皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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ボンボンさん |
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平均点: 6.51点 | 書評数: 185件 |
No.6 | 5点 | フランス白粉の秘密- エラリイ・クイーン | 2018/10/25 13:12 |
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(ネタバレかもしれない)
まさに百貨店に並ぶ商品のように推理関連物品を陳列しての推理ショー。論文のように淀みない消去法が気持ちいい。 読後、「フランス白粉の秘密」という題名の面白味がわかる。 しかし、ラストをあんなに盛り上げている犯人の決定的な行動だが、どうにも変だ。余計なことをしないできっちり拭いとけばいいだけ。それより大量にそこらに流れたり飛んだり垂れたりしたはずの血の始末はどうしたのか。などなど、素晴らしい推理のために都合のいい真相が準備されているような感じ。 それなのに、そんなことが吹き飛ぶ迫力でぐいぐい読ませてくれるので、まあいいか、となる。 はったりを突き付けて、犯人を自滅させるパターンは、スリルがあって好きだ。ただ、死なせちゃったらダメだろう。 |
No.5 | 5点 | ローマ帽子の秘密- エラリイ・クイーン | 2017/05/01 22:49 |
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へえー、これがあの有名なエラリー・クイーンか(作中人物としての)、とまるで修学旅行の中学生のような心境で読んだ。
面白くないわけではないが、淡々と読みこなす作業を終え、理解した、という平坦な読書になってしまって呆然。期待し過ぎたか。まあ、エラリー・クイーンの幕開けの一作として取りあえずよしとしよう。 (いやいやしかし、いい年の息子にべったり甘々なクイーン警視の有様をどう受け取ったらよいものか、最後まで分からなかったな。) 飯城勇三氏の解説で、推理には外せない重要な情報を含む一文が、訳し方如何で役に立たなくなってしまう例を具体に知り、改めて翻訳物のミステリの難しさを感じた。 ※角川文庫(訳:越前敏弥・青木創) |
No.4 | 7点 | レーン最後の事件- エラリイ・クイーン | 2016/11/02 20:02 |
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(一応心配なので、ネタバレ、としておきます)
やはりそうなってしまうのか。X・Y・Zと進むにつれて募ってきた違和感が一気に解消された。世間一般的には『Yの悲劇』が有名で、それだけを読む人も少なからずいると思うが、それは大変もったいない。悲劇四部作を順番に四つ読み通すことができて、本当に良かった。 しかし、最期はそうなるかと予想はしていたが、事件本体の方で、まさかここまで衝撃的な崩壊をして見せるとは思わなかった。狂暴。家の名誉と、人の命と、人類の財産と。さて、どれが大事なのか、正解などないのだ、悲劇だから。レーンは、あくまでも自分の感覚に基づいて、自分の責任で行動する、真の意味で自由な人なのだと思い知った。神の領域だ。 四部作通してのあまりに見事な展開に感動しつつも、本作単独では、抜群にキレキレとは言いにくいので、点数に困る。 |
No.3 | 5点 | Zの悲劇- エラリイ・クイーン | 2016/10/21 17:41 |
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<ネタバレ含む>
前2作から雰囲気一転。80年以上前のアメリカの女の子の一人称に戸惑い、立場が変わってしまったサムとブルーノ、そして何より年老いたレーンの様子に気分が落ちる。 残念ながら、捜査のパートに魅力を感じられない。実際、ペイシェンスの視点だけで進むので、レーンが具体的に何をしているのかよく判らない。振り返れば、皆で手詰まりになって、困って、疲れて、じっとしている場面ばかり。 さて、解決編だが、証拠がない場合に、逃げ道を絶って、論理的な消去法により犯人を追い詰めることでご本人に馬脚を現してもらう、という方法は嫌いではない。これを真似て、必要もないのに関係者を集めて「推理の説明」をするというのとは、訳が違う、説得力が違う。しかも、レーンの整理整頓は美しいし。 ただし、七人の看守を除外する理屈がおざなりなのが気になる。勤務形態を確認してほしい。Xのときは、くどいほど確認していたではないか。その他大勢だからいいのか? いや、そもそもこれに限らず、医師の除外もクリップも日程変更も、大前提の利き腕利き足の件も含め、すべてちゃんとした話ではないからこそ、消去法発表の緊迫の舞台設定を必要としたのだった。名探偵というよりも押しの強い名優の演技力で犯人にもう駄目だと思わせてしまう作戦か。 そして、最後に、「社会にとって必要のない人間だという天からの知らせ」などという恐ろしい言葉で後味の悪いおまけがつく。Yに引き続き、また?この落とし前はどうつけるのか、『最後の事件』が楽しみだ(つくのかどうかは、まだ知らないが)。 |
No.2 | 8点 | Yの悲劇- エラリイ・クイーン | 2016/08/29 23:04 |
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『Xの悲劇』で作品世界や登場人物の説明が済んでいるので、スムーズに物語に入ることができて読みやすかった。私の感覚では、ミステリー的な驚きとしては、『Xの悲劇』の衝撃の方が大きかった。しかし、本作は、いつまでもあれやこれやと考えさせられることが多く、ずっと後を引くものがある。
〈ネタバレあり〉 終盤で犯人がついに脱線して、ありったけの毒を使った瞬間には、本当にゾッとした。 犯人が探偵と同等に論理的で、合理的で、捜査陣と知恵を競うように細工に腐心するという推理小説のファンタジーが破られる快感。 最後のドルリー・レーンの苦悩については、賛否ともに深く、人間の課題として永遠に正解は出ないだろう。あの食堂で何が起こったのか。一言一句確認して、どう読めるのか、延々と議論したくなる。 それにしても、レーンの焦らし方、情報の出し惜しみには、サム警視とともに身をよじる思いだ。もー、なんなの・・。 |
No.1 | 9点 | Xの悲劇- エラリイ・クイーン | 2016/07/16 18:59 |
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素晴らしかった。すべての事象を検証して、図表に起こしてみたくなる。究極に整理整頓された論理的思考というものをここまで気持ちよく堪能させていただけるとは。
前半は、ドルリー・レーンという人が強烈すぎて、どう捉えたらいいのか、馴染むのに時間がかかった。しかし、裁判のシーンで興奮し、ブルーノ検事とサム警視のおじさんコンビ同様、レーンを信頼するに至り、以降は怒涛の推理に目を丸くしたままラストまでばく進。 全体の盛りだくさんの事件性も良いのだが、特に、奇をてらうことなく、嘘のように些細な日常的小事を確実に動かせない証拠に変えてしまう部分に魅せられる。 また、ヘンな言い方だが、犯人の光る力量と粘り強い努力がある種感動を呼んでしまう。 これまで読書してきて、最後に事件が落ち着いてからの種明かしの場面(二時間ドラマでいう崖の上)がある場合、大概はただの「説明」になってしまい、それが不自然でなく、わくわくと面白い、ということは少ないと思っている。ところが、本作では、もろにそれが行なわれるのに、最後まで実に見事だった。格が違う。 |