皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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SUさん |
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平均点: 5.87点 | 書評数: 67件 |
No.2 | 7点 | 暴虎の牙- 柚月裕子 | 2024/08/06 21:18 |
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極道にとことん歯向かう愚連隊・呉寅会を率いる沖虎彦の波乱に満ちた青春を描いている。
マル暴刑事・大上も、日岡秀一も、そして尾谷組組長となった一之瀬守孝も、これまでのシリーズ二作に登場してきた男たちの全てを脇に回し、沖虎彦の苛烈な生き方を見事に引き締めている。 「孤狼の血」よりも前の年代から始まるが、最後は「凶犬の眼」の先まで描く物語である。つまり本書は三部作全体を包含する物語なのである。まるで男たちの挽歌であるかのような、余韻ある哀しいラストが心にしみる。 |
No.1 | 5点 | 孤狼の血- 柚月裕子 | 2023/06/10 21:14 |
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舞台は1988年の広島。所轄署の捜査二課に配属された新人の日岡が、先輩刑事・大上の下で暴力団系列の金融会社社員の失踪事件を追求する物語。
本書の手柄は大上の圧倒的な存在感だろう。凄腕のマル暴刑事で、独自の信条と善悪観があり、日岡も次第に感化されていく。もちろん次々に登場する個性豊かなヤクザ群像と、同時多発的に起きる暴力団同士のねじれた戦いも、真相が幾重にも隠されているがゆえに面白い。 ただ、語りに巻き戻しが多くてスピード感がないのが難だし、どんでん返しの切れも今ひとつ。それでも汚れた正義と守るべき矜持をめぐる男たちの死闘は迫力に満ちており、その顛末を示す年表と、抑制の充分効いた静かな熱きエピローグが抜群で、初めて題名の意味が胸に強く迫ってくる。 |