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ミステリの祭典

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アトロシティー

作家 前川裕
出版日2013年02月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 猫サーカス
(2018/05/11 19:46登録)
凶悪で悪質な事件はいつの時代も起きている。だが、なかには集団で行う振り込め詐欺のように、手口がますます巧妙に変化しているものも少なくない。この作品は、そうした現代的な犯罪を重層的に扱ったスリラー。本作を読んでいると、まるで自分が事件の渦中に飛び込み深刻なトラブルに巻き込まれているかのような、独特の生々しさを感じる。とくに極悪非道な連中の態度や言動の描き方が真に迫っており、こうした凶悪犯罪をためらわず行う者たちの存在感に圧倒されてしまった。ホラー小説のような激しい戦慄を含む、犯罪サスペンス。

No.1 5点 メルカトル
(2016/05/02 22:23登録)
冒頭から序盤にかけては、母娘餓死事件や悪質な訪問販売を迫力ある筆致で描き読者を飽きさせない。いわゆる掴みはOK、である。そんな私もかなりのめり込むことができた。
その後、主人公のジャーナリストである田島が事件を追うごとに、様々な人物に遭遇し、或いは自身が事件に巻き込まれるなど、なかなかいいテンポでストーリーは進行していく。現在進行形の事件や過去の事件が入り乱れる一方、登場人物も多彩なため、煩雑になりそうな危険性をキッチリと整理された文章で回避しており、その意味では腕は確かなものを感じる。
がしかし、一方でやや面白みには欠けるきらいがあり、さしたるサプライズもないのは個人的に物足りなかった。
サスペンスでありながら社会問題を扱っているため、社会派と捉えることもできる。解説には「エグミス」などと銘打たれているが、それほどえぐくはないと私は思うのだが。

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