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ミステリの祭典

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或る「小倉日記」伝
松本清張 傑作短編集〔一〕

作家 松本清張
出版日1965年01月
平均点8.50点
書評数2人

No.2 8点 ALFA
(2018/11/30 16:24登録)
表題作をはじめとする12編からなる短編集。
いわゆる本格謎解きミステリは一つもない。清張短編の真骨頂は謎解きではなく、ここにあるようなサスペンス風味の心理小説やダークな人情噺だろう。
中では表題作がやはり抜きんでている。とても50ぺージの短編とは思えない。長編を読み終わったようなずっしりした感慨が残る。
他のフェイバリットは「青のある断層」。清張お得意の贋作モチーフの変奏だが、ほろ苦くも穏やかなエンディングがいい。
傍流研究者の僻み根性や豊かさと貧しさの対比など、いささか類型的かつ通俗的なところもあるがそれも清張節。

No.1 9点 斎藤警部
(2015/12/09 06:51登録)
新潮文庫が誇る文化遺産「松本清張 傑作短編集」現代小説篇の第一巻。
二巻の推理小説篇とは別箇に編まれた作品集だが、作家の性質を反映し、結果としてどれも否応なしに息詰まるサスペンスを(時に謎追い/謎解き要素をも)湛えた重厚な社会告発小説として仕上がっており、ミステリファンへの潜在訴求力は極めて強い。「火の記憶」「赤いくじ」を始めとして「推理小説篇」に入れておかしくない様な作品も多い。

表題作は芥川賞受賞作。坂口安吾選者の「小倉日記の追跡だからこのように静寂で感傷的だけれども、この文章は実は殺人犯人をも追跡しうる自在な力があり、その時はまたこれと趣きが変りながらも同じように達意巧者に行き届いた仕上げのできる作者であると思った。」は後年の清張を予知する名言として有名だが、佐藤春夫選者の「描写式でなくこの叙述の間に情景のあざやかなこの作の真価を知ることも少しは手間がとれるものがあろう。母子の愛情もあまり縷説しないところがいい。こ奴なかなか心得ているわいという感じがした。」も無駄口を嫌う清張文体の真髄を言い当て痛快。川端康成選者の「私は終始これを推した」も忘れ難い一言。

或る「小倉日記」伝/菊枕/火の記憶/断碑/笛壷/赤いくじ/父系の指/石の骨/青のある断層/喪失/弱味/箱根心中
(新潮文庫)

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