皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
シーマスターさん |
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平均点: 5.94点 | 書評数: 278件 |
No.6 | 6点 | 花の鎖- 湊かなえ | 2013/12/09 22:07 |
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3つのストーリーが3交代で進み、やがて繋がるという物語であり、パターンとしてはさほど珍しくないだろうが、その種の作品の中でも本作には斬新な試みが感じられ異彩を放っているように思われる。
何が斬新かと言う前に、まず文庫の帯の「驚きのラスト」というフレーズには恐らく作者自身が心外の念を抱いているのではないだろうか。この作品は決して、3つの話が突然1つに結びついて読者をあっと驚かせようという小説ではない。 個人差はあるだろうが、多くの読者が(恐らく)真ん中すこし過ぎあたりから少しずつ各々の繋がりが見えてくるように作者に導かれ、終盤にはまるで作者と一緒に物語を組み立てている(パズルを嵌め込んでいくという感覚に近いだろうか?)ような気分にすらなってくる・・・こういう感触を味わわせてくれる小説は個人的には殆ど記憶にない。 各々のストーリーの途中は若干ダラダラした感じもあり、ラストも「くどさ」が拭えない上、期待された「感動」の要素もやや薄弱な感が否めない。何より湊かなえらしい毒を期待して読むと肩透かしを喰らった気分になるだろうが、美しく哀しく救いがある物語でもあり、個人的にはこの人の構成力の素晴らしさがデビュー作から変わっていないことを実感させられた。(まぁ偶然の多用・・特に本作では同じサークルで同世代のAML・・も相変わらずだが) |
No.5 | 6点 | 夜行観覧車- 湊かなえ | 2013/04/03 22:13 |
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確かにミステリーとしては何ということもない構成だし事件の核も目新しいものではないが、相も変わらずイヤになるほど人間臭いリーダビリティでグイグイ引っ張ってくれる。相性もあるだろうが、やはりこの人は文章で読ませる作家だと改めて実感させられる。(ドラマも割りと評判が良かったようだが)
ラストは「拍子抜け」とか「中途半端」という感想が多いようだが、個人的には十分作者らしさが出ているように感じた。 文庫の解説にはいきなり『告白』のネタバラシがあるので未読の方はご注意を。 |
No.4 | 6点 | 往復書簡- 湊かなえ | 2012/09/02 18:02 |
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タイトルどおり、全て手紙のやりとりで進む100ページ位の中編3作と10ページの短編1作からなっている。
・「十年後の卒業文集」・・・今更ながらのトリック・・・それにこれは無理でしょう。 ・「二十年後の宿題」・・・作者らしい凝ったお話。これは無理ではないかもしれない。しかしこの終わらせ方は好きではない・・と思っていたら・・ ・「十五年後の補習」・・・これもかなり凝った話だが、う~ん・・・・・・・・・・・・・・・負けました。第2話が映画化されるそうだが自分としてはこちらの方が・・・しかし忠実に映像化されたものを見たら一溜まりもないだろう。 ・「一年後の連絡網」・・・イマイチ意図不明だが、まぁ第2,3話の・・ということで。 正直感動もしましたよ。だけど湊さんにはやはり人の悪意や敵意のドロドロ感や生臭さを期待しているので、そういう意味では今回はやや中途半端の印象は拭えなかった。 |
No.3 | 6点 | 贖罪- 湊かなえ | 2012/06/27 23:19 |
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作者の三作目。
ここまで刊行順に読んできた印象としては、右肩下がりの感が否めない。 本作は作者得意のモノローグ形式の連続で進められる。 それぞれの章話は回り道が多すぎて倦怠感を催すこともあるが、読了してみれば(雰囲気づくりも含めて)決して無駄話が多かったわけではないと思う。 全体の構成も前二作同様、細かい伏線が鏤められたものになっているが、その緻密さがあまりにも多くの「偶然」という部品に支えられているためミステリーとしてはちょっとキビシイかな~という感触は拭えない。 ただ、これは作者の確信犯というか本作を書くにあたって始めから「偶然に頼らない」ことを放棄していた、というより偶然に頼ることを前提として創作したという気もするけどね。 まぁ何だかんだ言っても、この作者には読ませる力があると思う。特に人の悪意をテーマにしたドロドロネタを好む読者にとっては。 恐らく自分はこの人の以後の作品も文庫化され次第、手に取ってしまうのだろう。 ミステリとして、どうのこうのというより週刊誌のスキャンダル記事でも読む感覚で。 |
No.2 | 6点 | 少女- 湊かなえ | 2012/03/03 23:57 |
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う~ん、そうきたか・・・
「偶然多すぎ」というご感想もごもっとも。まぁミステリーというより純粋に「仕掛け」を楽しむ娯楽小説として読めばなかなかではないかと。リーダビリティも高く短時間で読めてしまうし。 二人の女子高生の歪んだ心理を描いていく二交代の物語が、二等辺三角形の底角BとCから頂角Aに向かって進み、合流後にオープンにされるトリック、そして終盤の怒涛の連鎖・・・・うん、個人的には悪くない。 しかし、この「因果応報」は・・・神の裁きか悪魔の業か、それとも私刑そのものか。 |
No.1 | 6点 | 告白- 湊かなえ | 2010/06/12 23:11 |
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世評高すぎないですか?
宣伝うますぎ? 衝撃的との呼び声高い第一章の仕掛けは、短編やショートショートの名手といわれる先人達が幾度となく使っている手だよね。 もちろん本章の評価はトリックだけではなく、事件の異様性とグイグイ引き込まれる主人公の語り口によるところが大きいことは十分認めますけど。 (しかし無垢な幼児が犠牲になる話はやっぱり辛いなぁ) 第二章以後も各章が事件の重要人物達の、それぞれの人生・立場からの経緯の独白という形式で語られ非常にリーダビリティは高いが、リアリティを感じさせる語り手が一人もいないので、どうしても作り物っぽさが拭えないのは物語の構造上やむを得ないところか。 そしてラスト、そんなに驚愕? 最早いろいろ悟ってしまったソイツに対する裁きになりますか? 上映中の映画も気にはなるが、多分テレビ放映されるまで見ることはないだろう。 |