皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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小原庄助さん |
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平均点: 6.64点 | 書評数: 267件 |
No.3 | 7点 | ダ・フォース- ドン・ウィンズロウ | 2018/07/07 10:18 |
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とにかく熱くて厚い。ニューヨークの市警の剛腕刑事の栄光と失墜を描く物語である。
主人公のデニー・マローンは、マフィアと死闘を繰り広げ、麻薬を押収し、善良な市民を守る「刑事の王」。その目的を貫くためには、押収した麻薬を利用し、賄賂を受け取り、違法捜査も辞さない。そんな彼の不正が暴かれ、収監に至るのが物語の幕開け。そこから時間をさかのぼって、マローンが何をしてきたのかが語られる。 警察の腐敗を描いた作品、悪徳刑事もの、そう区分してしまうことはたやすい。だが、そんな型通りの区分を拒む熱いものがこの作品にはある。自らの正義を貫くために、悪に手を染めるマローン。単純に善意を割り切ることのできない世界で、自らの手を汚しながら罪に対峙するその姿に圧倒される。 決して、万人の共感を得るヒーローの物語ではない。だが、万人の心に突き刺さる物語であることは間違いない。 |
No.2 | 7点 | サトリ- ドン・ウィンズロウ | 2017/11/20 07:52 |
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トレヴェニアンの傑作冒険スパイ小説「シブミ」の主人公の殺し屋ニコライ・ヘル。その若き日の冒険が、この作者によってよみがえった。
1951年、米軍の捕虜として東京で幽閉されていたニコライは、フランス人武器商人になりすまして北京に潜入し、ロシア人高官を暗殺する任務をCIAから与えられる。訓練係の美しいフランス人女性ソランジュと愛し合うようになり逃亡も考えるが、自由を勝ち取るために中国に渡る。しかし、そこでは各国の思惑が入り乱れ、危険な陰謀が待ち構えていた。 「シブミ」で描かれた東洋的な思想が本書でも引き継がれている。日本の将軍に教育を受けたニコライは武術にたけ、囲碁の思考方法を駆使して、相手の次の動きを読もうとする。 作者は西洋人がアジアを描く時の紋切り型を避けるために、文献を読み込んだようだが、その成果が見事に作品に結実している。「シブミ」の魅力をさらに際立たせ、疾走感あふれる冒険小説に仕立て上げた作者に脱帽だ。 |
No.1 | 5点 | 報復- ドン・ウィンズロウ | 2017/06/19 16:41 |
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テロとの戦いをテーマにした冒険小説はすでに数多く書かれているが、この作品もその系譜に連なる作品。とはいえ、この作者にしてはかなりの異色作。
旅客機爆弾テロで、妻子を失った元特殊部隊員が、資金を集め、傭兵を集め、自らの手でテロリストをかりたてる。 作者の魅力である独特の語り口をあえて抑えて、ぜい肉をそぎ落とした文体で語られる物語。 テロリストに対する、そして祖国アメリカに対する怒りをも内包した作品。 |