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miniさん
平均点: 5.97点 書評数: 728件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.8 7点 殺人への扉- エリザベス・デイリー 2008/10/13 15:48
デイリーはクリスティのお気に入り作家というコピーだけが先行するが、決して宣伝文句だけの作家ではない
個人的には大好きな作家
なんて言うのか理屈じゃないんだけど、文体など不思議と肌の合う作家っているよね、そんな感じ
不自然さを感じさせない会話文がいいんだよね
アメリカ作家なのに英国風な感じもいい
「殺人への扉」はミステリーとしては標準レベル位と思うけど、文章が好きなのでつい評価が甘くなる

No.7 7点 スモールボーン氏は不在- マイケル・ギルバート 2008/10/13 15:37
チャンドラーの法律顧問でもあったマイケル・ギルバートは海外での高い評価に比して、細々と翻訳されてた頃の日本での知名度は決して高いとはいえなかった
ところがこの作家が脚光を浴びた年が有ったのである、それが2003年で「スモールボーン氏は不在」と「捕虜収容所の死」の2作品がこの年に相次いで訳され、後者は”このミス”でも堂々の2位にランキング入りしたのである
しかし「スモールボーン氏」の方は「捕虜収容所の死」と同じ年に翻訳されているのに、「捕虜収容所」だけしか読まれていない風潮なのは残念だ
仕方ない事情もあって、「捕虜収容所」は文庫だが、「スモールボーン氏」は四六版ソフトカバーという中途半端な装丁で、しかも版元がミステリーではややマイナーな小学館
さらに「捕虜収容所」が本格では異色の舞台なのに対して、「スモールボーン氏」の舞台は法律事務所内とちょっと地味
でも作者の勝手知った業界を活かし、セイヤーズの「広告」の雰囲気を再現したかのような趣は魅力だ
海外での評価だが、「スモールボーン氏」は各種ベスト表や里程標などに載っているが、「捕虜収容所」がその手の名作リスト一覧などに載っているのを殆ど見た記憶が無い、これは森英俊氏の発掘の賜物である
でもやはりマイケル・ギルバートの代表作と言えば「スモールボーン氏は不在」でしょう

No.6 6点 見えない凶器- ジョン・ロード 2008/10/12 11:06
ロードは本格マニアが邦訳を待ち望んでいた作家なのに、「見えない凶器」は失望の声が大きかったが、この作品については擁護しておきたい
失望感の最大の理由は、とにかく密室殺人トリックがチャチな事で、たしかに私もこの点だけは正直言って擁護出来ない
このバレバレな殺害トリックはお粗末過ぎる
しかしこの作品の魅力はトリックでは無いのである
トリックだけは別にするならば、プロットは良く出来ている
完全なる二重構造のプロットで、一見2つに割れた感じだ
しかし前半と後半の二重構造というプロットが実に良く活かされているのである

またトリックについてだが、ロードはトリックが全てショボイわけじゃないのは論創社の「ハーレー街の死」を読んでいただければ納得出来ると思う
あと中盤が退屈みたいに言われることもあるけど、ロードは理工系気質なんだろうか、例えば配管工事や建築物の施工設備がどうのこうのとか、その辺にやたらとこだわる描写が多い
理工学的な描写を退屈と見ないで、ロードの特徴と割り切るといいのではないかな
オースティン・フリーマンと並ぶ英国が生んだ2大理工系ミステリー作家って感じだな

No.5 7点 チャーリー・チャンの追跡- E・D・ビガーズ 2008/10/12 10:36
論創社から未訳だったシリーズ最終作が出る予定みたいだけれど、入手の難しい「鍵のない家」やポケミスの「シナの鸚鵡」、雑誌に抄訳されて埋もれたままの作品を除くと、現時点では古本屋で比較的見つけ易いのは創元文庫の2冊だろう
「活躍」の方を推す人もいるかもしれないが、私は「追跡」を推したい
厚みのある謎の構成、そこそこ起伏のある物語展開、主役チャーリー・チャンが最初から登場して存在感がある点など
全てに「活躍」より「追跡」の方が上回ってる

No.4 6点 踊るドルイド- グラディス・ミッチェル 2008/10/12 10:16
最近さかんに刊行されているが、評判の悪い作家ミッチェル
しかしこういう作家こそ擁護しておきたい
ミステリーに対し、サプライズ、カタルシス、トリック、叙述な仕掛け、といったものばかり求める姿勢だと、G・ミッチェルなどは本格系作家の中では最も分り難い部類の作家だろう
でもそれがミッチェルの魅力だから
この「踊るドルイド」は、ミッチェルにしては比較的分り易いプロットなんじゃないかなあ

No.3 7点 黒衣の花嫁- コーネル・ウールリッチ 2008/10/12 09:58
「喪服のランデヴー」と対になるが、「喪服」を先に読んだ人が圧倒的に多い気がする
これは「黒衣の花嫁」の文庫版が暫く絶版だった時期があり、その頃「喪服」は普通に新刊で入手可能だったのが原因だろう
こういう場合はどちらを先に読んだかで印象が変わる
私は「黒衣」を先に読み、年月を経て最近になって「喪服」を読んだから、どうしても「黒衣」の方が断然印象が良いし、「喪服」の方こそ二番煎じに思えてしまう
と言うか、そもそも原作の順序も「黒衣」が先で「喪服」の方が後から書かれているのだ
ウールリッチ名義の作には原題に”BLACK”が付くブラックシリーズと呼ばれる一連の作品群があって、「黒衣」がシリーズ第1作目、「喪服」は第6作目でシリーズ最終作だ
それどころかアイリッシュ名義をも含めても長編では作者のデビュー作が「黒衣の花嫁」なのである
「喪服」→「黒衣」という読む順番は悪い意味で逆転してる

「黒衣」は詩情があり主人公の女性に感情移入出来るし、変に盛り上げようとしない冷静な筆致が心地良い
終盤の一捻りも私は成功してると思うし、それを言うなら「喪服」のラストの方が何の捻りも無さ過ぎだろ
私はこの2作の評価については確固たる信念があり、世に多い評価は「喪服」に対しては過大評価で、「黒衣」は不当に過小評価されていると思う
結局アイリッシュ名義作も含めて、「喪服」はかなり早い時期に読むのに、「黒衣」は作者に充分に慣れた段階で読む読者が多いという悪しき風潮が全ての原因だと思う
くどいようだけど原作の発表順は全く逆なのだ

No.2 6点 薪小屋の秘密- アントニー・ギルバート 2008/10/12 09:40
国書刊行会の世界探偵小説全集の中でわりと評判の悪い作
これも擁護しておきたい
論創社の「つきまとう死」もそうだが、A・ギルバートは終盤でそれまでの展開とは違う方向へ行くのが常套手段のようだ
終盤に最大のヤマ場を持ってくる一般的な構成に対し、中盤で一旦ヤマ場を創り、解決編も不条理に持っていくという、ちょっと他の本格作家とは異質なのだ
この「薪小屋の秘密」もそうで、前半は青髭サスペンス物に見せかけて、中盤で最高に盛り上げ、後半は冷めた展開、そして終盤は一見gdgdな結末だが、これもありだと思う
普通に解明して終わりかという予測を裏切る不条理な面白さ
どうも日本の本格中心読者はカタルシスを求めすぎると思う

No.1 7点 救いの死- ミルワード・ケネディ 2008/10/11 11:22
国書刊行会の世界探偵小説全集の中では評判が悪い作品
”ミステリーは単なるパズルでもいい”を標榜するような読者だと、失敗作とのレッテルを貼る人も居るようだ
で、その理由は大きく二つ有って、主人公に感情移入出来ない事と、サプライズが予定調和な点
しかし私はこういった批判には真正面から反論して作者を擁護したい
そもそもこの作にパズル性だけを求めるのが間違っている
この作品は盟友バークリーに対する、へそ曲がり作家ケネディの一つのアンサーであることは序文にもある
それは人間性にも優れた探偵役ばかりだった時代に対し、”推理能力はあっても、読者から好まれない探偵役”という設定をわざと意図的に狙う事
その意味では失敗作どころか作者の狙いは成功していると思う
そりゃ主役に感情移入出来ないさ、それが当初からの狙いなんだもん
私もミステリーを読み始めた頃から探偵役が人間性に温かみが有り過ぎるのを不満に思っていたので、M・ケネディとは波長が合うのかも
今でも無愛想な探偵役が好きで、例えばジョン・ロードのプリーストリー博士とか
ラストのサプライズに関しても最初から狙ってないのは明白で、話の締め括りとしては予定調和でも何らかのオチは付けざるを得ないし、常にサプライズばかり求める読者側の姿勢に問題が有ると思う
一つだけ難を言えば、”人間性は悪だが推理能力だけはある”
という設定なのだが、推理の部分があまり緻密でない事

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