皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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シーマスターさん |
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平均点: 5.94点 | 書評数: 278件 |
No.8 | 6点 | クロク、ヌレ!- 真梨幸子 | 2013/07/26 23:35 |
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何とも不思議な作品。
読んでいて気持ちのいい話でないことは間違いないが、作者の作品カラーとされている「イヤミス」という感じではないし、初期の作品や『殺人鬼フジコ』でドギつく使われているエログロも殆どない。 前半はやたらと回りくどい展開で、且つ話の方向性が散乱しているのでなかなか入れ込めづらかったが、「プロジェクト」と過去の話がリンクされてくる辺りからはリーダビリティ急上昇。 様々な濃厚なストーリー・パーツを組み込んでいく構成力はこれまで自分が読んだこの作者の全ての作品で感じたものだし、(主に若~中年女性の)随所々々の心情・行動の描写表現も笑って頷いてしまうものが多いし、忘れがちにさせられながら時々テラーが出没する地の文もオリジナリティが高い。 ミステリとしては何ということもないが完成度の高いエンタメ小説だと思う。 もっとメジャーになっていい作家だと思うのだが・・・ |
No.7 | 5点 | インタビュー・イン・セル- 真梨幸子 | 2013/03/27 22:51 |
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サブタイトルのみで買い。
残忍な連続殺人が現実の「北九州連続監禁殺人」にインスパイアされた事件として描かれているが、今現在これを読み始めてまず脳裡にフラッシュするのは何と言っても尼崎でしょう。(書かれた時期からして作者も十分意識していたはずだと思うが..) 前作『殺人鬼フジコ』は本当に酷い話だったが、そのリーダビリテイは(少なくとも自分には)絶大なものがあった。本作はその点では数段劣るものの作者の作品構成力という点においては毎度のことながら唸らされる仕上がりになっている。ただ「あの女性」が最後にあそこまでやるモチベーションなど、いくつか理解し難い点があるのも毎度のことだが。 かなりの技巧派でありながら、この作者が今ひとつメジャーになれないのはエログロ色の濃いイヤミスを敢えて手に取る読者層が薄いことに加えて、散乱した糸の断片が1本に繋がっていくが如くの仕掛けについていくのに少々エネルギーを要するという所以もあるかもしれない。 あとは、どうしても湊かなえの影に隠れてしまうというところだろうか... |
No.6 | 6点 | ふたり狂い- 真梨幸子 | 2012/10/21 23:33 |
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これはなかなかの凝り凝り連作短編集。
相変わらずイヤミスであることは間違いないが、作が進むにつれ事件や登場人物達が絡み合い、後半は時系列も交錯しながら最後には一応全体としてのストーリーが焉を結ぶ。(しかし全てがクリアされるわけではない) 自分は少々疲れ気味のこの1週間の中でのチビチビ細切れ読みになってしまったので、要所々々の小さな驚きネタを感情で「おっ」と味わうことはあまりできなかったけれど「コレは確かアレ・・・つまりあそこに繋がっていたのか」と頭で感心した箇所は少なくない。 まぁこういう作品は体調のいい休日にサーっと読んでしまわないと本来持つ仕掛けの妙味を十分堪能できないかもしれない。 |
No.5 | 6点 | 深く深く、砂に埋めて- 真梨幸子 | 2012/10/03 22:33 |
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毎度のことながら、全体を構成するパーツとなる一つ一つのストーリーの作り込みの濃厚さに圧倒される。そして恋愛をはじめとした人の感情のドロドロエリアの描き込みにも。
あっと驚く仕掛けはないように思うが、時々見せる叙述小技の小気味よさも相変わらす。 いわゆる「読者を選ぶ」作品であることは間違いようもないが、生臭い話が苦痛ではないミステリーファンなら一読の価値あり。爽やかミステリー大好き読者は決して読んではならない。 |
No.4 | 6点 | 孤虫症- 真梨幸子 | 2012/09/19 22:30 |
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作者のデビュー作だが、後の「ドロドロ三部作」を遥かに凌駕するエログロミステリー。
荒削りの感は如何ともしがたいし播きっぱなしの餌もチラホラ残るが、それなりの仕掛けと牽引力を兼ね備え、メフィスト賞にふさわしいエキセントリックな意欲作だとは思う。エログロ不耐性のないミステリファンには一読の価値あり・・・とも思う。 まぁ正直この人の作品にもそろそろ食傷気味になってきたが、じゃあ個人的にもっといれ込める未読のミステリーがすぐ見つかるかというとなかなかなぁ・・・ |
No.3 | 6点 | 更年期少女- 真梨幸子 | 2012/09/12 22:58 |
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エミリー、シルビア、ミレーユ、ジゼル、ガブリエル、マグリット・・・・少女漫画にかぶれた六人のオバサマ達(全員生粋のジャパニーズ)のイタ~イお話・・・では済まされない連続殺人劇。相変わらず俗物心をくすぐるリーダビリティで読ませてくれる。
「殺人鬼フジコ」「女ともだち」とともに作者のドロドロ三部作の一つとされているようだが、最近この手の作品は「イヤミス」と称されているとのこと。もちろん「イヤな読後感を残すミステリー」は大昔からあるわけだが、本書の解説によると、このイヤミスという言葉の発祥・普及は湊かなえの「告白」の大ヒットに端を発するのではないかということで近年では湊氏をはじめとして沼田まほかる、水生大海、岸田るりこ、深木章子、そして本作者の真梨幸子といったいずれも女性作家がイヤミスの旗手とされているらしい。 この分野の読書量が乏しい自分がパッと思い浮かぶイヤミス作家といえば今のところ湊、真梨、永嶋恵美の三女史。 本書の帯には「不快すぎて痛快」というフレーズもあるが、そこまでのパワーは感じられなかった。(いやいやミレーユの章はかなりの不快パワーだったぞ) まぁ、殆どエログロを使わずにこれだけのイヤミスを書き上げた作者・・・の他の作品をもう少し読んでみたい。 |
No.2 | 6点 | 女ともだち- 真梨幸子 | 2012/07/24 22:50 |
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「殺人鬼フジコ」同様なかなかのグロさと「カラいけど止められない」明太子のようなリーダビリティを兼ね備えた「ミステリー」
ただねぇ、思わせぶりに盛り上げて、途方もない意外性を匂わせて・・・・連れて行かれるところは・・・好みが分かれるとしか言いようがない。 それでも一見「んなんアリかよ」と思える真相も、入念に伏線は張られているから「何でもアリ」作品ではないと思う。もちろん「女って怖いね~」とか言って片付けられる話でもない。 この手の女性作家(どの手だ?)の作品の例に漏れずさまざまな薀蓄が語られるが、ムーミンキャラクターのスナフキンとミイが異父姉弟だったというのには驚いた。スナフキンがミイの弟だったとはね。 |
No.1 | 6点 | 殺人鬼フジコの衝動- 真梨幸子 | 2012/05/30 23:08 |
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まさに不快極まりないけど読み止まらない・・・・・・っていうことは結局楽しんで読んでるんだよね・・・
粗筋だけで言えばこれほど狂ってる話はない。しかしフジコの(惨劇前のイジメは流石に酷すぎるが)転校先の小学校のクラス内の派閥模様や中学以後の上昇、転落を繰り返す人生ストーリーは正直面白い。 ちょっとバカっぽい文体は漫画のようだし、度々出てくる現実、回想、夢を混在した会話描写も自然な感じで受け入れやすい。 結末は、意外といえば意外だが驚愕とまでは・・・ |