皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
虫暮部さん |
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平均点: 6.22点 | 書評数: 1843件 |
No.9 | 5点 | パラレルワールド- 小林泰三 | 2018/08/14 12:59 |
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混乱した心理をスラップスティックに描写する冴えた筆致と、特殊なルール設定のもとでの攻防戦、というこの作者の得意なパターンで、そりゃあ面白いに決まっているけど、得意技を投入していること自体がお約束で少々物足りないなぁと読者は贅沢にも思うのである。ラスト前の痛い場面は筒井康隆への挑戦、それとも『無限の住人』か? |
No.8 | 7点 | ドロシイ殺し- 小林泰三 | 2018/06/04 10:48 |
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ドロシイと言ってもセイヤーズではない。虹の彼方の惨事。犯人の隠し方が面白い。
ところで女王陛下、わたしたちは何語で会話しているのでしょうか? ――何でも構わない気がします。 しかし言葉を用いたトリックであれば言語の選択は重要ではないでしょうか?例えば英語で“身内”は……。 ――揚げ足を取るものではありません。さあ、この泉の水をお飲みなさい。炭酸水なので、非常に美味なのです。 |
No.7 | 7点 | 失われた過去と未来の犯罪- 小林泰三 | 2017/10/17 08:52 |
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全体的にそこまで“犯罪”という要素を前面に出した話ではないので、このタイトルはどうなのか。期待したほどミステリ寄りではない。
双子の姉妹のエピソードは「双生児」(『完全・犯罪』収録)と同じ基盤を別方向に発展させたもの、だよねぇ。面白くはあるがこういう使い回しは感心しないなぁ。 と、引っ掛かる点はあるが、論理の積み重ねがいつの間にか歪でスラップスティックな情景を作り出す手法は粘着質な作者ならでは。“記憶”というテーマは小林泰三SFの特質に合っているのだろう。但し本作はグロ抜き。 |
No.6 | 6点 | 完全・犯罪- 小林泰三 | 2017/09/25 11:07 |
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「双生児」。それまでは強引であっても一応論理の積み重ねで転がして来た話に、最後の最後で唐突に不条理な異物(“終わりではなかったの”)が突っ込まれて終幕、というのはやっぱり話がおかしいと思う。しかし、そのひとが嘉穂であれば事の成り行きをペラペラ話す理由も無いんだよね。というか、“そうだ。一つ方法がある。”ってなんのこと?
「隠れ鬼」「ドッキリチューブ」は前半を読めば後半の見当も付いてしまうが、それでもダレることなく一息に読まずにはいられない文章の気持悪さが素晴らしい。 |
No.5 | 5点 | クララ殺し- 小林泰三 | 2016/07/26 18:24 |
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悪くはないが、二匹目のドジョウを狙ったという感がなくもないし、そうまでするほどの物凄いストーリーかは疑問。世界設定のせいで論理が錯綜し過ぎて、驚くべきポイントで的確に驚けないきらいがある。蜥蜴のビルのキャラクターは好き。 |
No.4 | 7点 | 記憶破断者- 小林泰三 | 2015/11/02 11:50 |
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前向性健忘症の田村二吉(!)が、特殊能力を持つ殺人鬼と対決する(!)という話。雲英(きら)というネーミングから察するに『デスノート』へのオマージュ? スピード感のあるストーリーの途中に結構込み入った論理が組み込まれていて引き止められてしまうのが難だが、作品の性質上仕方ないか(止まっちゃうのは私の理解力の問題だし)。
気になった点。第2章で、コンビニでせいぜい2000円程度の品物のためにアレコレやっているが、それは効率が悪い。「能力」でいくらでも他人からカネを引き出せるのであれば、万引きをする必要は無いだろう。こういう能力の持ち主は、カネに頓着しない性格になるのでは? |
No.3 | 6点 | 密室・殺人- 小林泰三 | 2014/09/30 12:20 |
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予めロープで窓から上り下りする練習をしておいた、といっても、その練習自体がうっかりすると命にかかわる危険な行為だよね。死ぬ気なんかなくて皆を驚かせるのが目的、というにはリスクがあまりに大きい。心情が良く判らぬ。 |
No.2 | 7点 | アリス殺し- 小林泰三 | 2013/11/18 14:13 |
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特殊ルールを設定して、しかもそのルール自体をトリックに使うという点では西澤保彦あたりを連想した。
更に本書に於いては、ミステリ的な解決編の後こそが、小林泰三の真骨頂なのである(愛読者として言っておくと、この人の作風に於いてグロテスクな描写は基本。寧ろミステリ部分のほうが残虐シーンを成立させるための付け足しみたいなものですから)。 それにしても、アリスって不滅のネタだな~。 |
No.1 | 8点 | モザイク事件帳- 小林泰三 | 2011/12/07 17:05 |
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『大きな森の小さな密室』と改題のうえ文庫化されたものを、同一内容だと気付かず図書館で予約してしまい、せっかくなので再読したところ話を全て忘れており、全編しっかり楽しめた私である。田村ニ吉か。
随所で暴走する論理(屁理屈?)が面白い。 |