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ぷうばさん
平均点: 4.50点 書評数: 12件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.4 5点 眼球綺譚- 綾辻行人 2005/08/04 23:28
 作者自らホラー集と言っているが「怖い」というより、とにかく生理的不快の追求に徹している。

・「再生」 これは途中でオチが読めてしまう。(ショートショートなんかで時々見られるネタ) グロいけれど本質的には笑い話。
・「鳴小池」 進化論的ズッコケ話。
・「特別料理」 ふざけ過ぎ。人を気持ち悪がらせて喜ぶ、という作者の性格の悪さが遺憾なく発揮されている。最後の会話が想定外のブラックを効かせてくれる。
・「バースデイ・・」 ブラッドベリ風幻想ホラー。クリスティの幻想短編にも似たようなテイストのがあったね。
・「鉄橋」 こういう話くらいは現実オチにしてみてもよかったのでは。
・「人形」 第1話同様、時々見られるパターン。
・「眼球・・」 相当なグロさで眼を覆いたくなるシーンも多いが、話の構造は見事。

全編を通して、おぞましいことこの上ないが、根底にはどこか茶目っ気を感じさせる話が多い。

No.3 5点 殺人方程式- 綾辻行人 2005/04/22 01:30
 館シリーズのようなゾクゾク感もなく、犯人の正体、犯行に至る動機や過程も、蒸し返しネタだが、これほど仰々しいタイトルで、それを裏切らないミステリも珍しい。(この点「人形はなぜ殺される」に匹敵)
 ただ、こういうトリックを使うのなら始めの方でも、きちんとした図面表示が欲しかったね。(殆ど不要な館シリーズでは毎回キッチリやってるのにね)
 それが無いから、それまでの綾辻節を期待して読むと、「ふ〜ん、なるほどね」というプロミスのCMのような読後感に終わりかねない。あるいは「ミルコと戦ったのに、タックルで倒され関節を極められた」(興味ない方ごめんなさい)という感じ・・かな。
 ところで、本作の舞台環境が、ほぼ同時期に出ている法月綸太郎の「誰彼」にかなり似ているのは単なる偶然ですかね。

No.2 5点 人形館の殺人- 綾辻行人 2005/04/05 17:15
「〇〇〇〇だけは勘弁してくれ」と思いながら読み進めたものだが・・・・マンマ・・
〇〇・・は、その昔は画期的だったのだろうが、現代(少なくとも、新本格以後の)ミステリでは作家が「何とか読者を驚かせたいが、何も思いつかない」時の「シノギの術」―これがあれば、いとも安易に何でもできる―であり、更に本作は前3作をミスリーディングに利用している点などからも「省エネ作」の感は否めない。 作中の作家氏は、これを重々自覚している作者の(もちろん冗談半分の)懺悔の意思表示としてのスケープゴートでもあったかもしれない。

No.1 5点 どんどん橋、落ちた- 綾辻行人 2005/01/21 02:57
 綾辻さんが、こんなふざけた短編集を出していたとは、結構驚き。 
 表題作は、地形の設定に少々辟易したが、作中の綾辻氏より少しだけ早く(もちろん解答提示後)真相に思い至った時には・・笑えた。
 『ぼうぼう森・・』は多数の登場物と、その関係、更に地図・・がうんざりだったので、ほとんど斜め読みしたが、真相には、まあ驚けた。
 『フェラーリ・・』 前2話に続いて読むと、「よくやるよ」としか言いようがない。
 『伊園家・・』 これほど登場人物の把握が楽な話はなく、始めの方は結構笑えたが、結末に至る頃には、その陰惨さに食傷気味。
 『意外な犯人』 犯人の立場は簡単すぎる・・がその氏名はちょっとね・・・
 全編を通して感じられる本格に対するフェア宣言の「くどさ」や自虐的な自己表現からは、この人自身がこの時期、悩めるリンタロー状態だったことが窺われる。

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