下町ロケット2 ガウディ計画 |
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作家 | 池井戸潤 |
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出版日 | 2015年11月 |
平均点 | 7.67点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 8点 | 麝香福郎 | |
(2018/07/06 15:04登録) ロケットエンジン研究者のキャリアを捨て、実家の町工場を継いだ佃航平が主人公。前作では巨大メーカーが手掛ける国産ロケット開発計画で重要な位置を占めるべく、丁々発止と渡り合う佃の奮闘ぶりが描かれた。 続編である本書では一転して医療機器の開発に挑む。佃は福井の私立医大と地場の繊維メーカーと提携し心臓の人工弁開発に乗り出すが、大手医療機器メーカーと有力医大が行く手を阻む。佃を追い詰めるのは大手企業だけではない。社内にも考えを異にする若手が現れて佃とぶつかる。ハラハラしっぱなしの、てんこ盛り展開。しばしば「勧善懲悪」と言われる著者の作風。中心企業が知恵を絞って汗をかき、大手企業相手に一歩も引かずに立ち回る本書にもそうした面はある。ただ主人公をこれでもかと攻める敵役の極端なほどの存在感もこの物語の妙味。 医大のボス、大手メーカーの発注担当、医療機器の審査担当。いずれも大なり小なり権力者。権力を得ると人は簡単にそれを乱用する。彼ら敵役の人物造形があまりにも憎たらしい。読んでいると思わず佃に一体化し、一緒に歯噛みし、心拍数も上がる。 ドラマでは前作が5話までの前編、本書は後編に当たる。一度でもドラマを見ると、本で活字を追っても俳優陣の顔が勝手に浮かんできてしまう。それほど濃い演技を脳内で再生しながら読むのもまた一興だ。 |
No.2 | 7点 | E-BANKER | |
(2015/12/31 00:14登録) 2015年、そして平成27年の締めくくりは、今や“超売れっ子作家”になられた作者の最新作で。 阿部寛主演の地上波の好評も耳に新しい本作。 前作は直木賞まで受賞した代表作だけに、失敗のできない続編だが・・・ ~ロケットエンジンのバルブシステム開発により倒産の危機を乗り越えてから数年・・・。大田区の町工場・佃製作所はまたしてもピンチに陥っていた。量産を約束したはずの取引は試作品段階で打ち切られ、ロケットエンジンの開発ではNASA出身の社長が率いるライバル企業とのコンペ話が持ち上がる。そんなとき、社長佃航平の元にかつての部下から、ある医療機器の開発依頼が持ち込まれた。「ガウディ」と呼ばれるその医療機器が完成すれば、多くの心臓病患者を救うことができるという。しかし、実用化までの長い時間と多大なコストを要する医療機器の開発は、中小企業である佃製作所にとってあまりにリスクが大きい。苦悩の末、佃が出した決断は・・・?~ やはり今回も読み手の目頭を熱くさせる物語だった。 もはやストーリーなど紹介する必要もないのかもしれない。 いつもどおりの勧善懲悪・・・ 今回も佃航平をはじめとして佃製作所の社員たちは企業人として、熱くそしてプライドを持って仕事を全うしたし、貴船教授や日本クライン、そして佃のライバルとして登場するサヤマは見事なまでに悪人としての役割を果たしている。 あ~あ。またもやお涙頂戴の型にはまった“いい話”か・・・ って思う人も多いことだろう。 それでも引き込まれて読んでしまう。 なぜ作者の作品がつぎつぎとドラマ化され、高視聴率を稼ぎ出すのか? やっぱり、それは人の心に深く突き刺さる物語だからだろう。 特に、日頃悩んだり苦しんだり、時々いいことがあり・・・そんな小市民的な暮らしを営んでいる多くのサラリーマンたちにとっては、自分自身とシンクロするところもあるし、「そんなうまいことないよなあ」って思う気持ちもあるし・・・ とにかく、やっぱりうまい具合に引き込まれてしまう、ってことかな。 そうはいっても、違う展開や違うプロットの作品も出していかないとそろそろマズイのではないか? もはや全くミステリーとは呼べない作品ばかりになっているだけに、そろそろ初心に帰ってはどうか、っていう気もする。 でも、ついついまた手にとってしまうんだろうね。 (結局、今回のドラマも一回も見ないまま終了・・・) |
No.1 | 8点 | haruka | |
(2015/11/14 12:31登録) 直木賞受賞作の前作の続きとして、今度は佃製作所の面々が医療機器の開発に挑戦する。佃、山崎、殿村の活躍は、前作ファンとしては、嬉しいところ。仕事に行き詰ったときに読みたくなる一冊。 |