皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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ことはさん |
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平均点: 6.22点 | 書評数: 279件 |
No.5 | 6点 | 追憶の殺意- 中町信 | 2025/02/09 15:11 |
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書かれた時代を考えれば、しょうがないのかもしれないが、自動車教習所という舞台や恋愛事情などの話はあまり好みでなかった。
しかし、事件の様相が変わっていく過程は面白かったし、その過程で提示されるトリックや、トリックが見破られる契機はよく考えられていて、かなりよかった。この辺の、プロット作りやトリックや手がかりは、いかにも鮎川哲也風だ。(鮎川好きは、徳間文庫の「太鼓叩きはなぜ笑う」の解説で、熱く語っている) 残念なのは、キャラクターが立っていないために、情感に訴える部分が乏しいところで、中町信が再ブレイクまでマイナーだった要因はこういうところなのだろう。 |
No.4 | 4点 | 空白の殺意- 中町信 | 2025/01/03 01:36 |
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これはいまひとつだった。なんといっても、高校野球という背景や、ラブホテルを舞台にした情事などの話の展開が、あまり好みでなかった。
警察も含めて、根拠もないのに「……としか考えられない」いう決めつけが多く、事件に対する試行錯誤が行われないのも、謎解きとしては残念。 途中、ある人物の独白が入るので、それについては、読者には事実だと担保できるが、登場人物にはわからないはずなので、「なぜ断定できるの?」 と思ってしまう。だから。その推定が覆されても、「いや元々根拠薄弱だったじゃん」と思って、意外性を感じない。 全体の仕掛けについて、カーのある作品をフィーチャーしているそうだが、カーのほうがよい。確かにそれはxxxxの謎を解くためのキーだが、そもそもxxxxに焦点があたっていないので、そこを強調されてもなという感じがした。 |
No.3 | 7点 | 模倣の殺意- 中町信 | 2025/01/03 01:31 |
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よみやすいのはよいが、文章表現でいいと思えるところはないので、よくもわるくもプロット勝負。まあ、いつもの中町信作品だ。本作は、途中のプロット展開も飽きさせないので、なかなかよかった。
2つの語りが交錯する構成になっていて、そこはかなり好みだった。ひとつは誘拐事件で、もうひとつは剽窃事件。それぞれにアリバイ崩しの展開が盛り込まれているのが、鮎川好きを自認している中町信らしいところだ。(鮎川好きは、徳間文庫の「太鼓叩きはなぜ笑う」の解説で、熱く語っている) さらに、「2つの事件の絡ませ方」は、あの趣向も含めてきれいにきまっていて、これはよかった。「驚き」のインパクトは大きくないが、「あれはこういう事だったのか」と、いくつものエピソードがカチカチと嵌まってゆく「整理の快感」にすぐれていると感じた。 まあ、今から、中町信だからと、過度にインパクトに期待をして読むと、がっかりしてしまうかもしれないが、良作だと思う。 |
No.2 | 5点 | 十和田湖殺人事件- 中町信 | 2024/11/04 23:56 |
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1章では、事件の関係者が、まるで刑事の報告のように、事件の経緯を別の関係者に述べたりして、いろいろ違和感があった。2章からは、警察とのやりとりが主体になるので違和感はなくなるが、この辺が中町信の小説がうまくないところだと思う。
また、2章以降も、事件を起こし過ぎて構成が複雑になり過ぎていて、事件の全体像がなかなか整理できない。キャラクターの立ち方もいまひとつなので、誰が誰だかすっと入らないせいもある。この辺も、すこし演出を失敗しているように感じた。 ただ、解決で、ある人物のある属性を指摘し、いくつも伏線を拾い上げていくところはよかった。これはよく考えられている。 あと、作品とは別の話だが、「トクマの特選!」の装丁では、いつも表紙と同じ絵が口絵にあるのだが(通常同じだよね?)、本作は表紙と口絵で、女性の口元が違う。なにか意図があったのかな? それと、「トクマの特選!」の帯も手許にあるのだが、そこで予告されている3作目「炎上/榛名湖に沈めた過去」(榛名湖殺人事件のことだろう)は、結局、「トクマの特選!」が止まってしまったので、出されずに終わってしまった。装丁も含めて好きなシリーズだったので残念だ。 |
No.1 | 7点 | 田沢湖殺人事件- 中町信 | 2023/07/30 00:35 |
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1部の前半はあまり楽しめなかった。「ロール・プレイング・ゲームを、そのままノベライゼーションしたようだ」と思うくらい。「Aは悲しかった」といった無味乾燥な文章で、事件と経過がつづられていくだけなのだ。
これはちょっとつらいかなと思ったが、事件が動き出してからは面白かった。 文章が無味乾燥なのは同じだが、事件が動くこと、動くこと。別の事件が起き、謎があらわれ、謎が解かれ、そしてまた新たな事件が起きる。テーマパークのトラムみたいに、飽きさせない。最後に見えてくる構図も、なかなか魅力的だ。 これは評価が高いのもわかる。 ただ、評価するのは謎解きミステリ好きだけだろうな。文章表現や人物造形にはほとんど魅力がなく、プロット展開のみの魅力だけだから、ミステリ的なプロットに嗜好がない人には、退屈きわまりない作品かもしれない。 |