皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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麝香福郎さん |
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平均点: 6.72点 | 書評数: 75件 |
No.3 | 6点 | ZONE 豊洲署刑事 岩倉梓- 福田和代 | 2025/04/01 21:16 |
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豊洲署の生活安全課刑事・岩倉梓が手掛ける事案は、どれも事件以前の事件とでもいうべきものだ。「月へ帰る」と言い残し、幼い子供を置き去りにした母親。孤独死した偽名の男と孤独に付け込む犯罪の影。幼稚園に届いた脅迫状に隠された母親たちの確執。ストーカー被害に秘められた思惑。震災被災者を騙った詐欺事件の根っこにある哀しい歪み。ここには捜査一課の刑事が扱うような凶悪な事件は一切出てこない。しかし、本作にはスリリングな展開とは別の種類の読み応えがある。
急激に変貌する地域という特殊な空間を定点観測し、人の暮らしの中に生じる明暗を様々に切り取りながら、そこに寄り添う、あるべき警察官像を主人公の成長とともに示していく。犯罪を未然に防ぐ努力と起きてしまった犯罪を捜査することは、刑事にできることは限られている。だが、人と街のためにできることは、それが限界ではないはず。そう自らを奮い立たせる姿は、凄惨な事件に命懸けで挑む刑事にも負けない矜持を感じさせ、胸を熱くする。 |
No.2 | 5点 | スパイコードW- 福田和代 | 2024/01/14 20:13 |
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近い将来を舞台にした、中国の台湾侵攻計画をめぐる暗闘を描いている。五つの章を通じて浮かび上がるのは、中国側の台湾に対する企みと、それに対抗する秘密組織の知略だ。武力紛争の危機をトリックで解決する。これが各章を貫くテーマ。
日本軍の秘匿資産をもとに設立された特務機関が、歴史の影で動いていたという虚構に基づく設定と、近い将来に現実に起こりうる危機。架空の存在を土台に据えることで、現実を照らし出す。気軽に楽しめるエンタメ作品であると同時に、現実の危機を浮き彫りにしてみせた一冊。 |
No.1 | 5点 | 東京ホロウアウト- 福田和代 | 2023/09/01 20:44 |
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オリンピック開催を目前にした七月上旬。宅配便トラックに積まれた荷物から青酸ガスが発生した事件を皮切りに、犯人からの予告通りのテロが続く。人為的な土砂崩れによる東北本線の不通。常磐自動車道のトンネル内でのトラック火災。それ以前に日本を襲っていた台風の被害もあいまって、東京への物流が滞っていく。
流通を人質にしたテロというテーマが興味深い。スーパーなどの店頭に当たり前のように並んでいる食料品などの日用品。だがそれは、さまざまな職に従事する人々の働きによってもたされている。 東京の孤島化を目指す犯人の思惑は、概ね成功する。だがそれに対抗するのがトラックドライバーたちだ。物だけではなく信頼を運んでいるというプライドを懸け、物の流れを取り戻すため工夫と戦いを始めるのだ。物流に関わる者たちの矜持とともに、現代社会の歪みに対する警告が浮かび上がるのが読みどころ。反面、そちらに筆が割かれたためかテログループが成り立つ過程の説明や、いくつかのテロのディテールが不足しているなど、やや物足りない点があったのは残念だった。 |