皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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505さん |
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平均点: 6.36点 | 書評数: 36件 |
No.5 | 6点 | キングレオの冒険- 円居挽 | 2015/11/04 13:02 |
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超一流と一流半の組み合わせが楽しい探偵物語。ホームズパスティーシュ作品であるが、〝ワトソン役〟の味わいはこの作風ならではの妙があり、正典をなぞるだけでは生まれない。〝ワトソン役〟が、探偵の〝よき理解者〟でもあり〝有能な助手〟として描かれているために、ホームズ任せで事件が進んでいく訳ではない部分がオリジナルティとしてある。
また、作者の円居挽を代表する『ルヴォワール・シリーズ』に登場する人物が出演していたりと、スターシステムを採用することで円居ファンは楽しみが尽きない設計となっている。 連作短編ミステリであるが、ホームズ的ミステリである。正典を彷彿とさせる観察眼をもって気づきの天才の探偵の活躍を追うストーリーがメイン。謎の解明も比較的あっさりとしたもので、それが後々と伏線になっていくという構成。記述におけるフェアプレーや作者特有の〝どんでん返しの連続〟が『ルヴォワール・シリーズ』を彷彿とさせ、円居作品を読んでいるという印象を常に抱かせる力強さがある。 最後にある『悩虚堂の偏屈家』は、まさに作者の良さが出ている。『名探偵VS名探偵』といったエネルギッシュな展開をあの手この手で盛り上げようとするドタバタ感が楽しい。無実の妖しい容疑者の潔白を晴らすというシンプルな構図に、〝裏返しのレインコート〟や〝仕掛けのある犯行現場〟と一見捻られている謎に対して、鮮やかな気づきからシンプルに運ぶ様は痛快的。 探偵バトルであるがゆえに、推理と推理をぶつけて互いの推理の盲点を突き否定していく。その過程で作者らしい爆発力が組み込まれており、スムーズのなかに起伏がある。 トリックも短いなかに〝これでもか〟といった貪欲なエンタメ精神があり、サービス性が旺盛。どうやらシリーズ化する運びになりそうな終わり方であるが、BL風味はこのまま継続なのかどうか。そこが最大の謎であるかもしれない |
No.4 | 9点 | 河原町ルヴォワール- 円居挽 | 2015/10/29 14:04 |
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『ルヴォワール・シリーズ』の第4作にして、完結編。
冒頭から、シリーズを支えていた龍樹落花が死亡という実にシリーズのファンならば目を疑うような展開が待っている。前作の『今出川ルヴォワール』では、本シリーズの骨格でもあるシステムの〝双龍会〟を前座に据え、賭博大会の〝権々会〟をメインにすることでシリーズの分岐点を示したが、本書では原点に帰るかのように〝双龍会〟をメインにすることで、作者の円居挽特有のエネルギッシュな〝どんでん返しに次ぐどんでん返し〟を見事に表現している。落花の不可解な死の状況を巡って、敵がコロコロと入れ替わる目まぐるしい展開が用意されており、〝誰が真の敵なのかどうか〟といった黒幕的な真相に対してミスディレクションを効かせることで、巧妙にはぐらかしているところがミソだと言える。 また、本書ならではの〝大仕掛け〟として、〝同時進行的にもう一つの双龍会〟が描かれている。暴論詭弁なんてザラであった本シリーズであったが、本書ではクローン人間といったSF的要素を盛り込むことで、〝もう一つの双龍会〟を技巧的に配置し、本シリーズのファンを喜ばせる作者からの巧妙の罠(サービス)を堪能できる作品となっている。その仕掛けは第1作目の『丸太町ルヴォワール』を彷彿とさせるのと同時に、シリーズ作品すらもミスディレクションに使用するという作者の貪欲な仕掛けが心憎い演出である。 当然、やや無理のある表現であることには変わりないが、それでも随所に伏線を張る事で、クライマックスに鮮やかな〝落花戻し〟を表現。外連味たっぷりな本シリーズの中でも白眉と言える大仕掛けに、ファンであれば納得の溜息を吐くことになるだろう。 最後まで見逃せない〝どんでん返しに次ぐどんでん返し〟によって、敵味方の立ち位置が移動することで、手に汗握る作風はそのままになっており、隙を見ては追撃する怒涛の様を楽しむことが出来る。 更には青年達の成長といったドラマ部分にも力を入れている。その象徴としてある〝双龍会〟後のエピローグは、感慨深いものがあり、詩情豊かなシリーズの終わらせ方である。散々に読者を振り回し、引っ張ってきたキャラクター達との別れは叙情的であり、『丸太町ルヴォワール』から始まった本シリーズの〝ルヴォワール〟に相応しい傑作だと言えるだろう。まさに天晴れな大団円であった。 |
No.3 | 5点 | 今出川ルヴォワール- 円居挽 | 2015/10/12 19:49 |
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このシリーズの骨格でもある私的裁判の『双龍会』を前座に据えることで、今までの作品とは趣の違う物語となっているのが特徴的。シリーズ特有の登場人物たちの青春群像劇を進めていく上で、今まで語られずに伏せられていた達也の過去が密接に絡むストーリーとなっているが、一先ず綺麗に収まるところに収まり、完結編への強烈な余韻を残すという幕切れが印象的である。
本作では『双龍会』のシーンは言うならば茶番であるが、密室とアリバイが技巧的に絡んだ状況をギリギリの攻防を繰り広げるという点で、油断ならない質である。 明らかにカーの『ユダの窓』に似た状況をベースに、〝達也自身が口を閉ざしている〟という難しいパターンを加味して、青龍師側は勝利に持っていくプロセスが描かれており、なんともスリリングである。その流れの中で、達也の過去が明らかになるというストーリーラインが巧妙に絡むことで、達也の目的が明瞭となる。そして、それ自身が〝手段〟であり、復讐への相手が一種のフーダニットであったことが分かり、そこに新たなハウダニットが添加されるという流れがスムーズである。 ミステリ・パートとしては、やはり『双龍会』が目玉であるが、本作ではそれよりもコン・ゲーム的な『権々会』がメインとして描かれている。強烈な騙し合いが二転三転する様は『賭博黙示録カイジ』を彷彿とさせる。これまでのシリーズを通して登場してきたキャラクター達が、新たな勝負事に興じることで、『双龍会』とは違う味が表現されているところがミソ。作者が用意したゲームの単純明快さ、そこに何でもありな破天荒な様が加わり、豪快な勝負になっているので、飽きる事無くゲームの行方を追うことが出来る仕組みとなっている。 『権々会』でのラストの大掛かりなトリックは、圧倒的に尽きる。交じるはずのなかった『双龍会』のシーンで使われたピースが、伏線として使われたのは巧妙。各自に独立していた舞台の装置が一つの作品として合わさる快感があり、爽快的であった。本シリーズの特徴の1つに、〝同じネタを敢えて使う〟があるが、本作もそれから外れず。期待を裏切らない出来であった。しかし、ミステリとしては前作ほどの仕掛けは無く物足りないか。 |
No.2 | 7点 | 烏丸ルヴォワール- 円居挽 | 2015/10/08 12:06 |
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『丸太町ルヴォワール』の正統的な続編である。前作以上に双龍会という仕組みを存分に活かした骨格がある。この部分に関しては、前作以上の出来。調査の段階から青龍師側と黄龍師側の両視点を交差させて、読者にある程度の情報量を与え、手の内を晒している。あとは、骨でもあり血でもある私的裁判の双龍会シーンによる後出しの情報によるスクラップアンドビルドの応酬が小気味いい。真相を明らかにさせる場という雰囲気ではない双龍会だからこその掛け合いと言える。この辺の舞台装置は見事。前作からのキャラクター達を上手く配置して、敵味方を白黒はっきりさせているところも良く、各キャラの活躍の場を制限させつつ、盛り上げるエンタメ心も忘れていない。
それでも、どんでん返しのインパクトは前作に比べると弱い。そのテンポに慣れてしまっているからだと思うが、謎自体がシンプルすぎて、詭弁紛い推理で真相そのものよりも、過程に興を注いでいる様がなんとも愛らしい。 事件の真相がある程度明かされた上でも、引っくり返すパワーのある筆力は圧巻である。 そして、物語は余韻のある幕切れとなるわけだが、『ルヴォワール』に相応しいの一言。同じ毒を盛られても尚、この切れ味と苦味。シリーズ特有の二番煎じな尻切れトンボにはせずに、さらにステージを上げる手腕は確かなものであり、作者の力量に拍手を送りたいと思う。これぞカタルシスである。 |
No.1 | 8点 | 丸太町ルヴォワール- 円居挽 | 2015/10/07 01:01 |
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傑作。
一風変わった法廷モノと聞いていたが、異彩を放つボーイ・ミーツ・ガールなラブストーリーで、読者としてはニヤニヤしながら読んでしまった。 第1章の男と女の邂逅の濃密な遣り取りに惹きこまれた後は、法廷へと場面が移る。外連味溢れる演出が小気味いい。法廷モノと書いたが、何でもアリな化かし合い・暴き合いといったカオスな状況の擬似法廷。それが理路整然として物事が運ぶ様は愉快痛快。 謎の女性を巡る攻防は手に汗を握り、現場に残された手掛かりからそれぞれの解釈へ、と歩み出す敵愾心剥き出しな白熱とした模様はエンタメそのものである。 殺人事件と同列に語るべきであろう、謎の女を巡る際に露わになるトリックの配置関係とそのどんでん返しの鮮やかさは、プロットの妙を感じざるを得ない。京の町を舞台に、艶やかな言葉の数々が小粋に響くように。 作者からの読者サービス旺盛な仕掛けが多く、息を吐くほどの暇を持たせない疾走感が何とも気持ちいい。作者のエンタメに掛ける思いならではの〝新本格〟であった。 続編を期待して読みたいと思わせるだけのあるクオリティである。 |