皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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りゅうぐうのつかいさん |
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平均点: 6.29点 | 書評数: 84件 |
No.2 | 7点 | 白昼の悪魔- 鮎川哲也 | 2017/01/08 16:36 |
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「五つの時計」は鮎川氏の短編の中でも評価が高いが、その一番の理由はわかりやすさにあると思う(鮎川氏の作品は複雑で、わかりにくいものが多い)。この作品集での個人的評価は、「五つの時計」が一番で、その次が「誰の屍体か」。他の作品は、トリックが大掛かりすぎて、リアリティーに欠けていたり、ある方面の知識がないと見抜けなかったりする。
「白昼の悪魔」 今読むと、色々と時代の違いを感じる話。ヘリコプターでビラを撒いたりとか、新聞記者が容疑者を匿ったりとか……。アリバイトリックの方法があまりにも大掛かりすぎて、リアリティーに欠ける。 「誰の屍体か」 首なし死体を扱った事件で、犯人と被害者を誤認させるアイデアがいくつも盛り込まれているが、複雑でわかりにくい話だ。犯人の犯行計画が巧妙、さらに被害者自らがやったことが大きな欺まんとなって、警察の捜査をかく乱している。容疑者の恋人が見つけた物証と、鬼貫警部がその聞き取りの最中に気づいた矛盾によって、真相が解明するが、この真相に至る経緯も面白い。 小包を送ってきた時刻と犯行時刻との関係がわかりにくく、また、鬼貫警部の説明も親切さに欠けているように感じる(読み返してみて、○○が2つあって、入れ替えたことがわかった)。 「五つの時計」 五つの時計による完璧なアリバイトリックを鬼貫警部が見破る話。トリック自体が非常に巧妙であり、なおかつ、理解しやすいのが良い。 鬼貫警部の説明は、犯人が○○の時計の時刻を元に戻したことには言及していない。 「愛に朽ちなん」 配達された荷物が死体に入れ替わっていた謎。ある分野の専門知識がないと、この真相には気づくことができない。 「古銭」 骨董屋が殺され、高価な古銭が盗まれた謎。 鬼貫警部が丹念に聞き込み調査を続け、証言の矛盾に気づく話。 「金貨の首飾りをした女」 最初の方で出てくる「赤毛組合」のような話がどう活かされるのだろうかと思っていると……。視点がくるくると変わり、話もあっちへ行ったり、こっちへ行ったりと飛びまくるので、非常にややこしく、わかりにくい。逃走した容疑者に対して、警察は元妻の住居をすぐにマークするだろうし、アリバイトリックを作るのにこれだけ手間のかかることをする人がいるわけがない、と突っ込みを入れざるをえない。 「首」 身元不明の首なし死体が発見され、被害者と目される人物には職場の社長との確執があることがわかるが、社長にはアリバイがあった。被害者自身が協力して成立したアリバイは面白いが、鬼貫警部が気づいた証言の食い違いは、一部の人にしか見抜くことはできない。 |
No.1 | 5点 | わるい風- 鮎川哲也 | 2016/03/07 17:36 |
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「青いエチュード」、「わるい風」、「いたい風」、「殺意の餌」、「MF計画」は犯人視点の倒叙もので、いずれも犯人の見過ごしていた矛盾点を鬼貫警部が最後に指摘する。
「夜の訪問者」は、濡れ衣を着せられ、事故死した夫の無罪を証明してほしいとの依頼を受けた私立探偵が、事件に潜むいくつかの謎を解き明かし、鬼貫警部に真犯人を告発する話。 「まだらの犬」は、この短編集では一番の長編だが、容疑者が二転三転。本格ミステリーというよりも、刑事の捜査における苦労話、警察小説の趣きが濃い。アリバイトリックはちょっと凝り過ぎで、さほど妙味はない。 「楡の木荘の殺人」と「悪魔が笑う」はハルビンで起こったアリバイトリックに関する事件で、トリック自体は平凡。 突出した出来栄えの作品はなく、しばらくすれば忘れてしまいそうな話ばかりであった。 |