海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

小原庄助さん
平均点: 6.64点 書評数: 260件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.2 6点 ISOROKU 異聞・真珠湾攻撃- 柴田哲孝 2018/11/22 09:48
日米開戦の幕開けとなった1941年の真珠湾攻撃を描く謀略小説である。できるだけ実名を用い、物語に関連する挿話も実際の出来事に基づき、人物団体も実在のモデルや事例が存在するが、「概念としてフィクションである」と前書きで作者は断っている。
しかしノンフィクション「下山事件 最後の証言」をさらに小説化した「下山事件 暗殺者たちの夏」を見ても虚実の間を鋭く突いて真実を浮かび上がらせるのが得意だ。
真珠湾攻撃の謎、つまり、①攻撃当日にホノルルのラジオ放送から突然日本の曲が流れた②奇襲なのに真珠湾には空母は1隻も無く旧式艦ばかり③太平洋艦隊の生命線というべき燃料タンクを一切攻撃しなかったのはなぜなのか-を追求する。
もしかしたら日米間に密約があったのではないかという疑問を山本五十六やルーズベルト大統領、スパイたちの視点を交えて解き明かしていく。
柴田哲孝には「下山事件」以外にも、大震災の謎を追う「GEQ(グレート・アース・クエイク)大地震」や戦争の裏側に迫る「異聞太平洋戦記」などの秀作がある。本書は「日本の黒い霧」「昭和史発掘」などの松本清張路線を継ぐ異才の新たな注目作だ。

No.1 6点 下山事件 暗殺者たちの夏- 柴田哲孝 2018/07/15 10:40
「下山事件 最後の証言」は、昭和史最大の謎と言われる下山事件に、自分の祖父が関係していた衝撃の事実を物語った。この作品は、前著から10年経ち、「小説だからこそ書けることがある」として虚構から事件の真実に迫る。
前著が”私ノンフィクション”として親族らにインタビューを重ね、事件の核心へと入り込む緊張感はただならぬものがあったけれど、逆に家族の物語が強すぎて、事件の全体像がかすんでしまった。
今回の小説化では、家族の部分を減らし、時系列で事件と背景を丹念に追い、全体像を明確にしている。労働運動の激化、GHQ内部の対立、”M”資金の行方、何よりも国鉄職員の大量解雇に苦悩した下山像が、くっきり浮かび上がる。
戦争の傷跡が生々しく残り、殺人や謀略が日常的な義務であった諜報機関同志の摩擦、さらに検察と警察を巻き込んだ他殺・自殺論争の政治的駆け引きなど、まことに迫力がある。下山事件の必読の副読本といえるのではないか。

キーワードから探す
小原庄助さん
ひとこと
朝寝 朝酒 朝湯が大好きで~で有名?な架空の人物「小原庄助」です。よろしくお願いいたします。
好きな作家
採点傾向
平均点: 6.64点   採点数: 260件
採点の多い作家(TOP10)
評論・エッセイ(11)
アンソロジー(国内編集者)(6)
伝記・評伝(6)
京極夏彦(4)
ドン・ウィンズロウ(3)
フェルディナント・フォン・シーラッハ(3)
中村文則(3)
諸田玲子(3)
スティーヴン・キング(2)
トマス・H・クック(2)