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猫サーカスさん
平均点: 6.21点 書評数: 385件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.4 6点 鉄槌- 高田侑 2021/11/17 18:13
母と子の凄まじい愛憎が絡んだサスペンス。ある日、洋介のもとに兄の大輔から「父が倒れた」という知らせが入った。病院に着いた時、既に父親は死亡していた。姉を含む三人兄弟の母親春子は、二十年前に失踪したまま音信不通。居場所に探し当てた大輔は、記憶とはかけ離れた年老いた女を見つけた。やがてその母は愛人らしき男とともに、まるで鬼婆のごとく、兄弟を苦しめていく。大輔が妖艶なうなぎ屋の女将に惑わされるさまが冒頭に描かれているなど、全編にわたって独特の色気と笑いにあふれている。官能とブラックユーモアに満ちた兄弟それぞれの奇矯な日常に目を離せなくなる。後半から恐怖の展開が強まり、登場人物たちの表裏や、それぞれの身から出たさびのようなトラブルがますます深い混迷と悪夢を呼び込んでいく。実に刺激の強い一冊。

No.3 7点 汚れた檻- 高田侑 2018/02/22 20:48
現代の病む者たちをリアルに描き、生理的な嫌悪やおぞけの走る恐怖を感じさせることを得意としている作者。この作品で語られるのは、出口なしの地獄へ追い込まれた男の恐怖。主人公の辻原は、単調な作業、嫌がらせする上司、少ない給料の三重苦に不満を抱きつつ、小さな工場で働いていた。ある時幼馴染の牛木に、彼の父が経営する会社の社員にならないかと誘われた。就職にまつわる主人公の苦難は序の口で、最悪な出来事の後にもっとひどいことが起こる。暮らしていた家は次第に血で染まっていく。作者の代表作「うなぎ鬼」に出てきたうなぎの養殖場と似た、なんともいえない不気味さが漂っている。なにより登場人物ひとりひとりの描き方が見事で、ページをめくらずにおれない。ホラーファン必読の一冊。

No.2 7点 てのひらたけ- 高田侑 2017/12/07 21:22
作者ならではの深みをたたえた奇妙な話が並んでいる。表題作は、ありふれた怪談のような話で始まりながらも、女性の「ひかがみ」の美しさ、声や匂いの魅力など、五感を刺激するあやしい描写にあふれており、たちまち物語に引き込まれてしまう。他の収録作も、ある意味、不思議な空間や次元に入り込み、ありえないはずの世界が、いつの間にか現実と入れ替わっているというストーリーが基本になっている。曖昧な虚実の境界が溶けてゆく怖さ。そして幸せと不幸は表裏一体。ラストには、懐かしさ、後ろめたさ、愛おしさといった複雑な感情が、一度に合わせて喚起させられる。実に切なく甘美なホラー作品集。

No.1 5点 家政婦トミタ- 高田侑 2017/10/04 20:30
テレビドラマ「家政婦は見た!」「家政婦のミタ」をもじった題名ながらも、中身はれっきとしたホラーサスペンス。美人家政婦を雇ってから怪しい出来事が連続して起こる。家政婦の不気味な存在感と周到なたくらみによる陰湿な悪意がじわじわと家の中に入り込む恐怖。その過程が実に生々しく描かれている。また庭でエアガンを撃ちまくる70歳の母と41歳の息子というユニークな隣人一家をはじめ、近隣の人間関係が複雑に絡むことで、予想できない展開を生み出している。如実に伝わってくるのは、冷気や腐臭が部屋に充満している感覚。物語が終わってもなお恐怖の余韻が残る。

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猫サーカスさん
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採点傾向
平均点: 6.21点   採点数: 385件
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