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YMYさん
平均点: 5.97点 書評数: 414件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.4 7点 死はあまりにも早く- ヘンリー・ウエイド 2026/04/29 20:41
ブラックトン屋敷の当主のジョン・ジュロッド大佐は、巨額の相続税を回避するため既に財産の大半を息子のグラントに移管していたが、課税を免れるためには贈与から五年が経過する一九五〇年九月二十五日までは生存していなければならなかった。ところが大佐は主治医から肝臓癌で余命六カ月との宣告を受けた。一族の財産を守るため、大佐が亡くなっても弟のフィリップが大佐に変装して必要な生存期間を経過したと見せかける計画を立てる。
倒叙形式で語られる作品で、犯人側、捜査側双方の動静が逐一詳細に記述される。サプライズを呼ぶミステリ的な仕掛けは特にないが、悲劇的な犯罪小説として十分に読ませる。社会性も色濃く、社会的諸条件の変化が相続税という形をとって世襲財産を解体し、特権階級を没落させる。その時代のうねりの中に発生した一つの悲劇が哀惜をこめて描かれている。

No.3 7点 推定相続人- ヘンリー・ウエイド 2026/02/08 21:12
ユースタス・ヘンデルの遠縁にあたるバラディアス男爵家の相続人ハワード・ヘンデルとその息子が水難事故で死亡し、相続権はハワードの弟の退役大尉デヴィッドと病弱な息子デスモンドに移った。彼等も死ねば爵位と莫大な財産が手に入ると認識したユースタスは、殺害計画を練り始める。
犯行動機の形成と実行の過程、その後の状況への対処の模様が全編を通じてユースタスの視点からじっくりと語られる。事態が推移する中で次第に追い詰められていく彼の焦燥不安が強いサスペンスを生み、最後まで緊張の糸を途切れさせない。

No.2 6点 議会に死体- ヘンリー・ウエイド 2025/09/02 21:40
クウェンバラ市が計画中の公営住宅建設予定地が買い占められ、地価は数倍に高騰していた。財政委員長のトラント参事会員は当局者の機密漏洩を疑い、議会で不正の追求を宣言するとともに、アーシントン市長の個人攻撃に及ぶ発言を行ったが、休憩中の議場に一人残っていた彼の刺殺体が発見された。机上の書類に血で「MA」と読める文字が記されていた。
事件現場の見取り図や関係者の行動時間行動表が掲げられ、ダイイング・メッセージ、アリバイトリック、巧妙な伏線やミスディレクションに意外な犯人と本格ミステリ特有の仕掛けや趣向が満載。
格別、目を引くトリック等があるわけではないので華やかさには乏しいが、堅実な構成と細部の技巧に支えられた仕上がりは抜群。

No.1 6点 警察官よ汝を守れ- ヘンリー・ウエイド 2025/08/13 21:37
警察本部内で執務中の本部長が射殺されるというセンセーショナルな事件を扱っているが、プール警部は試行錯誤を繰り返しながら地道に捜査を進めていく。その描写はリアルで手掛かりの提示もフェア。
警察小説的要素が濃厚で、組織内の人間関係やヤードと地方警察の関係、その中でのプールの立場と動き方などが興味深く描かれている。
動機と機会が一人の人物に重なった時点で犯人はほぼ特定されるため、謎解きの妙味はやや欠けるとことがあるが、よく練られたプロットと的確な人物造形に支えられた物語である。

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