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ミステリの祭典

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蟻の菜園-アントガーデン-

作家 柚月裕子
出版日2014年08月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 HORNET
(2019/06/29 15:02登録)
 週刊誌ライターの今林由美は、今裁判で世間の注目を集めている「疑惑の美人結婚詐欺師」を取り上げることにした。事件では、円藤冬香という40代の美女が次々と男を騙して多額の金をとったあげく、殺害したとの疑いがもたれている。誰もが認める美しさをもった冬香がなぜ、結婚詐欺などに手を染めたのか。由美は、千葉新報の報道記者・片芝の協力を得ながら、彼女の周辺やルーツを取材していく。すると、事件の背後には冬香の出生が大きく関わっていることが分かってくる―

 周辺人物の証言を手がかりに由美らが冬香のルーツに迫っていく過程と、冬香の幼少時代の回顧とが交互に並行して描かれる構成で、それらがどうつながっていくのかを推測(推理)しながら読む楽しさがあった。
 概ね「冬香の正体は?」という謎と、「結婚詐欺に至った真相は?」という謎の2つが中心になる。このうち「冬香の正体」については読み進めていくうちに像が見えてきて、厚みのある内容だったと思うが、後者の「結婚詐欺に至った真相」については急に後付け的に片付けられている感じがしてあまりすっきりしなかった。
 さらに最後の解離性同一性障害(多重人格)のくだりに至っては、余分だと思う。ラストをああすることによって、却ってチープな感じになってしまった。

No.1 6点 ボンボン
(2015/11/27 00:14登録)
作品紹介にある「連続婚活不審死事件」は、本作のほんの一部でしかない。たくさん詰まった素材や大道具小道具はどれもありふれたものだが、全体として緊迫感のある大河ドラマに仕上がっている。どこか既視感のあるネタのオンパレードで、あっと驚くものがないにもかかわらず、組み立ての妙でぐいぐいと読ませる。
現実社会に溢れている「悲惨な境遇」について、よく調べられていて、巧みに小説として再現されていると思う。
ところで本筋には全然関係ないが、この作者は、主人公が1日3食どこで何を食べたか、どんな喫茶店で何を飲んだか、きっちり書き込んでくる。特に夜の飲み屋の様子や選んだお酒の描写が具体的。好きなんだろうなあ。

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