home

ミステリの祭典

login
緋の堕胎

作家 戸川昌子
出版日1966年01月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 4点 ことは
(2025/10/20 00:03登録)
これは好みに合わなかった。
ちくま文庫で読んだが、帯に官能ミステリとあり、その言葉どおり官能描写が中心で、ミステリとしての興趣はほとんど感じられなかった。
官能描写も、私にはかなりグロテスクに映り、どうも馴染めなかった。ただ、作風には強い個性があり、これを好む読者もいるだろうと思う。
収録作の中では「塩の羊」がよかった。これも、物語上なくても成立する性的な設定があるので、そこが好みでないのだが、それ以外は、モン・サン・ミッシェルをモデルにした舞台や、明かされる構図などは、惹かれるものがあった。

No.1 6点 kanamori
(2016/04/18 21:06登録)
作者の持ち味である淫靡な官能描写や幻想風味が横溢する6作品を収録した短編集。巻末の初出一覧によると、発表年は昭和39年から54年で、割と長い期間の中から選ばれています。印象に残ったのは次の4作品。

表題作の「緋の堕胎」は、堕胎専門の医院を舞台にした犯罪小説。違法な金儲けに走る医者と新興宗教にはまる妻、そして情緒不安定な若い助手、3人の微妙な人間関係がある告発を契機に崩壊していく。中絶手術後のアレの処置などの具体的で胸糞悪い描写は、イヤミスをはるかに超越してますね。
「嗤う衝立」は、病院の相部屋で繰り広げられる痴態描写はポルノ小説まがいですが、最後に待っているのは脱力必至のオチ。
「黄色い吸血鬼」は、内容を覚えていたので初読時ほどのインパクトを感じませんでしたが、幻想と淫靡なエロスという点で最も作者の持ち味が出ていて、代表作といえるかも。
「塩の羊」は、フランスのサン・ギャロン島を舞台にしたミステリアスな作品。失踪人捜しの推理小説かと思えば、変態的な官能小説へ、さらにはレストランの女主人と修道僧の因縁を描く幻想的なゴシック小説になったりで、着地点が見えない不思議な味わいがある。個人的にはコレが一番好みかな。
ただ、どの作品も感受性豊かな中高校生にはとても読ませられません。トラウマになること間違いなし。

2レコード表示中です 書評