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テツローさん
平均点: 7.46点 書評数: 108件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.4 8点 リセット- 北村薫 2003/07/13 19:44
 主人公2人のそれぞれの話が、私小説風に淡々と語られるので、最初は本当にどこが絡んでるのか、全然検討がつかなかった。つながった時は、少々唐突過ぎじゃないかな?、と最初は思ったけど、まぁこれはこれで良いんじゃないでしょうか。2番目につながった時は、麦畑を駆けて来るセーラー服の少女なんて、牧歌的だなぁとうれしくなった。
 その最初の戦前の話や、父が子に語る話も、昔話として面白く読める。(鼻につくという感想もあるが、逆に理解できん)転生物というネタがばれた後は、展開が速くなるのもそれは仕方ないだろう。引っ張れるのはばれる前まで。主人公にからむ女の子が出てきて、読者が「ははぁ、この娘が生まれ変わりだな」とおおよそ見当がついてるのに、知らん振りして続けるのは間抜けだろうし。
 後、獅子座流星群で始まって、獅子座流星群で終わるのも、良い展開だと思う。

No.3 10点 空飛ぶ馬- 北村薫 2002/06/06 01:06
 下の方々の書き込みで「私」に対する評が厳しい事に、少々驚いた。いや、「砂糖合戦」のあの犯人(?)と比べてごらんなさい。悪魔に対する天使に見えません?(笑)それが無くとも、文学嗜好があって、寄席に自分で通える女の子なぞ、僕にとってはツボなのです。…どうでもいいことですけどね。

 ミステリとしては「織部の霊」の解決がまず見事だと思った。不可能興味の謎を解き明かすロジックが、一番上手くはまっていた。「砂糖合戦」に隠れて、あまり評価の対象になってないのが惜しい。もちろん「砂糖合戦」も良いし、収録作全て秀逸だと思う。
 何より、最初読んだ時は、普段読んでいるミステリとあまりに違う筆運び、情景描写に、素直に感動した。バックグラウンドに古典文学作品(落語の演目も含む)のペダントリーを散りばめているところが、心地良い感じがする。読んでもいない作品が多いが、それは関係無く、静けさを醸し出しているように感じるのが良いと思う。
 「日常の謎ミステリ」というジャンルで後に続く人々もたくさん輩出されているが、この作品集が今もやはりトップだろうと思う。

No.2 7点 水に眠る- 北村薫 2002/06/04 23:02
 ミステリではないですよね。恋愛物、及び、普通小説の短編集。普通小説は、北杜夫を連想した。(北杜夫を読み込んでいる訳ではないが)
 恋愛物では「植物採集」が一番良かったかな。からっとした性格の主人公が、ラスト一行で切ない主人公になる、ここまでの持って行き方が上手いなと思う。この主人公、いいなあ(吐息・笑) 細かい話題だが、僕も高野山に行った時、「白蟻よ、安らかに眠れ」という墓碑を見たことあり、知った所が作中に出て何かうれしくなった。
 他に印象に残っているのは、「水に眠る」都会的雰囲気(バーにウイスキー、カクテル)が良い。
 「くらげ」僕らのいる世界から少し逸脱した現実、しかし、いつそうなってもおかしくないと考えさせる展開が怖い。
 「矢が三つ」北村先生、キャピキャピ(死語)女子中学生の一人称は、無理があるんじゃ…。これもまた、少し逸脱した現実で、何となく居心地悪い話。ただ、逆の立場ならどう思っただろう? 逆の立場の物語なら、女の人はどう読むだろう?
 「はるか」良いヒロインですね。店主の方が主人公だから、はるかが徹頭徹尾客観視されてるのが良かったのかもしれない。はるかちゃんの描かれていない部分に、僕の理想などが入り込んでしまうのだろう。はるかの心情というのは、果たしてどんなものだったろう? まるで、小・中学校の時の国語の授業のようだ。
 何となれば、北村氏はかつて国語教師であったのだ。

No.1 10点 冬のオペラ- 北村薫 2002/04/23 00:40
 「名探偵はなるのではない。ある時に自分がそうであることに気付くのです」 あるいは「《名探偵》というのは、行為や結果ではないのですか」「いや、存在であり意思です」 ここら辺のセリフに代表される、名探偵という存在に対する考え方やそのスタイル、いいですよねえ。およそ、ミステリに、もっと言えば名探偵というものに、憧れ・幻想・レゾンデートル(使い方、正しいかな)を持つ者が、漠然と感じていることを明文化してくれた。そんな感じです。ふと思ったのですが、これはいわゆる後期クイーン問題に対する、北村氏自身の回答なのでしょうか?(確かめたわけではないが)

 「三角の水」佐伯先輩に代表される、名探偵というものに思い入れの無い一般人の描写は、まあ実際こんなもんなんでしょうけど、何か嫌ですね。犯人の無自覚な悪意も相変わらず北村氏らしい。「蘭と韋駄天」唯一スカッとした作品。こういうので続編を期待したいのだけど、円志師匠シリーズとかぶるかな? 「冬のオペラ」巫探偵は毅然とした態度を崩さず、さすがですね。椿さんのその後がとても気になります。また、あゆみちゃんもワトソン役を続けているのでしょうか。そういう余韻が後に残って、思い返すとしんみりする作品集です。

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テツローさん
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採点傾向
平均点: 7.46点   採点数: 108件
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