皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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ボンボンさん |
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平均点: 6.51点 | 書評数: 185件 |
No.6 | 5点 | パレートの誤算- 柚月裕子 | 2017/11/26 00:08 |
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人物も考え方もすべてがステレオタイプであることに嫌気が差して、途中で一旦白けてしまった。あまりに真面目過ぎる中学の学級委員の作文みたいだ(この喩え自体ステレオタイプか)。
しかし、そんな拙さが気になりながらも、興味が先へ先へと引っ張られ、一気に読んでしまう。サスペンス感は、まあ及第点。 真面目な若者たちが一生懸命頑張っている部分や、いかにもという人しか出てこない薄い女性陣には、お粗末な感じが否めない。その一方で、時たま現れる汚れ気味の男たちの方は、なかなかに味わい深い。マル暴の矢幡課長とヤクザの古参組員ポンキチのやり取りが一番面白かった。この著者のおじさん上手は相変わらずであることを確認し、読了。 |
No.5 | 6点 | 蟻の菜園-アントガーデン-- 柚月裕子 | 2015/11/27 00:14 |
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作品紹介にある「連続婚活不審死事件」は、本作のほんの一部でしかない。たくさん詰まった素材や大道具小道具はどれもありふれたものだが、全体として緊迫感のある大河ドラマに仕上がっている。どこか既視感のあるネタのオンパレードで、あっと驚くものがないにもかかわらず、組み立ての妙でぐいぐいと読ませる。
現実社会に溢れている「悲惨な境遇」について、よく調べられていて、巧みに小説として再現されていると思う。 ところで本筋には全然関係ないが、この作者は、主人公が1日3食どこで何を食べたか、どんな喫茶店で何を飲んだか、きっちり書き込んでくる。特に夜の飲み屋の様子や選んだお酒の描写が具体的。好きなんだろうなあ。 |
No.4 | 7点 | 検事の死命- 柚月裕子 | 2015/07/19 23:39 |
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前半では、このシリーズを通して少しずつ語られてきた、佐方検事の父の謎がついに明かされる。
後半は、「真っ当」であることを貫ける検事と、それを「青臭い正義」と言ってしまう弁護士の対決。 全4話が収録されているが、「業をおろす」や「死命を決する」などの題名のとおり、重い問題にみんな白黒ついて、本当にスッキリする。 こちらの想像する結末に、もう一つ裏が付き、さらに驚きの真実が加わる、という具合で本当によく出来ている。 (一つ引っかかったのが、井原弁護士は、敏腕のようでいて、実はちょっと迂闊過ぎ?プロの弁護士が裏を取らないで裁判しちゃうかなあ、というところ。) ああ、佐方貞人シリーズ、どんどん続けてほしい。 |
No.3 | 4点 | 臨床真理- 柚月裕子 | 2015/07/11 23:30 |
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なんだか、えぐかった。
序盤はグイグイ読ませるが、最終的に期待していたのとは大分違う方向に持っていかれてしまった。 悪者の造りに陰影がないのが、つまらなくなっている原因か。 |
No.2 | 7点 | 検事の本懐- 柚月裕子 | 2015/05/23 00:50 |
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面白かった。前作とは比べようもなく格段に巧くなっている。
全編をかけて佐方検事の人生の謎が解かれていく。 ことの本質、隠れた真実を、奇をてらわず実直に見つけ出していくという、かなり地味な味わいが胸にしみわたる。 まず、「検事の本懐」っていう言葉からして、熱いものが込み上げてくるなあ。 第3話「恩を返す」の緊迫のスローモーション場面が印象的だ。 ところで、柚月裕子というきれいなお名前の女性なのに、おじさんへの理解がとてつもなく深いのはなぜだ。 |
No.1 | 5点 | 最後の証人- 柚月裕子 | 2015/03/03 00:35 |
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ミステリとしては、可もなく不可もなく、平均点か。確かに、ノリが二時間ドラマ的。
でも、子を失い、妻を失いつつあったら、自分はどう考えるか、どう行動するのが一番いいのかについては、考えさせられる。 また、(法的にではなく、人間としての)犯罪者に対する社会的制裁についても、現実にあることだし。法律って何だろう、裁判って何だろう、とも考えさせられる。 ただし、文章が増長というか、クドイというか、一つのことを1.5倍くらいに書くので、その分薄くなってしまっている。もっとドライに、周りのことなどが詳しく書き込まれていれば、雰囲気も変わっただろう。 |