皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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ROM大臣さん |
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平均点: 6.07点 | 書評数: 149件 |
No.2 | 5点 | 昏い部屋- ミネット・ウォルターズ | 2023/11/30 13:32 |
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ヒロインのジンクスは、車が激突する寸前に車外に投げ出され、奇跡的に一命を取り留める。過去数日間の記憶を失い、彼女が病室で目を覚ましたところから物語は始まる。
ジンクスは誇り高く聡明で自分自身を頼みにし、人生に強い愛着を持っているが孤独だ。義理の母親たちと弟たちに対するもつれた感情、友人たちの間に横たわる溝、父親たちとの緊張感をはらんだ関係。裏切られ、傷つけられ、再び痛手を受けることを恐れている。それでもジンクスは彼女の独特のやり方で、周囲の人々に愛を注ぎ続けているのがよく分かる。 閉ざされた記憶、疑惑の渦、窺い知れない人間の心、つまりは「昏い部屋」の中に一筋輝くものが見える。 |
No.1 | 7点 | 鉄の枷- ミネット・ウォルターズ | 2021/09/01 13:58 |
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中世の拷問器具を身に着けて変死をしていた老女の謎をめぐる物語。死者のかかりつけの女医と、その夫の画家、捜査に当たる部長刑事の三人が、各々の立場から事件に関わっていく。そうした現在の物語の合間に挿入されるのが、老女の書いていた日記だ。過去へとひたすら遡行するその記述は、現在とも密接に絡み合いながら死者の肖像を鮮やかに描き出し、読者が最初に抱いていた「偏屈で陰険なだけの老女」という印象を突き崩す。
しかも一方でこの作品には、未来に通じる明るい視線も存在する。医師と画家と刑事のやり取りは愉快なものだし、彼女たちが老女の孫娘と関わり、不器用ながらも少女のために骨を折る姿などには心温まるものがある。そんな向日性が、陰鬱になりかねない作品に和らぎをもたらし、沈痛な最終ページを経てもなお、快い読後感を与えてくれるのだ。 |