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ぷちレコードさん
平均点: 6.32点 書評数: 242件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.9 6点 いけないII- 道尾秀介 2024/10/05 22:24
各編の最後に収められた写真によって、それまで記されてきた物語に潜む、表立って語られなかった部分が浮かび上がる。
写真は一枚であっと言わせるような仕組みではなく、写真と本編の文章とを突き合わせて、読者が読み解いていく必要がある。ただし、次章の中で前章の事件について語られて、隠された部分がある程度示されているため、前作に比べると親切な作りになっている。
難易度は下がった一方、個々の人物や背景の描写は前作以上に掘り下げられて、人間関係の歪みと残酷さ、そして悲しみが心に刺さる。

No.8 6点 カエルの小指- 道尾秀介 2024/08/03 22:39
「カラスの親指」の続編だが、単品でも十分楽しめるように仕上がっている。元詐欺師の武沢竹夫の現在は、その話術を実演販売という健全な仕事で活かして暮らしていた。ある日、彼の実績が山場を迎え、いざ客たちに財布の口を開かせようとした時のこと、一人の中学生が口を挟んできた。口上のリズムは崩れ、その日の商売は散々な結果に終わってしまう。武沢は再び詐欺の世界に回帰してしまう。
詐欺によって生活を破壊された者が、加害者を騙し返して復讐する。大枠はそのような騙し合いの物語である。だが作者らしい様々な捻りが加えられている。誰が誰を騙しているのか、目くるめく展開が実に楽しい。しかもそこに、家族や仲間といった糸が、心強いものも心を削るものも含め織り込まれていて、騙し合いが実に味わい深いものになっている。しかし、前作に比べてしまうと、こじんまりとしているのは否めない。

No.7 8点 ラットマン- 道尾秀介 2024/06/13 22:15
主人公の姫川亮が関わる過去と現在の二つの殺人の構図を重ね合わせ、いずれの事件でも二重三重のどんでん返しが仕組まれている。
この作品で作者は、人間が何かを知覚する過程で前後の文脈が結果を変化させてしまう心理現象を持ち出し、時にはネズミに、時には人間に見えるラットマンの絵を引き合いに出す。だとしても、認知科学系とも従来の叙述トリック作品とも違い、むしろ同じ文章が複数の意味に読めるという手法を駆使したパズラーとして、もっと評価されてもいい作品だ

No.6 7点 雷神- 道尾秀介 2023/09/11 22:52
埼玉で父と一緒に小料理屋を切り盛りする藤原幸人の一家が不幸に見舞われるシーンから始まる。四歳の娘・夕見がマンションのベランダの淵に置いた植木鉢が落下、それが原因で起きた事故で妻の悦子が亡くなる。
物語は本編だが、その十五年後、父の小料理屋を継いだ幸人のもとへ、娘の秘密ネタに金を要求する男が現れるところから動き出す。幸人は十五年前の事故の原因を夕見に明かしていなかったのだ。やがて脅迫者らしき男が店に来るに及んで、幸人はついに過去と向き合うことを決意。実は、彼はさらなる秘密を抱えていた。
冒頭の脅迫者の出現から、それを軸に話が動いていくのかと思いきや、次第に三十年前の羽田上村の事件へとスライドしていく。幸人たちによって羽田上村の人間関係が明かされていくあたりは、本格ミステリと社会派ミステリの読みどころを見事に融合させており、さすがと思わせる。

No.5 7点 シャドウ- 道尾秀介 2021/11/05 22:11
登場人物は精神医学の医師や研究者数名とその家族。精神障害が核となっている構図が第一章で分かる。複数の登場人物の視点によって物語が語られるという一見ありふれた手法を逆手に取り、終幕近くになって事件の全貌が明らかになるとともに、一挙にカタストロフィへとなだれ込んでいく展開は圧巻。

No.4 6点 スタフ staph- 道尾秀介 2021/06/17 22:22
肩肘はって頑張る女性とその甥。その甥が巻き込まれる少し変わった事件。
全く先の見えない展開に、衝撃のどんでん返しに驚くが、そこからさらに待ち受ける衝撃の真相に唖然とさせられる。
最後にこの物語の本当の狙いに気づいた時は、胸を締め付けられるほどの切なさを感じた。

No.3 4点 向日葵の咲かない夏- 道尾秀介 2020/12/22 17:20
肝となる世界設定がご都合主義的。しかも探偵役の造形は、この不思議な世界にあってさえ不自然極まりない。新本格黎明期に出たある名作の異形譚という印象が拭えない。

No.2 5点 貘の檻- 道尾秀介 2020/10/07 19:21
横溝テイストにあふれた舞台設定に加え、地下水路、農作業のしるべとなる山の残雪の形、薬物、写真など多彩な道具立てを駆使し、人物の造形にも怠りのない精緻な本格ミステリ。

No.1 6点 透明カメレオン- 道尾秀介 2020/05/05 20:10
読みどころの集合体といって過言ではない本作だが、特に素晴らしいのは、物語を用いてフィクションが人にもたらす特別な効能を描いる点にある。偽りとは必ずしも卑怯であり害をなすものではなく、創作とは現実よりも劣る絵空事をただ濫造する行為ではない。
現実を前にしたとき、偽りが折れそうな心を支え、創作が一歩踏み出す力をもたらすこともある。そうした真理を、本作は笑いと涙を交えて教えてくれている。

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ぷちレコードさん
ひとこと
中学生の頃、ミステリにはまった。でも続いたのは3年間ぐらい。今また、ミステリにはまりつつある。やっぱりミステリは最高だ。
好きな作家
採点傾向
平均点: 6.32点   採点数: 242件
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