皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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大泉耕作さん |
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平均点: 6.26点 | 書評数: 65件 |
No.3 | 6点 | 手紙- 東野圭吾 | 2012/01/14 21:03 |
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もしこのテーマで誰か別の作家が描いていたら、どうなったのだろう。
灰谷健次郎先生がお描きになったら、差別の中を強く生きる少年の物語であったろうと思う。しかし、東野圭吾ではそうはいかない。 こうテーマの本やテレビは獄中へ送られる人たちの人数を、少なからず減らしてくれるような気もする。誰だしも、家族を守りたい気持ちは同じだ。だからこういったものを多くの人に伝えられる職にある作家の方たちにどんどん描いてほしい。 しかし、本書『手紙』に内容が酷似していることを指摘されずにこのテーマに向き合うのはたぶん難しいと思う。このようなテーマの筋のなかではこの作品は現代の古典とも言えます。よく描いてくれました。 東野圭吾氏の作家としての観察眼、優しさがにじみ出ている。 しかし、あくまでも個人的な意見ですが、最後のあたりなどもっと工夫できなかったものか・・・。 とはいえ、捉え方は人それぞれ。涙を流した方もいらっしゃると耳にしましたから、本当はとても良い作品なのだろう思う。自分にはわからなかったのが悔しいですが。 |
No.2 | 7点 | 悪意- 東野圭吾 | 2012/01/11 21:40 |
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こういうトリックの小説、一度でも読んでみたいと思っていました。
一転二転するプロットにやられっぱなしで真相にも”あっ”と驚かされましたが、最後の動機に関しては、ちょっと期待し過ぎたために拍子抜けした・・・。 (ネタバレに触れます) 僕は現在在学中のためこういう人間の説得力は幾分備わっているつくりになっているに違いありませんが、あくまでも現在の学校の状況と(校内暴力に関しての記述があったためあくまでもいつの時代かを考察した場合)金八に登場するような校内暴力の時代とは完全に相違していることを踏まえ、大人になってもそういう心理を持つ人間が、少年時代のイジメを看過した、言わばイジメッ子と同じ立場にいる”学校そのもの”に勤める、ましてや誘われても教師を勤めようとしたとは思えないため、ということは自主的に進んだ道ということになる。彼が積極的でなかった描写はありましたが、ザクッとした解説が欲しいです。 それらが、ロジックになんら影響がないことを踏まえても、この点数が妥当かと思います。 |
No.1 | 5点 | ゲームの名は誘拐- 東野圭吾 | 2011/07/01 18:47 |
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むかし、伯父さんから頂いた本をそのままほっぽっておいたままにしておいた作品を手にして僕の読んだ初めての東野圭吾。
わかりやすい心理と行動描写の間にとぎれとぎれの頭脳戦と鋭い台詞をつき着けます。そこで読者は台詞に注目し展開をスリリングにしてゆく、面白い文章を描く方でした。 今度の作品は犯人側の身の視点でといっておいたので、手にした時は僕は少々不安でしたが読んでいる内にそういう心配事は無用です。犯人が警察のやっていることを予知して向こうの動きは大体読めるから、余計な描写がなく非常にスマートです。 ただ、犯人の頭脳戦が行われた後の展開とそれ自体が・・・何だかあまり脳に刺激がなさすぎる。台詞の伏線は珍しく僕の察した通りの結末に繋がりましたが、その結末が「ああ、やっぱり・・・」と、謎を残しておき、どんでん返しの筈ではあるのだけれど騙された感覚が少ない。自分で解き明かしていたとしても、やっぱり「ああ・・・。こうなっちゃうの・・・」と。なんか個人的にしっくり来ませんでした。 著者の今後に期待します。 |