皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ ハードボイルド ] さらば愛しき女よ フィリップ・マーロウ/別邦題『さよなら、愛しい人』 |
|||
---|---|---|---|
レイモンド・チャンドラー | 出版月: 1956年03月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 21件 |
早川書房 1956年03月 |
早川書房 1972年01月 |
早川書房 1976年04月 |
早川書房 2009年04月 |
早川書房 2011年06月 |
No.1 | 8点 | 空 | 2009/01/24 23:06 |
---|---|---|---|
ハードボイルドは香りだ。「やまよもぎの強い匂い」やインディアンの「異臭」。さらに、煙草、酒、香水、潮…この作品からはさまざまな香りが感じられる。
…等と、普段とは違った感じの文章を書きたくなってしまうほど、影響力のある作品です。上に書いたこととは違ってしまいますが、ハードボイルドはやはり文章だと思います。人間や社会を独特の香りをもって描き出す文体と言えばいいでしょうか。 殺人事件そのものの構造はすっきりしているのですが、読後冷静に考えてみると、マーロウの捜査の過程にはかなりとんでもない偶然があります。特に半分ちょっと過ぎで大鹿マロイを見かけるところがそうですし、市の黒幕との会見の段取りも、クライマックスの邂逅も偶然です。今回久々に再読してみて、ハメットと違い内容の記憶が全くなかったことに驚いたのですが、このプロットの偶発性が覚えられない原因の一つかもしれません。 しかし、チャンドラーは本書でもファイロ・ヴァンスの名前を出してきたりして、意外に従来のミステリを意識しているところが感じられます。 |