皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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∠渉さん |
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平均点: 6.03点 | 書評数: 120件 |
No.2 | 7点 | クージョ- スティーヴン・キング | 2013/11/22 00:53 |
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S・キングの作品が現代ホラーのオーソドックスの一つとして君臨している所以がわかるというか、まざまざと見せつけらたというか、というのが率直な感想。
日常に降りかかる絶望、崩壊、退廃が狂犬病の犬を軸として残酷に書かれていて、もう怖いというか惨い。 あくまで狂犬病の犬も、精神異常者だった殺人鬼も、恐怖を具現化する道具に過ぎないわけで。なのでこれを支点とすると、力点であるトレントン一家の日常に潜む何とも言えない狂気(崩壊の危機感)にこの物語が抱えている本質的恐怖を感じた。キャッスル・ロックの住民らも、それぞれにえも言われぬ狂気を纏っていてトレントン一家の破滅を誘う作用をしている。 ホラーの持っている幻想的な響き、耽美な雰囲気がとにかく皆無。「世界の崩壊を日常で例えたらこんな感じ」って言われてるような感じで、テロとか戦争とか災害とか病気とか、様々な「崩壊」を想起させるような読後。 オノマトペ的にいうと「ゾワッ‥」というより「ウゲッ!」って感じの作品でした。 あと序盤の「クージョ。クゥゥゥゥジョ!」ってとこがなんかジョジョっぽかった。これ書いて思ったけどジョジョ好きに結構向いてるかも。全体的に地味ですが、骨太なストーリーで、紛れもない傑作です。 |
No.1 | 4点 | 幸運の25セント硬貨- スティーヴン・キング | 2013/11/21 01:27 |
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正確には3.6点ってとこですかね。
キングの第4短編集という位置づけで90年代後半の作品が収録されているようです。 ①なにもかもが究極的(1997)/若き超越者(トランス)の悩める非日常。組織によって能力が殺人の道具に使われていることを、わかっているんだけども目を背けていた青年が、現実を受け止め組織と縁を切る決意をするまでの物語。悩み苦しむ青年の姿がとてもよく描かれていて面白い。あと邦題が好き。 ②L・Tのペットに関する御高説(1997)/離婚した奥さんとペットにまつわる少し怪異な話。元夫のL・Tが職場の昼休みの締めの定番の話題として語るこの話。ミステリアスな雰囲気を纏った語り口に引き込まれます。 ③道路ウイルスは北に向かう(1999)/ホラーでは古典的な「変化する絵」をキング流に料理した逸品。キング自身が所有している絵を題材にして書かれたものだけに自身が受けたインスピレーションが注ぎ込まれていて、かなりの熱量を感じる作品。実際の絵を見てみたい気もするけれど、そのあとにこれはもう読めないかな。この絵の題名も中々秀逸で不気味だけどこれは本当にモチーフにした絵のタイトルなのだろうか。だとしたらそーとー怖い。 ④ゴーサム・カフェで昼食を(1995)/これが個人的に一番好き。離婚調停の話し合いのために訪れたカフェで突然狂った給仕頭が暴れまくってとんだ惨劇に。もう読んでる側もどうしたらいいのかわかんない感じがハマった。 ⑤例のあの感覚、フランス語でしか言えないあの感覚(1998)/いわゆるデジャヴってやつをキングの死生観に結び付けて表現した物語。地獄モノっすね。この中では一番実験的で、作者の意欲を感じました。 ⑥一四〇八号室(1999)/「幽霊の出る旅籠の部屋」モノのキング流アレンジ。その題材も相まって一番ホラー色の強いものになった印象。キングらしい作品ですが、直球ど真ん中ホラーです。高校球児もびっくり。 ⑦幸運の25セント硬貨(1997)/表題作。ホラー・サスペンステイストの前6編から一転して、或るホテルの従業員で、二児の母である女性がささやかな幸せを掴むまでを描いたハートフルなストーリー。25セントがもたらした幸運はいかなるものなのか、是非読んでみては。 キングの他作と比べると決して斬新なストーリー群ではないかもしれないが、日常に潜む非日常と”怪”日常が心地よく、その不思議な日常の瞬間を切り取ったような場面の数々に惹かれる、良い短編集だと思います。 全体的に程よい恐さ、程よい苦さ、程よい甘さで、まぁまぁ健康的な読み物だと思います。 |