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ミステリの祭典

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現代忍者考

作家 日影丈吉
出版日1963年01月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 nukkam
(2017/11/26 20:02登録)
(ネタバレなしです) 1963年に発表された当時かなり不評だったらしい風変わりなタイトルの本格派推理小説です。忍術に興味があって日本語は流暢だが時々変な言葉づかいになるアメリカ人の探偵(都筑道夫のシリーズ探偵キリオン・スレイに影響を与えたかも?)を登場させてユーモア本格派を意識したようなところがあります。この探偵の他に警察や新聞記者たちがそれぞれ謎解きに挑戦し、他にもアジアのV国人やアマチュア奇術師や女流推理小説家など個性的な登場人物を揃えてます。謎の方もビルの8階から墜落したはずの人間が地面に激突することなく消えたり密室殺人事件が起きたり幽霊が目撃されたりとこの作者の作品では最も派手なプロットではないでしょうか。しかしながら犯人当てとしては「それはあんまりだ」と言いたいし、トリックについても「それはあんまりだ」と言いたいです。kanamoriさんのご講評で指摘されているように江戸川乱歩を連想させるグロテスクなスリラー風結末でユーモアも破綻しています。結末が全てではないのでしょうけど、本書に関してはあまりにも着地の減点要素が大きいように思います。

No.1 6点 kanamori
(2016/07/13 18:16登録)
新聞社の論説委員・江木は、向かいのビルの8階の窓から人が墜落するのを目撃するも、地上には死体や事故の痕跡が見当たらなかった。ところが後になって、そのビルの9階空部屋にダンサーの死体が出現、さらにはプレスビルの密室状況の控え室で、新たに殺害死体が発見されて--------。

どういうタイプの小説なのかを推測するのが難しそうなタイトルが付いていますが、あらすじ紹介のとおり、人間消失、密室殺人、幽霊殺人など不可能犯罪の興趣にあふれた本格ミステリです。「ささやく影」「ひらいたトランプ」「怯えるタイピスト」「闇からの声」「赤毛の男の妻」など、各章のタイトルが海外ミステリ作品から採られ、それに合わせた内容になっているのが洒落ています。
また、新聞記者コンビ、アメリカ人の探偵、所轄の警部と、探偵役を複数人置き、三者三様のアプローチで事件に対峙する構図も当時としてはユニークで(探偵役たちの推理合戦や多重解決ものでないのは残念ですが)、車椅子の腹話術師をはじめ他の登場人物も存在感があります。
完成度にやや難があるとはいえ、これだけマニア受けしそうな趣向を備えていながら、初出当時の評判が散々だったのが不思議ですが、作者に求められているタイプの小説ではないということと、人間消失や幽霊殺人が”トリックのためのトリック”だったり、密室のトリックが乱歩の通俗ミステリを思わせるバカミス的な道具立てなのが低評価の理由かもしれません。新本格を経た現在の読者には、それなりに受けそうな気がしないでもないですけど。

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