05/27 19:59登録)
(ネタバレなしです) 1989年発表の修道士カドフェルシリーズ第17作です。1143年8月によその修道院と互いの所有する土地を交換することになり、10月には新しい土地の開墾を開始しますが作業中に女の死体が発見される事件が起こります。今回は犯人探しの前にまず「被害者は誰か?」という謎を解かねばなりません。「死体が多すぎる」(1979年)では割合あっさりとこの問題を片付けたのに対して、本書はなかなか被害者の正体がわからずちょっとじれったい展開ですが、謎を巡ってカドフェルと執行官のヒュー・ベリンガーが議論する場面を丁寧に描いたり、この人が被害者かと思わせてどんでん返しがあったりするなど中盤まではいつも以上に本格派推理小説らしさを感じることができます。コナン・ドイル作品に前例があるとはいえ珍しい真相を用意しており、これは(当てずっぽうでも)見抜くことは難しいでしょう。フェアに手掛かりを提示しているわけではないので不満を感じる読者もいるかもしれませんが。最後にこの事件をどう幕引きするのかという課題を突きつけているところは「死者の身代金」(1984年)を連想しました。
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