皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
臣さん |
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平均点: 5.90点 | 書評数: 660件 |
No.9 | 4点 | 鞆の浦殺人事件- 内田康夫 | 2016/11/16 17:08 |
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本作では序盤に、作家・内田康夫がいつも以上に、中心人物であるかのごとく多くのページに登場しています。後半には浅見が内田の作品を評する場面もあります。
意外な人物を犯人にすることはあっても、インチキ同然の露骨なひっかけをしない、いい人間と悪い人間とを色分けする、などと浅見が内田作品を評しています。 これは浅見の言葉を借りて自身をほめているように聞こえます。本作の後半、イマイチかなと感じ始めたころだったので、凝った作りにしないことの言い訳にも聞こえました。 ということで評価は当然高くありません。終盤が駆け足すぎです。浅見の推理が出来すぎということなのか。 舞台が福山市の鞆の浦から、東野氏の『真夏の方程式』の玻璃ヶ浦を連想したこともあって、期待したのですけどね。 福山の「N鉄鋼」はあからさまです。これほどわかりやすいと悪く書けないから、企業絡みの社会派ミステリーとしても中途半端な感があります。 序盤から中盤にかけての、内田の登場、事件の発生、浅見の捜査の取りかかりぐらいまでは引きこまれます。テクニックは抜群です。中盤の捜査と終盤の謎解きに、もう少しページ数を割いてくれればという気がします。 |
No.8 | 6点 | 後鳥羽伝説殺人事件- 内田康夫 | 2012/08/06 09:45 |
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事件の背景や、ヒラ刑事の地味な捜査など、なんとも古臭い感じのする旅情ミステリーです。
浅見光彦は被害者女性に比較的近い存在であり、どちらかというと巻き込まれ型探偵というゲスト的な位置づけでもあります。その素人探偵が最終的には一人で意外な犯人を追い詰めていくという、同シリーズではめったにない凄みも感じられます。まあシリーズ初作品はこんなものなのかもしれません。 このシリーズ初作品には、その後のシリーズ作品には欠かせないヒロインは登場せず、派手さはありませんが、派手さがない分、重みのあるドラマに仕上がっています。 社会派ミステリーがまだまだ主流だった当時としては、社会派の地味な匂いを感じさせるも、けっして典型的な社会派ではなく、もちろん本格派というほどでもなく、当時の流行りのスタイルの、きわめてニュートラルな推理小説らしい推理小説だったのではという気がします。 |
No.7 | 5点 | 白鳥殺人事件- 内田康夫 | 2011/05/21 13:27 |
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グリコ・森永事件がテーマになっていますが、タイトルの「白鳥」とはあまりにもアンマッチな感じがします。好きなタイプのミステリーではありませんが、それでも実際の事件を題材にしてリアリティーを出し、しかもうまくまとめてあるので、読み物としては楽しめました。
旅情も、推理の程度もほどほど良く、浅見光彦モノとしては意欲的な作品かと思いますが、シリーズ作品があまりにも多すぎて、浅見ファンでなければ、ほとんど目にも留まらず記憶にも残らない作品であるとも言えます。 |
No.6 | 4点 | 御堂筋殺人事件- 内田康夫 | 2011/05/06 11:10 |
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幕開けは御堂筋パレードでの転落死。発端は派手だし、ファッションモデルが登場し、一見華やかそうな感じでもあるが、特許が絡んで、企業物・社会派ミステリとして意外に地味な展開となっていく。舞台が関西なので興味を持って読んだが、近場だけに旅情はほとんど感じられず、社会性も、謎解き推理も、ラストもイマイチな作品だった。浅見光彦シリーズの中では平均以下。多作なだけに仕方なし。 |
No.5 | 6点 | 長崎殺人事件- 内田康夫 | 2010/04/10 13:42 |
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グラバー園や稲佐山、島原など長崎の風情と旅情がふんだんに描かれていて、登場人物や作者の長崎に対する愛情が感じられました。おまけに事件の背景にあるのはカステラ業界。これほど長崎色を出せばミステリー要素なんてどうでもいいという感じもしますが、もちろんミステリー色(殺人3件の謎解き)も十分にあります。さらに、カステラ屋の美しい娘が事件にからみながら、叙情的で、福砂屋のカステラのようにしっとりとしたミステリー(変な表現ですが)となっていきます。というわけで、けっこう楽しめた作品です。
長崎に数年間住んでいたので、作品に登場するカステラ屋のモデルはどの店なのかなと想像しながら、懐かしんで読めました。ミステリとしての評価は中程度ですが、浅見光彦シリーズの中ではかなり印象のよいほうです。 |
No.4 | 6点 | 王将たちの謝肉祭- 内田康夫 | 2010/02/24 12:30 |
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内田氏は囲碁では『本因坊殺人事件』、将棋では本書を書いています。どっちも好きなんだろうなと想像できます。本書はミステリー度がかなり低いし、ミステリーではないともいわれていますが、私はあくまでもミステリーと認識しています。たしかにミステリーとしては上質とはいえず、むしろラストの名人戦での柾田圭三9段の迫力満点の死闘を見どころとした、どちらかというと心打たせる作品の仕上がりとなっています。そう考えるとやはり、ミステリーとして評価するのには無理があるかもしれませんが、前半から中盤にかけて、謎の言葉を記した封書、謎の死、連続殺人など様々な謎がミッシングリンク的に提起されて、ミステリとして引き込まれることはまちがいありません。
また、羽生善治は実名で、升田幸三や大山康晴は名前を変えて登場するところも興味深いですね。本書の発刊当時、羽生善治は無名(すくなくとも7冠前)だったのではないかと思うのですが。。。 |
No.3 | 6点 | 平家伝説殺人事件- 内田康夫 | 2010/02/05 17:06 |
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2時間ドラマ的作品ではあるが(何度か映像化されているはず)、それほど安っぽくなく、仕掛けやトリックはたっぷりあって十分に本格ミステリを構成している。トリックが単純であることは否めないが、論理的なフーダニット展開はお見事。それに、物語の起点であるプロローグの伊勢湾台風の回想シーンも決まっている。あまりにもミステリアスで、ここに謎がありますよと言わんばかりだが、だからこそ、読者をひきつけて離さないぞという意気込みが伝わってくる。私もそれだけで夢中になってしまった(単純すぎますね)(笑)。もちろん旅情もたっぷりあるのも良かった。 |
No.2 | 5点 | 本因坊殺人事件- 内田康夫 | 2010/02/02 10:10 |
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内田康夫氏の「死者の木霊」につづくデビュー2作目(だったはずです)。浅見光彦はまだ登場していません。囲碁戦を扱った暗号ミステリ作品で、氏らしからぬ謎解き要素が盛り込まれています。とはいっても本格ミステリ部分は比較的少なく、むしろ、その後の内田氏の片鱗をうかがわせるような、サスペンスフルなストーリー展開と、旅情とを楽しめる作品でした。 |
No.1 | 7点 | 浅見光彦殺人事件- 内田康夫 | 2009/07/09 16:00 |
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内田氏は本サイトで人気がないので、少しだけ盛り上げてみます。
トリックが面白いですね。叙述トリックではありませんが、書き手には、読み手を意識した文章テクニックを必要とします(という意味では叙述トリックなのかもしれません)。勘の良い人なら、これだけでわかってしまうかもしれませんね。でも私は、読みが浅かったのか、あるいは勘が悪いのか、内田作品を3冊以上読んでいるのに解けませんでしたね。だまされたせいか、印象に残っている作品です。 内田作品といえば、作品数が多すぎて安っぽく見られがちですが、本作は秀作の部類ではないでしょうか(再読が必要かもしれませんが・・・)。本作だけではなく、初期の作品群もミステリ的に面白いものが多いですね。 内田氏は、私がミステリを休止している時期に、年間、数冊読んでいた数少ない作家のひとりです。なにしろ読みやすいので、忙しい時期に細々とつなぐにはピッタリでしたね。氏の量産作家という肩書きは、質が低いという意味合いにとられがちですが、氏の作品のように展開が良いものばかりだと、ストーリーテラーという称号に値すると思います。私にとって最高のストーリーテラーといえば、内田氏と、横溝正史、その他2,3人しか思い浮かびません。 |