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アイス・コーヒーさん
平均点: 6.50点 書評数: 162件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.8 7点 眼球綺譚- 綾辻行人 2014/07/12 18:56
ホラー作家としての綾辻行人による短編集。それぞれの作品には一応繋がりがあるようだが…。所々グロテスクなので多少読者を選ぶ。

巻頭の「再生」がやはり最も印象に残った。途中で展開がある程度読めるのは仕方ないが、それでも読後の戦慄は本物。底知れない狂気がヒシヒシと伝わってくる。
「呼子池の怪魚」「人形」などは中々意味深長な内容。ホラーというより、それこそ奇譚の名にふさわしい作品だろう。余韻のある締めくくりもよく出来ている。
「特別料理」「鉄橋」は面白かったが、内容にもう一工夫欲しいところ。
表題作は、本当の意味で怖い。実に作者らしい話というか。作中作の使い方も巧い。しかし、眼球であることの意味は…?
風間賢二氏の解説みたいに深読みすることなく読んだ自分ですが、十分楽しめました。

No.7 6点 Another エピソードS- 綾辻行人 2013/10/05 16:49
「Another」の外伝的ストーリー。本編と同じく見崎鳴と榊原が登場し、鳴が夏休みに経験した「幽霊」との出会いが語られる。それは最近亡くなった、例の「現象」の生き残り、賢木の幽霊で、自分自身の死体を探しているという。
本編と構成やテイストがかなり違い、続編とは言えない。読んでいて著者の「×××」を思い出した。伏線や展開は上手かったが、トリック中心でホラー感は少ない。トリックもありふれたものなので、そこまで驚きはなかった。要するに、ホラーなのは「幽霊」の部分だけで後は中途半端なミステリになっているということ。本書の真の主題は「現象」に振り回された人々について、だろう。
ただ、ラストのあのシーンや賢木の描写からすると、これは続編への伏線が込められているのだろう。というわけで次回作に期待。

No.6 7点 Another- 綾辻行人 2013/07/07 14:25
夜見北中学校三年三組に転校してきた榊原は眼帯の美少女・見崎鳴に興味を持つが、同時にクラス全体の雰囲気に違和感を覚える。そして、ついに学校では事故死が発生し、クラス全体をめぐる「現象」が明らかになる―
学園ホラーであり、綾辻氏らしい本格推理小説でもある。話の速い展開と奇妙な現象、そしてあのトリックは読んでいて楽しい。誰でもスラスラと読んる作品なので続編が楽しみだ。映画化、アニメ化されているようだが私はどちらも見たことがないので見てみたいと思う。

No.5 4点 びっくり館の殺人- 綾辻行人 2013/07/01 18:59
お屋敷町にある「びっくり館」。不思議な噂を持つこの館で、小学生の三知也は館に住む少年・俊生に出会う。館には彼の祖父と亡き姉の名前のつけられた人形が住んでいた。そんな中、密室殺人が発生する。
ミステリーランドから出版された、子供と、かつて子供だった人への作品。これが本作のコンセプトだ。そして本作は館シリーズの正式な一作でもある。しかしこれは・・・。トリックが明らかに従来より劣っている。恐らくあまりミステリを読んでいなかった子供のときであればこの真相に「びっくり」していたであろうが(事実最初にクリスティの●●●●●●●を読んだときはびっくりしたものだ)、「館」シリーズの一作とするにはどうも・・・。さらにこの作品が本格であるかも微妙である。最後に、ラストシーンの後味が悪く子供向きかどうかも・・・。
描写も上手で、それなりに楽しんで読んでいただけに第三部が残念だった。

No.4 7点 暗黒館の殺人- 綾辻行人 2013/06/30 14:36
山奥の湖に浮かぶ「暗黒館」。そこに訪れた江南は塔から落ちてしまう。一方暗黒館に来ていた学生「中也」は館で殺人事件と館に住む浦登家の奇怪な営みに遭遇する。

「館」シリーズ最長の文庫本四冊というボリュームに見開き二枚に渡る付録の巨大見取り図に驚く人は多いだろう。本作は浦登家の「死」という物への執着が題材となり、その描写と四巻で描かれる真相のための手がかりにページ数がさかれている。そのため最後まで読むとこの量には納得したが、トリックが大掛かり過ぎて一部はすぐに分かってしまった。大長編の悩みと言ったところか。

(以下ネタバレ気味)


この作品(暗黒館)は今まで中村青司(綾辻行人)が創造してきた館の原点である。そして、今まで、今後の館シリーズの中でこの作品はあらゆる館主たちの幻想を闇に葬るために不可欠だったのではないか。シャム双子にダリアの肉、十角塔に吸血鬼。奇妙なファンタジーのようなこの作品にはミステリーを超えたおもいがあるに違いない。

No.3 7点 黒猫館の殺人- 綾辻行人 2013/06/22 17:19
作家鹿谷のもとにやってきた記憶喪失の老人は自身が持っていた「手記」を手がかりに自分の正体を教えてほしいと頼む。「手記」には彼が働いていた館「黒猫館」で起こった殺人事件が書かれていた―

綾辻氏が「変化球」と呼ぶ異色作。「手記」は手がかりが満載で、分かりやすい謎もあったがさすがにこの真相は分からなかった。短い作品で気軽に読めるが、個人的にはリアルタイムで起こる「吹雪の山荘」パターンの方が好きだ。

No.2 9点 時計館の殺人- 綾辻行人 2013/06/19 22:15
鎌倉にある中村青司の館「時計館」。江南たち雑誌編集者とW大学ミステリー研究会は亡き館主の娘の幽霊を調査するため時計型の旧館に三日間立てこもる事になる。
一方作家の鹿谷と、調査に行けなかったミステリー研究会の学生福西は大きな時計塔がある新館で館に住んでいた一家の過去を調査をしていく―

日本推理作家協会賞を最年少で受賞した本作は「十角館」を超える、正に館シリーズ最高傑作。いつも通りの離れ業には驚かされる(犯人の目星はついてしまうが・・・)。孤立した状況下での殺人の緊張感もまたいいが物語的な点では微妙。でも読んで損は無い傑作であり、壮大なクライマックスもはらはらさせられとても満足。

No.1 7点 霧越邸殺人事件- 綾辻行人 2013/06/14 19:06
信州の山奥で吹雪にあい、山奥の古風な館に閉じ込められた人々。吹雪はなかなかやまず長期間閉じこめられる事が分かったとき、館で殺人が発生する。
霧越邸の怪しげな雰囲気やそこに住む怪しげな住人たちなどは綾辻行人らしいもので楽しめた。ただ衝撃の結末と言われたわりに真相はそこまでおもしろくなかった。これは館シリーズと決定的に違う点だろう。
個人的には本作より館シリーズをお勧めする。

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アイス・コーヒーさん
ひとこと
本格ミステリが大好物ですが、国内海外ともにいろいろ読んでいます。拙い文ですが、参考にしていただけると幸いです。
採点は絶対評価なのであてにならないと思います。
好きな作家
クイーン、クリスティ、綾辻行人、泡坂妻夫、島田荘司、麻耶雄嵩、北山猛邦…
採点傾向
平均点: 6.50点   採点数: 162件
採点の多い作家(TOP10)
北山猛邦(11)
エラリイ・クイーン(9)
泡坂妻夫(8)
麻耶雄嵩(8)
綾辻行人(8)
七尾与史(7)
米澤穂信(6)
島田荘司(4)
東川篤哉(4)
殊能将之(4)