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ミステリの祭典

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闇に消える
デイヴィッド・ブランドステッター

作家 ジョゼフ・ハンセン
出版日1983年06月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 クリスティ再読
(2019/02/20 21:04登録)
紹介は3番めになったために、裏表紙では「第三弾!」となっているが、これがシリーズ最初の作品。このシリーズばっかりは、デイブの恋愛遍歴の興味が大きいので、最初から読んでいった方がいいようだ。
デイブ・ブランドステッター初登場の本作ですでに、恋人のインテリアデザイナー、ロッドを癌で失って、その喪失感からようやく立ち直ろうと...というあたりで始まる。まだ父親も生きているがアマンダは出ないし、「砂漠の天使」で活躍する黒人の恋人のセシル君も本作では出ない。それでもマックス・ロマノの店とその常連たちは出る...という配置。事件はというと、田舎町のカントリー・シンガーとして突如人気が出て、市長選にも担ぎ出された男が、嵐の夜に車が川に流されて失踪した。死体が上がらないので、本当に川で死んだのか?を疑う保険会社がデイブを派遣する。

(少しだけバレかも..犯人当ては全然バレませんがねえ)
でまあこのシリーズ、ご期待通りに事件の背景に同性愛があるわけだね。舞台は田舎町なので、同性愛差別もてんこ盛りな連中多数。市長選の対立候補はこの秘密を掴んで、市長選を降りるように脅迫する...なんてことも、ある。ここらへんの描写が心に痛いな。アメリカの方が宗教が絡むから、「個人の趣味」じゃ効かなくて差別がキッツイんだよ。世間的な成功もこれはただただ妻を喜ばせるためだけに本心を押し殺した演技だった..というあたりも悲しい話だよね。カントリーってマッチョで保守的な白人が大好きな音楽ジャンルになるからね、表現者としても矛盾してツラいものがあるなあ。
ただ、こういうあたりの話だったら、本人を殺さないほうがずっと小説としての興趣に満ちたものになるようにも思うのだよ。本サイトでこういうことを言うのは何だが、ミステリにしちゃったためにもう少し突っ込めるあたりが突っ込めなくなった、ようにも感じる。ミステリっていろいろな意味でとっても「便利」なフォーマットなんだけど、その便利さにも評者は少しは慎重になりたいな。
それでも丁寧に書かれた小説的な陰影の強いミステリである。ラストもなかなか、いい。パートナーを失った男同士の交歓、とやや明るめで終わる。

No.1 6点
(2016/02/29 22:59登録)
いわゆるネオ・ハードボイルドに属する作家による、デイヴィッド・ブランドステッター・シリーズの第1作。ただし彼は私立探偵ではなく、保険調査員です。また長くて覚えにくい名前(登場人物の一人も「ミスター・ブランド―何でした?」なんて聞いてます)も、特徴の一つと言えるかもしれません。さらにこのタイプの作品には珍しく、語りは三人称形式です。
…と列挙してきましたが、やはり最大の特徴は、ブランドステッターが同性愛者ということでしょう。しかし、書き出しは普通にロス・マク風で、彼が同性愛者だということはすぐには明かされません。その後私生活が描かれる部分もかなり出てくるものの、事件とは無関係だなと思っていたのですが、最後にはなるほど、こうオチをつけましたか。
行方不明から殺人へと続く事件の真犯人は意外とは言えますが、殺人の契機となったある情報については、その情報を普通ばらまくだろうかと疑問を感じました。

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