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ROM大臣さん
平均点: 6.07点 書評数: 135件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.3 6点 死が二人をわかつまで- ジョン・ディクスン・カー 2022/03/24 15:25
一応密室の謎はあるものの、怪奇趣味や複雑極まりない謎といったものはない。だが、それにも増して目を引くのは、全編を支配する強烈なサスペンスである。迫りくる事件を予感させる嵐の鮮烈な描写から始まり、自分の婚約者が毒殺魔かもしれないという、名作「火刑法廷」におけるサスペンスに比肩する。
それにしても、カーはストーリーテリングのうまい作家である。レスリーに対する疑惑の積み重ね、二人の女性の間で揺れ動くディックの心の葛藤など、物語の導入部から興味をひきつけて離さない。

No.2 8点 ビロードの悪魔- ジョン・ディクスン・カー 2021/12/06 15:36
現代人が過去にタイム・スリップする場合、問題になるのはその当時の人間に、いかにしてなりすますかだが、本書では当時の風習に詳しい学者を主人公にすることでこの問題をクリアしている。
次々と繰り出される謎、美女たちとのラブ・ロマンス、国王打倒の陰謀を企むグリーン・リボン党を敵に廻しての手に汗握る大活劇、そして主人公を襲う絶体絶命の窮地と、絢爛を極める物語に目を奪われるが、幻想的な設定を前提とした真相の意外性と、伏線の張り方の巧みさにも感嘆させられる。歴史伝奇小説と本格ミステリのツボを知り尽くしているカーならではの試みといえる。

No.1 9点 火刑法廷- ジョン・ディクスン・カー 2021/10/25 14:39
二つの消失事件だけでも不可能興味満点なのに、十七世紀の毒殺魔が転生を繰り返しているのではないかという怪異現象まで絡めて、出口のない恐怖の迷宮へと追い込んでゆく構想は、純粋にホラーとして読んでも怖い。無論そこはカーのこと練りに練った謎解きは、不可能犯罪の巨匠の名に恥じない水準を示している。
意外な犯人が暴かれ、途轍もないショッキングな結末によって幕が下りた後、エピローグにおいて物語は再びホラーへと鮮やかに反転する。二つの結末のいずれもが互いに矛盾することなく成立するよう、細心の注意を払って伏線が張り巡らされている。本格ミステリとしてもオカルト小説としても超一流の傑作。

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