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りゅうさん
平均点: 6.53点 書評数: 163件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.2 7点 本陣殺人事件- 横溝正史 2011/08/28 12:12
 横溝正史の作品は以前にかなり読んでいますが、有名どころでは「犬神家の一族」とこの作品だけが未読でした。映像作品を見ており、特に感銘を受けなかったためで、密室トリックの概要は覚えていましたが、それ以外の真相は忘れていました。読んでみると、なかなか面白かったです。作中で、金田一耕助が「この事件のほんとうの恐ろしさは、いかにしてああいうことが行なわれたかという事より、なぜああいうことが行なわれなければならなかったかという事にある」と語っているように、密室トリックの方法についてはこの作品の枝葉に過ぎないと思います。三本指の男の登場、指紋の謎、猫の墓、三本指の男のメッセージや日記の燃え残りやアルバムの写真の謎、二通の手紙などよく考えられたプロットだと思います。殺人動機は現代では理解しがたいものですが、個人的には納得でき、それを示唆する伏線も張られており、この作品の肝に当たる部分だと思います。この真相であれば密室でない方が自然なのに、なぜわざわざ密室にしたのかというのが最大の疑問でした。一応、この点に関しても金田一耕助から説明がありますが、すっきりと納得できるような説明ではありませんでした。

(完全にネタバレをしています。要注意!)
 真相で不自然だと思ったのは、犯人が偶然発見した三本指の男の死体を使って、密室トリックの予行演習を行なったこと。複雑な仕掛けなので予行演習は必要だとしても、死体をわざわざ使う必要はないと思います。また、金田一耕助の推理にはちょっと超人的だと思う箇所がありました。金田一耕助は、糸子刀自の紋付きの袂に琴柱が入っていることを推理していますが、どうしてわかったのでしょうか。

No.1 7点 蝶々殺人事件- 横溝正史 2010/03/27 18:25
 再読。
 本作品について、坂口安吾がエッセー「推理小説について」及び「推理小説論」の中で、問題点を指摘しながらも賞賛しており、興味深い。
 (このエッセーは青空文庫で読むことが出来る。安吾のエッセーは様々な作品の完全ネタバレをしているので、要注意!なお、エッセーの中で、安吾はなぜか犯人の名前を間違えている。)

(以下、完全ネタバレ。要注意!)
 由利先生の説明を読んでもスッキリ納得というわけにはいかなかった。
 以下の疑問を感じた(私の理解が足りないのかもしれないが)。
・ 由利先生の説明によると、犯人はトランクを東京駅に一時預けにし、佐伯淳吉にチッキを頼んだことになっている。一時預けした記録の日時によって、殺人が東京で行われなかったことがばれてしまうと思うのだが?
 (安吾のエッセーでは良心的な解釈をしており、佐伯淳吉がトランクを東京駅に運んだとしている。この方がもちろん良い。)
・ 犯人はトランクを最終的に曙アパートから大阪駅まで運んでいるが、そんな必要があるのだろうか?曙アパートに放置しておけば良かったのではないかと思う。わざわざ、リスクを犯してトランクを大阪駅まで運ぶ意味がわからない。
・ 犯人は曙アパートの外部に置かれていた砂嚢を部屋の中に持ち込んでいるが、そんな必要があるのだろうか?室内に持ち込むことによって、アパートの住民に砂嚢へと意識を向かせることになる(実際にこれが決定的証拠となった)。

 同じく、死体移動を扱った「黒いトランク」と比較すると、完成度では数段落ちると思う。
 いろいろ文句をつけたが、謎解きミステリーとしては非常に良く出来た作品であることは間違いない。

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りゅうさん
ひとこと
 横溝正史の作品を集中して読んだ時期はありましたが、これまではミステリを文学の1ジャンルにすぎないと考え、特にミステリにこだわった読書をしてきたわけではありませんでした。このサイトの書評を見て、ミステリ...
好きな作家
あえて挙げると、ディクスン・カーと横溝正史
採点傾向
平均点: 6.53点   採点数: 163件
採点の多い作家(TOP10)
横溝正史(22)
アガサ・クリスティー(19)
鮎川哲也(10)
エラリイ・クイーン(9)
有栖川有栖(7)
ジョン・ディクスン・カー(7)
森博嗣(5)
泡坂妻夫(5)
麻耶雄嵩(4)
西澤保彦(3)