皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
江守森江さん |
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平均点: 5.00点 | 書評数: 1256件 |
No.30 | 5点 | 大統領の殺し屋- 梶山季之 | 2011/02/18 06:22 |
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本書自体は結構入手し難くなってきたが所有に拘らなければ光文社の電子書籍で読める(私はカッパ・ノベルス版を所有)
経済記者の‘私’がZ国(←もちろん架空)へ驚異的経済発展の秘密を探りに出向くと、そこでは政財界の大物を巻き込んだ大疑獄事件が発覚、その事件を追う親友のモーリ記者が謎のメモを残し殺される。 そして‘私’が真相究明に乗り出す。 長編推理小説と銘打たれ粗筋的には推理小説なのだが、犯人がZ国大統領直属の殺し屋だとか裏の陰謀だとかを探る社会小説の色合いが強い。 作者の文章は当時、ワン・センテンス毎に改行され水増しで原稿料稼ぎしていると批判されたらしいが、ミッチリ活字の詰まった英国翻訳ミステリを読む苦痛に比べてサクサク読めて嬉しいと再読して感じた。 島田一男・梶山季之など文学性の欠片すら感じさせないテンポで読ませる作家の方が時間制約のある身には有り難い。 |
No.29 | 6点 | 見切り千両- 梶山季之 | 2011/02/09 08:26 |
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米相場に復讐劇を絡めて描いた一代記。
作者の最高傑作と呼び声も高い「赤いダイヤ」の系譜にあるが、ボリュームは半分程度で得意のスケベ路線も抑えられている(個人的にはチョット残念) 博打に付き物な怪しい手口も紹介されコン・ゲームの要素まである。 サービス精神に溢れた作者らしい作品で久々の再読が楽しい読書になった。 |
No.28 | 5点 | 生贄- 梶山季之 | 2011/01/26 07:06 |
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インドネシアへの戦後賠償利権に絡む汚職過程で、ある意味で人身御供(生贄)にされた女性を描いた社会派作品。
舞台は昭和時代だが、水戸黄門の登場しない越後屋と悪代官の悪巧み話的な内容。 何処を読んでもデヴィ夫人がモデルだと分かるが、今のデヴィ夫人を見てしまうと(美しさは)想像し難い(厚顔さはそのまま) デヴィ夫人側から訴えられ絶版になったが、差し止め前に10万部が売れ回収もされなかった。 一夫多妻制での第二夫人以降の存在は、当時の日本人感覚なら「お妾さん」でしかなく、世界的には華麗に社交界デビューしたデヴィ夫人も国内では「お妾さん」として貢ぎ物視されていたのがよく解る。 作者のトップ屋としての取材力の凄さを考えると、何処までがフィクションなのだろう?とデヴィ夫人をテレビで見る度に頭をよぎる。 ※余談 25年前に古本屋の50円特売ワゴンで購入し今でも私的な梶山季之コレクションとして所持しているが、ネット販売価格が5万円オーバーなのに驚いた(コレクター心を擽られ1点加点) |
No.27 | 5点 | 罠のある季節- 梶山季之 | 2010/08/25 06:13 |
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製薬会社の広告戦略担当受注を狙うライバル広告代理店のエース二人が主人公。
片や女の武器を最大限に利用し、男は知恵で受けて立つ。 作者得意の変態ネタ・スケベ話・業界ネタに陰謀やら権謀術数を絡め手堅くまとめている。 しかし、スケベ話もシリアスに描くと面白さを欠く事がハッキリとわかる作品でもある。 どうにも女性主人公だと作者の本領が発揮されない。 ※日本では医療保険の充実で軽症でも通院するため大衆薬が売れないとのニュースを放送していた。 タイムリーな再読だったと自画自賛。 |
No.26 | 6点 | 一匹狼の唄- 梶山季之 | 2010/08/21 13:47 |
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ワンマン社長が病に倒れ、息子に社長を継がせるべく教育する過程に権謀術数、見合い、恋愛などを絡めた総合エンターテインメント小説。
身分を隠して自社に潜入する産業スパイ要素もある。 主人公がタイトルほどの一匹狼ではないのが少しだけ物足りないが、作者らしいサービス精神は存分に発揮されている。 ※余談 乾くるみ「イニシエーションラブ」で使われた〔付き合う相手の呼び方を統一する浮気発覚対策〕は作者が世に広めた! エッチの絶頂時に違う名前を叫んで浮気が発覚しない為に、くりぃむしちゅー上田晋也は実践していたらしい。 |
No.25 | 7点 | せどり男爵数奇譚- 梶山季之 | 2010/08/19 12:39 |
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作者得意のスケベなサービス精神を発揮したエンタメ作品ではなく、世間から見れば一風変わった別世界である古本業界での珍事を描いた異色ミステリー。
今では普通に使われる「フェチ」の存在を世に知らしめたのが作者の作品の数々で、この作品は古本フェチ日記と言った趣で、古本のせどり(背取)の世界が描かれる。 面白いか?と問われれば「否!」と答えてしまう作品だが、本にたいしてのフェチな愛着には非常に共感できた。 収納の問題で蔵書の8割方を古本屋に売却した時は、失恋同様に心が張り裂けそうだった事が思い出される。 この作品を初読した当時は「蔵書に埋もれて死にたい」と本気で思っていた。 ※余談 今では地元図書館が自分の書斎で、23区内の図書館全部が大きな書庫だと考えている。 |
No.24 | 7点 | 日本人ここにあり- 梶山季之 | 2010/08/19 02:18 |
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全3巻からなる作者得意のエロ・サクセスストーリーで総合エンターテインメントの傑作。
敗戦から立ち直りつつある高度経済成長期に単身海外に渡り成功する為の騙しの手口や誘拐事件など随所にミステリーでもある。 アメリカ国籍の取得とご都合主義的に夫人が殺される等はよくぞ女性蔑視で訴えられなかったものだ(書かれた時代には厳然と女性蔑視が残っていた) 最大の差別は、黒人女性を口説く台詞で「黒人女性のお**こは横に割れているらしいけど云々」と書かれている事だが(日本語が堪能なブラジル女性にこれを実践したらオオウケして口説き落とせた)削除されずに出版された文庫本が未だに図書館の棚にあるのが最大のミステリーでもある!!! もっとも、スケベ作家のサービス精神にクレームをつける野暮は、こんな作品は読まないだろう! 随所にスケベな笑いがあり、下ネタ好きなら抱腹絶倒間違いなし。 |
No.23 | 6点 | 知能犯- 梶山季之 | 2010/08/17 20:32 |
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色々なタイプの知能犯罪を描きながら騙しの手口を紹介したドキュメント風犯罪小説。
作者の旺盛な取材力とアイデアが発揮されている反面でサービス精神は抑えているので、真面目な犯罪小説になっている。 鴨にされる被害者より騙す犯人の能力を評価しているのが作者らしい。 憎めない悪漢を書かせればピカイチな作者の持ち味が発揮されている。 |
No.22 | 7点 | 野望の青春- 梶山季之 | 2010/08/17 11:55 |
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同窓な三人の新入社員を主人公に、沖縄返還以前のホテル業界の内幕を描いたサクセスストーリー。
恋愛・変態・陰謀などあらゆる要素を詰め込んだ総合エンターテインメントなのでミステリーの範疇に含めてみた。 入社試験の件など爆笑を禁じ得ない面白さで作者の真骨頂が発揮されている。 初読当時には私もハニーマン(蜂蜜男)になりたかった。 現在「普天間問題」で揺れる沖縄を考えると、この作品で提起される返還時・沖縄宗教リゾート化を本気で推進していればどうだったのか?興味深い。 |
No.21 | 5点 | 狂った脂粉- 梶山季之 | 2010/08/17 11:35 |
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作者には、手馴れた産業スパイ小説で、自動車業界や家電業界から化粧品業界にシフトしただけの作品。
化粧品業界だけにユーザーが女性でもあり、堅い産業スパイ物からシフトして女性を利用する方向性が顕著になっている。 もっとも、それだけで作者にしては新鮮味の感じられない作品で、どこかの週刊誌の穴埋め連載だったのかもしれない。 当時の量産体制を考えれば、やっつけ仕事(そこから湧き出るテンポが持ち味でもあるが)な作品が混ざるのも致し方あるまい。 |
No.20 | 5点 | 合わぬ貝- 梶山季之 | 2010/08/17 11:23 |
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スケベ・エンターテインメント作家にシフトする前に書かれた松本清張的な社会派推理短編集(但し、表題作は松尾芭蕉の性癖を題材にした時代小説)
この作風(文章)では明らかに松本清張に一日の長があり、同様な社会ネタを真面目に書いては超えられない事を認識したのだろう(世間の要請に応えただけかも) わざわざ読む程面白い作品が揃うわけではないので本来なら3点辺りだが、作者が上記を認識してサービス精神全開なスケベ・エンターテインメント作家にシフトし、数多の傑作を物にした意義は私には大きく2点加点する。 社会的なニーズとは別にライフ・ワークにしていた超大作を完成出来ず早逝したが、本来は文学作品を書きたかったのだろう思いが伝わってくる。 |
No.19 | 2点 | にぎにぎ人生- 梶山季之 | 2010/08/17 11:07 |
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全4冊(2編各上・下巻に分冊)からなる〈どケチ・サクセスストーリー〉
ケチを極めながら大金持ちになる過程では随所にミステリー的発想が描かれるが、作品の本質は出勤途中や当時主流だった電車出張中に暇つぶしで読むドタバタの面白さにある(車中で爆笑して視線を集め恥ずかしい思いもする) ミステリーには含まれないと思うのでポリシー通り2点だが、エンターテインメント作品としては水準レベルにある。 書きなぐりで、この分量の作品を書けてしまう辺り、鉄道弘済会(現キオスク)御用達作家の異名も伊達ではない!! |
No.18 | 3点 | 青いサファイヤ- 梶山季之 | 2010/08/16 18:20 |
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「赤いダイヤ」のヒロインを主人公にした悪女(コンゲーム)小説。
騙しの手口などは毎度お手の物でも、作者の作品には女性を悪の主人公にすると(女性観の問題なのか?)途端に魅力が薄まる欠点があった。 ヒロインではあるが脇役だった「赤いダイヤ」では感じなかったが本作では感じたので、欠点がモロに出た典型的作品と言えるだろう。 作者の一番の売りは、男性主人公の憎めなさ&痛快さなのだとつくづく思った。 |
No.17 | 7点 | 色魔- 梶山季之 | 2010/08/16 17:55 |
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全3巻からなる壮大な悪漢小説でエロ・サクセスストーリーなのは間違いないが、ピカレスクの部分に力点があるのでミステリーに含めた。
基本的に人妻&未亡人を強姦しながら誑し込み、利用する事でピンチを乗り切りチャンスをモノにする小説なので、タイトルと相まって女性には総スカンだった作品らしい。 これだけ酷い奴に描かれながらも憎めない主人公なのが作者の真骨頂だろう。 エロにまみれさせながら書かれる悪の手口に毎度のごとく感心させられた。 一般に広く読まれていたので、悪用されない様、わざと悪の手口には欠陥を忍ばせていたとの作者インタビューを読んだ。 |
No.16 | 2点 | と金紳士- 梶山季之 | 2010/08/16 17:35 |
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全4巻からなる世界規模で壮大に描かれたエロ・サクセスストーリー(私的ミステリーの範疇にはないのでポリシー通り2点だが、痛快小説としてなら文句なしの10点)
作者の作品で一番売れたシリーズらしく、横山まさみち(夕刊紙エロ漫画の巨匠)により漫画化もされた。 エロまみれなサービス精神が発揮され過ぎではあるが、様々な分野の小説の面白さが詰まっている。 国内で風俗のサイドビジネスをしたり、社内の陰謀を阻止したりする前半2巻からタイに赴任して世界を相手にする3巻、再度国内で活躍?して年貢を納める最終巻まで、エロオヤジなセンスの笑いに満ちている。 実際は不便だと思うのでビール瓶クラスの巨根は嫌だが、若かりし頃主人公は目標であり憧れの存在だった。 |
No.15 | 6点 | やらずぶったくり- 梶山季之 | 2010/07/27 09:21 |
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書評1000件カウントダウン「1」
「銀河鉄道999」でも無理くり書評してしまおうかとも思ったのだが、一番好きな作家の作品で前祝いする事にした。 しかし、ミステリーに含まれる好きな作品は先に取り上げたので(エロ・サクセスストーリーなら「と金紳士」「日本人ここにあり」など傑作多数なのだが)この作品しか思い浮かばなかった。 友人に裏切られ社会的に一度葬られた男の復活サクセスストーリーに復讐譚を織り交ぜ、恋愛(エロ)までもサービスした作者らしさ全開の作品。 特に真に愛する夫人以外の復讐に利用した女性達の扱い方(処理)が御都合主義全開だがブラックで楽しい。 |
No.14 | 5点 | 朝は死んでいた- 梶山季之 | 2010/07/13 14:30 |
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作者の最初期の長編で週刊文春に連載された作品。
作者にしては珍しい厳然とミステリー分野に分類される作品でもある。 しかし、週刊誌のトップ屋が事件を取材しながら紐解く作品でトリックやロジックはなく、締切でのタイムリミットも強調されない為に、作者らしい面白さが存分に発揮されたとは言えない。 それでも、取材過程が綿密に描かれる点と後に発揮されるサービス精神が垣間見れて嬉しい。 |
No.13 | 5点 | みんな黙れ- 梶山季之 | 2010/07/01 17:57 |
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「‘某’大手企業」株主総会出席記念・書評。
週刊誌連載時のタイトルは「小説 総会屋」だった。 裏社会との繋がりを断つ意味でも、今では総会屋対策がなされていて、実際の株主総会も随分とおとなしい。 総会屋がはびこっていた頃の経済ピカレスク小説だが、裏社会が一般社会に食い込む手法の本質は今でも変わっていないと、相撲界の野球賭博問題などからも解る。 その意味で古さも感じず、実にタイムリーな一冊だと思えた(再読感想) |
No.12 | 7点 | てやんでェ- 梶山季之 | 2010/06/09 22:48 |
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「赤いダイヤ」の続編にあたる主人公・木塚慶太の半生記・後半で、時系列的には「赤いダイヤ」で登場した悪女を主人公に描かれた兄弟編「青いサファイア」の後になる。
今回は、詐欺紛いのインチキ貿易などを絡めながら、女を誑し込むコミカルなエロ描写をふんだんに盛り込んだ痛快ピカレスク・ロマン。 グレース・ケリー(モナコ王妃)など実在の人物を彷彿させる登場人物をエロに絡めたりするサービス精神旺盛な所からも、作者が当時作家分野で長者番付1位だった事が伺える。 エロ真っ盛りな高校時代に梶山季之にハマった事で人生が思わぬ方向に転んでしまった気がする。 |
No.11 | 8点 | 赤いダイヤ- 梶山季之 | 2010/06/09 22:17 |
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赤い魔物とも赤いダイヤとも言われた小豆相場の世界を舞台にした相場小説で(以前なら経済小説分野の作品扱いだが)現在ならミステリーの範疇に含まれる賭博・陰謀小説でもある。
相場に対峙するヒリヒリした臨場感や権謀術数が一番の読み所だが、主人公の木塚慶太を含むキャラも立っている(主人公の半生記・前半でもある) 作者の、もう一つの持ち味であるコミカルなエロ描写は控え目な所も代表作と呼ぶに相応しいだろう。 相場小説分野では清水一行「相場師」と並んで最高峰と評されている。 |