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ミステリの祭典

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殊能将之 未発表短篇集

作家 殊能将之
出版日2016年02月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 メルカトル
(2020/03/13 22:37登録)
未発表短篇「犬がこわい」「鬼ごっこ」「精霊もどし」にデビュー作『ハサミ男』刊行に関して友人宛てに綴った「ハサミ男の秘密の日記」を収録。
デビュー後、編集部の要請で送られていた習作短篇3篇とデビュー当時の様子を友人に書き送った「ハサミ男の秘密の日記」を収録。独特の笑いとセンス、ペーソスを湛えた殊能将之初期作品集。
Amazon内容紹介より。

デビュー前に描かれた短編集なので、習作的な匂いがプンプンする作品が3編と、『ハサミ男』がメフィスト賞を受賞する際の日記で構成されています。
短篇の出来については『犬がこわい』>『精霊もどし』>『鬼ごっこ』でしょうか。『犬がこわい』は日常の謎のような導入部から突然思わぬ事件に発展するというもので、これはなかなか面白かったと思います。『精霊もどし』はあまり怖くないホラーのようなもの、イマイチですね。『鬼ごっこ』は何がなんだかよく分からないけれど、ひたすら三人の男たちが一人の男を追い掛けるだけの作品で、あまり意味が解りませんでした。

余程のファンであれば手元に置いておいても良いかなと思いますが、コスパも良くないし、ミステリファンを含めた一般読者は読む必要性が感じられません。『日記』の方に期待していた私としては、やや肩透かしでしたね。
しかし、早逝されたのは残念な限りです。本来ならもっと多くの傑作をものにしてたはずでしょうからね。

No.1 5点 kanamori
(2016/03/21 00:06登録)
タイトルどおり、2013年に49歳の若さで亡くなった殊能将之氏の未発表短編3作と、日記形式のエッセイ「ハサミ男の秘密の日記」とで構成された作品集。短編3作品の原稿は、講談社の古いダンボール箱内に長らく埋もれていて昨年発見されたものらしい。

「犬がこわい」は、隣家の飼い犬にからまれ続けた犬嫌いの主人公が苦情を申し出にいくが、という話。なんとなく途中でオチが読めるが、習作とは思えない洗練された筆致が良い。
「鬼ごっこ」は、暴力団ら3人の男達がひたすら逃亡者を追う話。これは、都筑道夫のショートショートか何かで似たアイデアのを読んだような記憶がありますが、個人的にコレが一番面白いと感じた。
「精霊もどし」は、友人が亡妻の霊を呼び戻すが、主人公にしか姿が見えないことから揉め事が起きる。これも趣向にさほど新味はないけれど、スマートにまとめたラストがマル。
「ハサミ男の秘密の日記」は、メフィスト賞受賞直後の顛末記といった内容の私小説風のエッセイで、姉の一家からみのエピソードなど、自虐的かつユーモラスな語りが愉快で、作者の人柄が偲ばれる。日記の最後にある(つづく)の文字がなんとも切ない。

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