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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1843件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.72 5点 怪傑レディ・フラヌール- 西尾維新 2024/10/25 12:25
 そもそも返却怪盗シリーズは “全部返したら終わりなのだろう” と、完結が予め視野に入ったものだった。で、本書が期待以上の物凄いアイデアによる着地点と言うわけではまぁない。特に前半あまり乗れなかった。新キャラもいないし(ストイックな程に!)、シリーズの消化試合の雰囲気と言うか。ラスト、心臓ならともかく幾らかの肉の為に死ぬ必要は無いので、緊迫した選択とは言い難い。
 しかし語り手の痛い感じ(地の文で家族への幼稚な反発がダダ漏れ……)は花丸。いーちゃんを超えたかも。

No.71 7点 偽物語- 西尾維新 2024/09/26 12:20
 私は本書で歯ブラシと千枚通しの正しい使い方を学びました。
 “電話で天気予報” はサーヴィス終了だから、百年後の読者には判らないネタになってしまいましたね。

No.70 7点 短物語- 西尾維新 2024/09/13 12:04
 折々に限定的な場で発表してきた掌編を集めたもの。シリーズに関する予備知識を前提とした結構クローズドな作品群。ストーリー漫画の単行本のオマケ四コマみたいなものか。それで一冊作ってしまうのは、需要の有無も含めてなかなか特異な例であって、こんな手触りの本は今まで読んだことがない。“あとがき全集” ともやはりちょっと違う。
 意味有りげでは在りつつ、物語を本気で進める程の意味が有ってはならない、と言う縛りに則った有っても無くても良いような話が、こうして単行本化されることでシリーズの正規のエピソードとして “有るもの” になってしまったのだから、この本そのものが怪異と言っても過言ではない。妹とのアレを正規エピソードにしちゃっていいのか?

No.69 7点 鬼怒楯岩大吊橋ツキヌの汲めども尽きぬ随筆という題名の小説- 西尾維新 2024/04/25 11:50
 これは非常にツボを突かれた。謎と仮説めいたものも含まれるが、基本的に内容は無いよー。内容が無いものが劣っていると言うことではない。自己言及的なツッコミを繰り返して隘路に迷い込む楽しみは楽しく楽しい。あまりにも私の気持にフィットする文言が散見され、頭の中を覗かれているような気分だ。頭の中を覗いても脳味噌があるだけで、それを見たからと言って考えている事柄が判るわけではないが。長年に亘り愛読者なので私の思考の志向が影響を受けたのだろうか。それはちょっと嫌だにゃあ。

 そう言えば『ドラえもん』に、のび太が上下に分かれる話があったよね。

No.68 8点 ウェルテルタウンでやすらかに- 西尾維新 2023/07/27 12:12
 2011年、『少女不十分』発表――“この本を書くのに、10年かかった”。
 それに倣い “この本を書くのに、更に10年(+α)かかった” とでも謳いたいのが本書。
 自分が小説家を続けることに関する、言い訳、正当化、マイルストーン、矜持。かと言って決してありきたりな作家小説ではなく、全然別のエンタテインメントとして引っ張っておいて突如メタ化した叙述トリックの如く小説礼賛を滑り込ませるあたりは効果抜群、流石転んでもロハでは起きない売れっ子だ。

 「死なずに待っててあげるから」

 ちょっと恥ずかしくなるくらいの結末を二度も書くのだから、この人は自分が書き過ぎだと言うことについて愛憎半ばする自意識が絶ち難くあるんだろうな~と邪推する私である。と邪推させることを狙って書いているのかな~と言う気もちょっとする。

No.67 8点 傷物語- 西尾維新 2023/06/16 12:31
 このシリーズは一作ごとにヒロインが増えるインフレのハーレムだけれど、実はストレートにえっちな場面はさほど多くない。しかし、その点で本作は、厳密な定義とカウントは難しいが少なくとも三箇所、中でも体育倉庫での行為は屈指の煽情力。いや別にだから高評価と言うわけではなく、バッドエンドに縺れ込む流れで爆発する気持のカタルシスに巻き込まれて死にかけたのだから私の涙腺は如何ともしがたい。
 改めて読むと阿良々木暦は切れ方が戯言遣いそっくり。

No.66 7点 戦物語- 西尾維新 2023/05/26 13:16
 “何も起こらなさ” はシリーズ中屈指ではないか。悩んで考えて議論を戦わせるだけ。静けさは微風に戦ぐ木の葉の如し。しかし怒ったひたぎさんには戦いた。

No.65 7点 怪人デスマーチの退転- 西尾維新 2023/04/07 14:35
 父の正体を知って三者三様に踏み外した子供達。家族の崩壊と再生の物語? うそうそ、そんなまっとうなものではない。
 奇人変人大集合。“あ、大変だ、殺さなきゃ” に、つい共感してしてしまう怖い話。最初の殺人のホワイが曖昧なままなのは残念。
 実は、待葉椎が私の頭の中で『ハコヅメ』(勿論オリジナルの漫画版)の川合みたいなイメージで固まってしまい困っている。ミスキャストだ。

No.64 8点 キドナプキディング- 西尾維新 2023/02/09 12:41
 首をくくって待ってた、シリーズまさかの続刊。あの二人にまさかの娘。あたしを名字で呼ぶなとか言わない丸くなったまさかの潤さん。同窓会にはちと淋しいが新しい設定もガンガン加わって嬉しい。
 肝心のミステリ面だが、このキャラクターでこのホワイダニットなら説得力はあると思った(“丸投げ” ってのが特に)。いや、肝心なのはキャラか? 竹さんのイラストも絶好調で年増哀川潤が素敵。

No.63 7点 化物語- 西尾維新 2022/12/08 13:07
 改めてシリーズ初作を読み返してみると、怪異への対処法、いわば解決編が、そこまでぴったり平仄が上手く合っているわけではないな~とアラが見えて来た。やはりこういう話ならば、“捻りの効いたグッドなアイデアである” と言うことについて読者に対する説得力のあるもの、を期待してしまう。あれは駄目、これも駄目、あっ、その手があったか! みたいな。本作では “作品世界のルールではそうなってるんですね” と、説明されて納得することしか出来なかった。
 でもキャラクター小説としては大好きよ。

No.62 9点 怪盗フラヌールの巡回- 西尾維新 2022/09/09 12:20
 こんなことを言っていいのかどうかわかりませんが、ちゃんとやればまだ出来るじゃないか、って感じ。舌先三寸で引き伸ばした、なんて言わせない。
 相変わらず痛い人の描写は抜群で、うっかりそれに絆されてしまう危険性高し。トリックにも関わるちょっと特殊な事件現場が具体的にイメージしづらかったのは遺憾。

No.61 6点 掟上今日子の忍法帖- 西尾維新 2022/06/09 14:24
 忘却探偵ニューヨーク編。それ何語で喋ってるの? って突っ込みは野暮だが、会話のメタネタが際立つ。
 手裏剣のトリックは馬鹿みたいだが感心した、と言うかテクノロジー的には充分可能だよね。つまり “バカミスに見えてもOK!” な書き方の勝利?

No.60 8点 死物語- 西尾維新 2021/09/04 11:40
 アニメ化出来ない本を書いてやると言う意地が炸裂していますね。『掟上今日子の鑑札票』での“本なんて結局は、映画の原作だろ?”と言う辛辣な皮肉を思い出します。映像化圧力に対する、売れっ子の特権意識に基づいたレジスタンスってところでしょうか? 勿論それにはNG要素をただ突っ込むだけでは駄目で、“面白いのにアニメ化出来ないっ!”と歯嚙みさせるクオリティが無いと絵に描いた餅ですが、その点は撫子の体を張ったパフォーマンスでクリアしていますよ。絵には描けないモチーフですけどね。

No.59 7点 モルグ街の美少年- 西尾維新 2021/05/21 14:59
 終わる終わる詐欺常習犯の作者であるが、『美少年探偵団』アニメ化(美術のソーサクにもちゃんと声優がいるんだ……)に伴い案の定番外編の登場。単なるファンサービスみたいなものだが私はファンなのでサービスされました。眉美ちゃんの口が更に悪くなってないか。で、内容は青柳碧人『ヘンたて』の変奏。

No.58 7点 掟上今日子の鑑札票- 西尾維新 2021/04/24 11:47
 ミステリとしては“書かないことで書く”みたいな感じで、ジャンルの枠組みを批評、と言うのはこの作者が何度もやっていることだが、今回は深読み必至。ただ、他のシリーズと重複しそうなネタを承知の上で書いたっぽいのはどうなんだろう。私は愛読者なのでニヤリと出来るけど。あーでも羽川翼みたいなキャラクターが『十二大戦』に出て来たりもしているから、単なる手癖?

No.57 8点 新本格魔法少女りすか 4- 西尾維新 2021/03/03 14:10
 1巻から一貫して裏表紙に掲げられて来た“なぜ、少女なの?”が、単なる雰囲気モノのフレーズではなく伏線だったとは。力業で世界を丸ごと掻き混ぜるような落とし方は、考えてみると〈刀語〉も〈伝説シリーズ〉もそうだったなぁ。ポカンと口を開けて見届けるしかなかった。
 楓のキャラクターは本気で気持悪い。折口きずなの位置付けが中途半端な気はする。最後の行のその後にまた膝を打つネタが。

No.56 8点 新本格魔法少女りすか 3- 西尾維新 2021/02/27 13:52
 ストーリーとしての動きは少なく前後の巻の橋渡しみたいだが、それでも尚ガンガンぶつかり合うエモーションに泣ける。ゲームの戦略の構成も巧みだと思う。水倉鍵のキャラクターは鬱陶しいけど結構アリ。

No.55 8点 新本格魔法少女りすか 2- 西尾維新 2020/12/24 15:42
 魔法と言う理の掛け合いで勝負するシーンは、戯言シリーズのバトルより随分読み応えがある。ルールの設定が所詮は作者の掌の上なのだから、都合良く展開可能な弱点を持つ魔法を考えただけ、かもしれないが私にとっては想定外の論理で“その手があったか”と驚かされた。免疫が無いせい?

No.54 8点 新本格魔法少女りすか- 西尾維新 2020/12/11 12:02
 西尾維新は、理性を振り捨てた状態を描くのが実に上手い。また、キズタカの率直な一人称記述をフィーチュアしつつ、彼自身にも処理出来ないぐちゃぐちゃを浮かび上がらせて甘酸っぱい。色んな意味で痛い痛い。
 27歳りすか、潤さんと結構キャラが被ってない? あんなに台詞があって1分じゃ足りないでしょ。クトゥルー神話は正典を読んでいないので実はあまりピンと来ない。

No.53 8点 人類最強のヴェネチア- 西尾維新 2020/11/23 12:54
 物語としては単純だけど、殺し方はえぐいし、モノローグは気持悪いし、髪形は変だし、コレは決して水増しじゃないぞ。“コンコルド効果”なる言葉を西尾維新作品で学んだ身としては、プライベートジェットのコンコルドでヴェネチア入りなんて感無量。

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.22点   採点数: 1843件
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